山田ズーニー 38歳、最大の失敗が今につながる【前編】

失敗ヒーロー!

2019/07/09
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華々しい成功の裏には、失敗や挫折がある。その失敗エピソードから成功の秘訣をヒモ解く『失敗ヒーロー!』。今回は『ほぼ日刊イトイ新聞』での連載や、ラジオ『おとなの進路教室。』で、多くの方の人生の選択に向き合ってきた山田ズーニーさんが登場。失敗を成功へと導いたズーニーさんならではのこれまでのキャリアや、私たちが生きていく上で「自己表現」がいかに大切なことなのか、たっぷりとお話をお伺いします。

文章を書く前に大切なのは、“自分の頭で考えること”

――現在ではさまざまなご著書やコラムで有名なズーニーさんですが、まずは、そもそもズーニーさんが編集者になった経緯についてお聞かせください。

山田ズーニー(やまだ・ずーにー)
岡山県出身。ベネッセコーポレーションに入社し、進研ゼミ小論文編集長として高校生の考える力・書く力に16年尽力し、その後独立。現在はフリーランスとして大学・企業などで書く力・表現力・考える力・プレゼンテーション力の教育を展開。著書に『伝わる・揺さぶる!文章を書く』『あなたの話はなぜ「通じない」のか』他多数。ほぼ日刊イトイ新聞にて『おとなの小論文教室。』を連載中。

山田ズーニー(以下、ズーニー):私はもともと社員登用ではなく、日給の編集アシスタントからスタートし、新卒の正社員の方たちを横目で見ながら仕事をしていました。働き始めて3年目で社員登用された時に、小論文の担当になったんです。その時、たった一人で2学年分の担当になりました。ピーク時年間5万人の高校生会員を持つ小論文通信教育の企画・編集・プロデュースを行っていたんです。

――ズーニーさんはもともと、小論文に詳しかったのでしょうか?

ズーニー:当時、私が小論文の担当になったころは、まだ小論文は国語の領域と見られていました。私は教育学部出身で国語を専攻していましたし、編集アシスタントをしていた3年間国語を担当していたので、それなら任せてもいいだろうと上層部が判断したのかもしれません。小論文の担当になってからは、小論文とは一体何なんだろうと、ゼロから考えていきました。どうすれば書く力が身につくのか、最初は手探りでしたが、研究を続けた結果、人が物を書けないのは考えることをしないからだと気がつきましたね。日本の教育は暗記や応用に力をいれてきたので、その方面はすばらしいです。しかし、正解のないものをゼロから自分の頭で考え、さらに人とは違う自分の意見を導き出していくことに関しては、教育が十分ではなかった。それがわかった時、「じゃあ考えるって一体どういうことなんだろう?」と突き詰めていくと、それは、「自分自身に問いかけ、自問自答すること」。 過去・現在・未来へ、社会・世界へ、と視野を広げて、さまざまな問いかけを自分自身にすることで、自分の思っていることを引き出し、言葉にできるようになります。

自分の想いを表現した高校生に感動をもらった

――考える力の大切さを生徒にどのように伝えていきましたか?

ズーニー:小論文の担当になって10年くらいは、高校生たちは皆似たような文章を書いていました。そこで、書く前にテーマについてしっかりと考えさせる新しい構成の教材を作ったんです。テーマについて「関連した実体験はないか?」「昔と今とでは何が変わったか?」「未来にどうなったらいいか?」。例えばそんなふうに多角的に問いかけ、高校生の思っていることを引き出し、自分の頭でしっかりと考えさせます。そのあと文章を書かせると、これまで似たような文章を書いていた高校生たちが、一人ひとりの個性が溢れた、実感ある、伝わる文章を書いたんです。全国の赤ペン先生たちからも、「高校生たちが心を開いている!」と反響があり、部長が「今年の小論文は何をやったの!」と私のところまで飛んでやってきました。それは、小論文の担当になってずっと夢に見続けてきたことだったので、本当に涙が止まりませんでしたね。

――高校生たちの文章の変化とは、具体的にどういったものだったのでしょうか。

ズーニー:最初はもう本当に、読むに堪えない文章でしたね。高校生たちの「本当に思っていることが書けない」という心底の苦しみが伝わってきて。みんな言いたいこともあるし、書きたいこともある。でも、自分で考えることをしなかったら、書きたいものに気づくことも、言葉にすることもできません。どこかで誰かが言った言葉のウケウリや一般論を書いてしまう人、好きな歌のフレーズをそのまま自分の言葉だと思って書いてしまう人もいました。でも何か違和感を覚えている……そんな印象でした。一方で、高校生が自分の頭でしっかり考えたあとの文章は、「自分の本当に言いたいことが書けた!」という心底の歓びが伝わってきます。実際に、「小論文を書いた後は、まるでスポーツをやった後みたいに清々しい!」という高校生からの感想もありました。今まで生きてきた他のだれでもない自分の経験や知識に照らして考え、本当に言いたいことが言えた文章は、まず書いた本人がスカッとします。さらに一貫していて、読み手にもダイレクトに伝わってきます。

――文章を書く前に自分の頭で考える行為を挟むことで、そこまで表現力が変わってくるのですね。

ズーニー:そうですね。この経験から、入試に小論文がある高校生だけじゃなくて、大人も子供も、「みんなもっと自分の頭で考えて、自分の言葉で表現したいはずだ」と考えるようになりました。これは、単なる小論文だけに留まることでなく、時代にも世の中のニーズにも合ってきていることだと感じて。文章表現教育でこんなに人が変わるのなら、私はこの考える力や書く力の教育をずっと追求したいと思いました。

小論文の仕事は本当に楽しくて、高校生の自己発見や進路発見にも領域が広がっていきました。このままこの道で、どんどん編集者のスペシャリストとしてのキャリアを積みたいと思いましたし、高校生のカルチャーにまで領域を広げて、教育とカルチャーを融合させた編集をやってみたいと夢が広がりました。その時は、ずっとこの会社で、この道を極めていきたいという思いも強く持っていました。

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