2017/10/03 公開

【後編】「物事のハウツー化が『好き』への熱意を削いでいく」・やついいちろう(エレキコミック)

失敗ヒーロー!

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意外な出合いが待ち受ける“総合誌的”ラインナップ

――コントとDJがやついさんにとってのお米であり、その出荷先がフェス。バンド、シンガー、DJ、さらにお笑い芸人も登場する「やついフェス」は、まさにやついさんが出荷主だからこその顔ぶれですね。

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1974年生まれ。三重県出身。1997年エレキコミック結成。やついいちろう氏が音楽好き、相方の今立進氏が漫画好きだったことがコンビ名の由来。音楽好きで友人も多く、お笑い界一音楽業界に顔の広い(?)芸人とも言われている。友人でもある曽我部恵一氏の勧めでDJを始め、2005年「COUNT DOWN JAPAN」DJブースにて、フェスデビュー。以後、夏の「ROCK IN JAPAN」、冬の「COUNT DOWN JAPAN」にはゲストDJとして欠かさず出演。SNSやコミュニティ等でも「DJやついを見るために毎年フェスに行ってます!」「ベストアクト」との声も多い。エレキコミックとしての活動と並行し、音楽イベントのDJとしても全国を駆け回っている。

やついいちろう(以下、やつい): 自分で何かを作り出す一次産業の人間になろうとしたら、農家の方にとって身体が資本であるように、自分自身を資本とするしかない。すると「自分のやれることを売るしかない」って、当然の流れなんですよ。たとえばライターさんだって一緒でしょ? ものを書くことができるから、その能力を資本にお金を稼いでいく。つまりは仕事にしていく。

だからミュージシャンもいて、芸人もいてっていう「やついフェス」のラインナップに関しては、単純に僕の趣味が大きく反映されています。ミュージシャンの顔ぶれ一つとってみても、すごく雑多というか、めちゃくちゃ多種多様。これは僕が、いわゆる“総合誌”が好きだからなんですよね、きっと。

――あるジャンルに絞って伝える専門誌に対し、あらゆる物事を伝える総合誌?
 
やつい: 専門誌より、総合誌が好きなんです。何かに特化しているって、もちろん素晴らしいと思います。ただ、総合誌を読んでいると予期せぬ面白さがあるじゃないですか。普段は文房具になんて興味のかけらもないのに、誌面に掲載されたアイテムを見て、「これ超かっこいいじゃん」なんて、うっかり買っちゃう。後々、「使う機会ねぇじゃん」とかって後悔するんですけど、そういう出会いが面白いんですよね。

黒字化しなければ、「ただ好きなことをやっただけ」

――しかし、それだけ多種多様なメンツを集めてイベントを主催し、さらに大規模なフェスをオーガナイズする立場となると、難しさもあるはずです。

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やつい: すごく自分本位のイベントとして始めたから、最初は商業的に運営するということすら考えていなかったんですよ。それだけにあまり難しさを認識せずに始めたというか、「自分がやるべきことは、とりあえず収支を黒字化させることだけ」という意識でしたね。

「とりあえず黒字化」という思いがあったのは、少しでも黒字にしておかないと説得力がなくなってしまうから。赤字で終わってしまったら、「ただ好きな人を集めて、好きなことをやってみました」で終わっちゃうじゃないですか。

――その「黒字化」こそ、イベント開催の最難関という気もします。好きなことであればなおさらです。
 
やつい: 有難いことに「やついフェス」も今年で6回目を迎え、徐々に分かってきたことですけど、黒字化するのに必要なのって“いい人”でいることなんですよ。もうね、嘘のように聞こえるかも知れないけど、突き詰めて言えばそれしかない。

黒字化するために唯一の秘訣は「いい人」になること

――“いい人”でいる?

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やつい: 僕なんて大してお金もないし、地位もないし。すると、人間的にいい奴になるしか道はない気がするんです。“いい人”って、いろいろな捉え方ができるから、ちょっと怖い言葉だとも思うんですけど……。表現を変えるとすれば、“熱意”ですかね。「そこまでやる気なら、仕方ない、手伝ってやるか」と、巻き込むことができる人。やっぱり大してやる気のない人には、誰も付いてこないですよ。

さっきの「総合誌的なラインナップ」という話も、気付けばここにつながっていて。僕が文房具に対して突然、興味を示し始めるように、偶然の出会いがファンを呼び込むきっかけになり得ますよね。アイドル目当ての人であっても、フェスで見たバンドの演奏に、「ロックって、実はかっこいいじゃん」と思ってもらえるかもしれない。そうすれば、ちょっとゲスい言い方になってしまいますけど、出演してくれたミュージシャンの得になるじゃないですか。出演への対価を感じてもらうことができれば、ある意味、僕は“いい人”ってことになるし。

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