ヨシダナギ マネージャーの“ナンパ”から始まった、フォトグラファー・ヨシダナギ【後編】

失敗ヒーロー!

2019/10/24
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華々しい成功の裏には、失敗や挫折がある。その失敗エピソードから成功の秘訣をヒモ解く『失敗ヒーロー!』。前編に引き続き、フォトグラファー・ヨシダナギさんが登場。後編では、ヨシダさんの著書『ヨシダナギの拾われる力』に大切な仕事のパートナーとして紹介されたマネージャー・キミノさんにも登場いただき、二人の出会いをヒモ解きながら、ヨシダさんの写真と存在を世に知らしめた「拾われる力」の秘密に迫ります!

夢がないから突っ走れる、ヨシダナギは“F1カー”

――前編の「夢を持たなかったことが、今の自分につながっている」という言葉。後編ではマネージャーのキミノさんにも参加いただきますが、一般的に「夢を持つ」ことが肯定されるなか、「夢を持たない」ことの強みについて聞かせてください。

ヨシダナギ(よしだ・なぎ)
1986年生まれ、フォトグラファー。幼少期からアフリカ人への強烈な憧れを抱き、2009年より単身アフリカへ。その後、独学で写真を学び、アフリカを始めとする世界中の少数民族を撮影。唯一無二の色彩と生き方が評価され、テレビや雑誌など多数のメディアに出演。2016年発売の写真集『SURI COLLECTION』と紀行本『ヨシダ、裸でアフリカをゆく』が講談社出版文化賞写真賞。2018年には独自の生き方を綴った異色のビジネス書『ヨシダナギの拾われる力』を上梓。

ヨシダナギ(以下、ヨシダ):単刀直入に言うと、「夢を持て」という風潮そのものが、余計なお世話だなって。もちろん、夢に向かってまっすぐ走れる人にとっては、大きな原動力になると思います。ただ、人には個性があって、考え方も落ち込むポイントも違うから、全ての人に「夢を持て」と言うのは違うと思う。むしろ私からすれば、「夢を持て」という言葉はプレッシャーでしかありません。

マネージャー・キミノ(以下、キミノ):ヨシダを車に例えると、F1カーなんですよ。車体の軽いF1カーだから、何かを決意した瞬間にトップスピードで走れる。この速さは夢を積まないおかげ。夢って重たいし、夢があるから「失敗したらどうしよう」と躊躇しますが、ヨシダにはない。夢がないから楽観的でいられるんです。それでいて客観的なのも、ヨシダの強みですね。まるで自分を鳥瞰するかのように、自分の強みと弱みを徹底的に理解しています。楽観視と客観視が合わさると強いですよ。自分が確実に進める方法を選びながら、猛烈な勢いで走れるんで。

――躊躇のない大胆さと自己分析の冷静さは、正反対の要素です。夢を持たないからこその楽観視の一方、冷静な客観視は、どのように育まれたのでしょうか?

ヨシダ:それは恐らく、両親の影響ですね。私が8歳の時だったかな、お母さんに「あなたは私の娘だから、娘としてはとても可愛い。ただし世間的に見て、特別、可愛いわけじゃないから勘違いしちゃダメよ」と言われたんです。父も父で、うちのお父さんはいつも帰宅が遅かったから、文通でやり取りしていたんですね。私が寝る前に手紙を書いておくと、父も必ず、お返事をくれて。しかし問題は、返事に添えられた似顔絵です。父が描く私の似顔絵が、ことごとく出っ歯なんですよ(笑)!

これはもう、認めざるを得ません(笑)。要は幼少期から、自分に対する冷静な分析を突きつけられていたんです。そのおかげで「ここは褒められるところ、ここは褒められないところ」という客観視が、自然と芽生えたんだと思います。

――なるほど。しかし親から「世間的には特別、可愛くない」と言われたら、グレてしまってもおかしくありません(笑)。

キミノ:そこは、ご両親が絶妙だったんでしょうね。「娘としては可愛い」という絶対的な前提があったし、似顔絵が出っ歯だったにせよ、娘に手紙を書く時点で、親の愛情を感じられます。何かを指摘する前には、まず愛情を示す。これはマネジメントの基本でもありますね。僕もヨシダを叱る時は、きちんと愛情を示してから叱りますから(笑)。

“ヨシダナギ”をプロデュース

――ところでヨシダさんとキミノさんは、どのように出会われたのでしょう?

ヨシダ:出会いはFacebookです。23歳で初めてアフリカに行き、なかでもエチオピア人が大好きになったんですね。「もっとエチオピア人と関わりたい」と思い、Facebookにあるプロフィールの言語欄に、エチオピアの公用語であるアムハラ語を追加したんです。日本に住むエチオピア人が、メッセージをくれるんじゃないかと思って。しかし唯一、釣れたのがキミノ(笑)。

しかも最初のメッセージが「ちーす、アムハラ語って何すか?」ですよ。無礼な人とは思いつつ、アムハラ語に反応してもらえたことが嬉しくて、返信したんです。すると今度は「飯、行きません?」と返ってきて。見ず知らずの人だし男性だし、軽くあしらっていたものの、何ともしつこい。仕方なく、まずは電話で話してみたところ、頭の回転の速さに感心してしまって。そこでようやく食事に行き、見事に意気投合ってやつです(笑)。

キミノ:「完全なるナンパ」って、書いておいてください(笑)。

――いや、本当にナンパじゃないですか(笑)! しかし驚きました。お二人が出会われたのは、ヨシダさんが有名になられる前だったんですね。

ヨシダ:有名になるも何も、私を世間に引っ張り出したのがキミノです。キミノと出会った当時の私は、アフリカに行って写真を撮ってはいたものの、軽くFacebookに載せるくらい。「彼らのかっこよさを伝えたいな」と思いつつも、部族と同じ格好をして撮った写真は公開もせず。でも、「キミノなら、いやらしい目では見ない」と思ったんですね。そこで写真を見せたところ、「この写真に文章を添えてブログにしたら、お前の『アフリカ人のかっこよさを伝えたい』という想いが叶うと思うよ」と言われたんです。

――キミノさんの提案で写真を載せたブログを始めたところ、ウェブメディアに取り上げられ、バズり、ついにはテレビ番組から出演オファーを受ける、と。

ヨシダ:そうです。キミノが言う通り、多くの人にアフリカ人のかっこよさを伝えられました。ただし急に有名になったものだから、本当に戸惑いましたね。人と会う機会も増えて、コミュニケーションが苦手な私には対処できない。そこでキミノに、「こんな状況を招いた責任を取ってよ」と(笑)。

キミノ:責任を取る形で、ヨシダのマネージャーをやっています(笑)。

誰よりもお金をかけた趣味は、いつか仕事になる

――キミノさんとの出会いがなければ、今のヨシダさんはいない。著書のタイトルにある「拾われる力」を感じさせられますね。

ヨシダ:思い返してみると、私は人生の要所要所で、人に拾われているんです。例えば、29歳の時。渡航費を稼ぐために銀座のクラブでバイトをしていたのですが、「お前には銀座の華やかさはない。でも、そこが面白い」と言ってくれたお客さんです。30歳を目前に、両親から「これからも今の生活を続けるのか」と、口酸っぱく言われていた時期でした。

そのお客さんには、なぜか心を開くことができて、「私はこのままで大丈夫なのだろうか、何かしらの仕事に就けるのだろうか」と、悩みを打ち明けたんです。すると「君が一番お金を使った趣味が、いつか仕事になると思うよ。だから親の言うことは聞かず、今の生活を続けなさい」と言われて。

――すごい。まるで、ヨシダさんの未来を予言しているかのようですね。

ヨシダ:「その趣味に誰よりもお金を掛けているということは、その趣味を誰よりも知り、長けているってことなんだから、いつか仕事になるよ」って。この言葉のおかげで「ここから人生やり直すより、今の投資を続けたほうが、何かしらの仕事に就けるかもしれない」と思えました。

そもそも夢のない私は、フォトグラファーを目指していたわけではありません。大好きなアフリカに通い続けるという趣味を続け、キミノの提案によってブログを始めたところ、メディアの方たちが「フォトグラファー」という肩書きを付けてくれました。趣味が仕事になったんです。初めて「フォトグラファー」という自分の肩書きを見たときは、「仕事って、こんな風についてくるんだ」と、妙に納得しましたね。

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