山田ズーニー アイデンティティの喪失は、表現することで救われる【後編】

失敗ヒーロー!

2019/07/10
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自分の人生の主人公は“自分”

――週に一回、書くことがお仕事にもつながっていったのですね。

ズーニー:初めて本を書きあげたのは、フリーになって2年目の11月のことでした。まだフリーランスとして仕事がほとんどなく、小論文の仕事への喪失感に苦しんでいた時期でした。平日の昼間、どこにも行けず誰とも会わず、メールの1通もこず、家に一人でいると静かすぎて「もしかしてテロでも起こって私以外死んだのでは」と窓をあけて心配するほどの日々でした。一本はそれまでの文章教育人生を賭して7ヵ月かけて全身全霊で書きましたが、どうしても最後の一文が書けなかったんです。私の最初の本を読む読者に最後に伝えたいことは何か。それについて自問自答を繰り返し、出てきたのは「あなたには書く力がある」という言葉でした。この一文が書けた時、心の底から嬉しかった。「これが私だ」と涙が出てきました。

「私はずっと表現力を伸ばしてきたじゃないか」と思った時、会社を辞めた後のブランクや恐怖もなくなりました。過去と現在がピタッとつながったんです。

――腹の底から湧き出てきた言葉こそが、ズーニーさんのアイデンティティであるということなのですね。

ズーニー:「これが私だ」というものを発見できた時、人の表現力を伸ばすという自分の居場所がある限りもう大丈夫だと思えました。自分の想いに沿った選択をすると、そこに意志が芽生え、「自分の人生の主人公は自分だ」と思えるんです。つらいことも失敗も、自分が人生のあるじとして選択したと思うと、後悔することが全くないんです。

今の世の中を見ていると、いろんなことに忖度し、本当の自分の想いはどこにあるの?と思ってしまう場面が多々あります。自分の意思で選択できないと、責任も自分以外になってしまう。自分の想いと一致しない人生を生きて成功しても、虚しい。勇気を出して、自分の想いを正直に表現していってほしいですね。

些細なことからでも自分に問いかけてほしい

――日頃から無意識に忖度してしまって、何となく心にもない選択をしてしまうことは誰しもありますよね。

ズーニー:順調にキャリアを積んできたと思っていた人が突然会社に行けなくなってしまう時、自分の想いを見失っていることが多いんです。例えば「ライバルに負けたくない!」と頑張って、いざ勝った時、自分は本当にこれがやりたかったのか?と思ってしまう。見栄や競争心によって選択してしまうと、人の心は器用にできていないので、心と体が分離してしまい、体調に出てしまうかもしれません。そうなってしまうと、自分の本当にやりたかったことや置き去りにした想いを見つけるには、すごく時間がかかってしまいます。ですから、日々コツコツと「晩御飯に何を食べたいのか」とか、どんな些細なことでもいい、自分に問いかけて決めてみてほしいですね。

――自分の本当の想いを引き出すための鍵となる「書く力」を私たちは持っていると。

ズーニー:自己満足だろうと、最初は自分が本当に言いたいことを勇気をもって表現することがとても大事です。書いて自己発信することは、自分の内側の気持ちに向き合う作業でもあります。自分の本心を知るのがなんとなく怖いという方は、考えることを知らず知らずに避けて自分の想いと離れ、人に流されてしまっているかもしれません。一週間に一回ブログを書くなど自分のペースを決めて、定期的にコツコツ書いていけば、自分自身としっかりと見つめ合うことができ、自分らしい表現や選択ができるようになっていきます。書いて発信すれば共感者が現れ、人とのつながりもできていきます。自分の書きたいことを定期的に発信し続けていけば、自分の想いに沿った人生に近づいていけます。失敗した時ほど、自分を見つめ、表現していってほしい。あなたの失敗から得たものに励まされる人がたくさんいます。表現していってください。あなたには書く力があるのですから。

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