ジェーン・スー/コラムニスト 男女の生きづらさは、背中合わせ【前編】

失敗ヒーロー!

2019/09/10
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男らしさとか女らしさとか、社会規範にとらわれて生きていける時代?

――最近は女性が話題になりがちですが、男性なりの苦しさもきっとありますよね…。

ジェーン・スー:社会規範に縛られてしまうのは、女性だけでなく、男性もなんです。お互い素質・資質とは異なる「女らしさ」「男らしさ」の役割を与えられているのではないでしょうか。

例えば、男性の「簡単には仕事を辞められない」という思いは、想像以上に彼らを苦しめていると思います。女性だと、30代に留学したりする人もいますが、男性が2〜3年の間、仕事を休むには大きな決断がいるかもしれません。35歳の女性がヨガの先生になるためにインドへ留学すると言ったら「バイタリティあるね」と言われるけど、35歳の男性だと「どうした?」と言われかねない。期待される社会規範が男女で異なるからです。

――男性は男性の苦しみがあると。

ジェーン・スー:男女の重い荷物は背中合わせだと思います。どちらか一方だけが軽くなることはありません。今後、日本の経済が著しく成長する可能性は低いでしょうし、そうなると片働きで家庭を支えるのはもっと厳しくなっていく。男女が同じ社会で働かなければならないのですから、手に手を取り合ってとまでは言わないですが、お互いのプレッシャーをわかり合う努力は必要だと思います。

――わかり合うために、私たちができることとは何でしょう?

ジェーン・スー:まずは自分の中にある社会規範に気づくと、楽になるかもしれないですね。「すっぴんで会社に行く女性」「スキンケアに熱心な男性」などを並べていった時、明確な理由がないにもかかわらず何か嫌だなと感じるなら、それがあなたの社会規範、「〇〇らしさ」と考えているものではないでしょうか。

「〇〇らしさ」というモヤモヤ

――30代は仕事でもプライベートでも、さまざまな選択肢が出てくる年齢だと思います。ジェーン・スーさんはどのように過ごされていましたか?

ジェーン・スー:30代前半って仕事でできることも増え、下も入ってきて、上のことも冷静に見れるようになるころですよね。真ん中にいる立場だと、「がんばってるのは自分だけ」という気持ちになりがちでもあります。私も独善的になっていた時期がありました。「周りはわかってくれない、みんな考えが甘い」と思って、優しくなかったですね。でもそれは単純に私の想像力が乏しかっただけで、決して周りが悪かったわけではないんです。価値観や生き方にさまざまなバリエーションがあることに気づけていなかっただけだと思います。

――これからの時代、未婚が増えて3人に1人が一人暮らしになると言われています。男性・女性それぞれに、あらためて必要なことはなんだと思いますか?

ジェーン・スー:あくまで私自身の考えですが、女性は働くことを諦めないこと。多くの女性が専業主婦でいられたのは、好景気だった過去の話だと思っています。時代が変わって古い価値観だけが残るのはおかしい。一方で、男性には人的リソースを大事にすることをおすすめします。友達や親、コミュニティなど「ライバルではない人」を意識して作るだけで、心が休まる時間が増えるのではないでしょうか。女性と比べて、男性は「友達はみんなどこかでライバルだ」という意識を持たされてきた可能性が高いように思います。

あとは、生活や体のケアをすることもすごく大事。特に40代以上の男性が若いころ、スキンケアをしていたり、栄養バランスを意識した料理ができたりすると、「男のくせに」とからかわれることもあったかもしれません。「男らしく」あるためにそういうことを避けて生きてきたにもかかわらず、今度は70歳すぎて身の回りの管理が自分でできないと、孤独死予備軍だ、セルフネグレクトだと言われてしまう。これは、潜在的に染み付いた社会規範が引き起こすバグだし、壮大な罠なんです。

後編では・・・

「女らしさ」「男らしさ」といった社会規範にまず目を向けること。そうすれば、「〇〇らしさ」に縛られるモヤモヤが少しずつ晴れてくるかもしれません。現在の生きづらさは、社会規範に縛られることの他に、失敗できない社会が原因だとジェーン・スーさんは言います。後編では、ジェーン・スーさんの笑える失敗から笑えない大失敗まで、過去に遡ってお話を伺います。

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