【後編】「芸はビジネスと一緒。緻密にデータを取って作り上げられていくもの」髭男爵・山田ルイ53世(芸人)

失敗ヒーロー!

2018/09/12
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華々しい成功の裏には、失敗や挫折がある。その失敗エピソードから成功の秘訣をヒモ解く『失敗ヒーロー!』。今回ご登場いただくのは、ワイングラスを片手に貴族風の漫才を披露して一世を風靡した髭男爵の山田ルイ53世さん。著書『一発屋芸人列伝』(新潮社)が大ヒットを収めた、まさに一発屋芸人の王道を行く山田ルイ53世さんのマネジメント術とは何でしょうか。前編では、引きこもりだった思春期の頃、一発屋芸人となった当時の心境について、お聞きしました。

「俺は一発屋や」。そう居座った時に、芸人は強くなる

――この度、『一発屋芸人列伝』(新潮社)を刊行されました。この本にはご自身のことも書かれています。一発屋になるというのは、どのような心持ちなのでしょうか?

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髭男爵・山田ルイ53世(ひげだんしゃく・やまだるい53せい)
1975年4月10日生まれ、男爵キャラとしてはパリ・シャンゼリゼ通り出身。実際の出身地は兵庫県。お笑いコンビ・髭男爵のツッコミ担当。地元の名門・六甲学院中学に進学するも、引きこもりになり中退。大検合格を経て、愛媛大学法文学部に入学も、その後中退し上京、芸人の道へ。「新潮45」で連載した『一発屋芸人列伝』が、「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞し話題となる。その他の著書に『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)がある。週に一度「貴族のメルマガ」を絶賛配信中。

山田ルイ53世(以下、山田):そもそも売れると思ってなかったですから。僕にとってお笑いの仕事って、夢とか希望とか憧れじゃなくて、現実的に飯を食えるかどうか、なんですよ。だから、何年も小さなライブハウスで同じようなメンバーと、客がそこそこ入ってる状態でパフォーマンスしたり、オーディションに出て受かったり、落ちたりを繰り返す日々を送ってると、売れる気がしなくなるんですよね。だから、まず「売れた」っていうことが単純に嬉しかったですね。でも、売れて仕事を頑張っている状態で、まさか自分が一発屋になるなんて思わないわけです。これは売れてる芸人さんみんなそうでしょう。

僕の場合は、だんだん、まずいなって状況がわかってきたんです。僕ね、毎日、手帳をつけてたんですよ。仕事が入ってきた時に、この日はどんな仕事をしたか、その出来はどうだったか。そういうのをずっとつけてたんです。そうすると、ある時から、ダメなんが増えてきた。あるいは、本当のお笑いの戦場みたいなのに呼ばれなくなってきたりして。仕事の量は減らないんだけど、客寄せパンダみたいな仕事しかこない。そろそろまずいなって感じてたら「なんやろう? この感覚、懐かしいぞ」って思ったんです。気づいたら、引きこもりになって全てを失う時と同じ感覚だったんですね。だから、僕はちょっと前で予知できて、猫のようにしなやかに着地できましたね。横では樋口くんがビチャーンって落下してました(笑)。

――一発屋芸人としての運命を背負うわけですね。その時の感覚ってどういうものでしたか?

山田:最初は嫌でしたよ。今も喜んでるわけじゃないですけど。でもね、どんな人間でもどかーんって売れたら、そりゃあ多少天狗になるんですよ。そうでなかったらそいつは死んでるのと同じなわけで。ちやほやもされますしね。だから、その後、急激に仕事が減ってきて、周囲の対応も変わってくるっていうのは、負けを認めるのと一緒でなかなか受け入れがたいんです。でもね、その負けをごくりと飲み込んで「俺は一発屋や」って居座った時に、ちょっと強くてカッコよくなれるんです。誰だって負けから逃げることはできませんから。

山田ルイ53世式「とりあえずやってみる」の哲学

――そこから這い上がる力ってどうやって生み出すんでしょうか?

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山田:引きこもりを脱出して、ある時期から考え方を変えたことがありました。「とりあえずやる」ということを大事にするようにしたんです。この「とりあえず」の力というのは強いなって。人間って自分のやっていることにどうしても意味を見出したい生き物でしょ。文脈やストーリー性がないとしんどいわけじゃないですか。でも、それに重きを置きすぎると動けなくなるんですよ。ちゃんと前に進めなくなる。そこで「とりあえずやる」っていうのは、変な風に聞こえるかもしれないですけど、目の前のことを高いレベルで処理していくのにすごく適した考え方なんです。割り切って物事を進めていくことができるわけです。

「とりあえずやる」って思うようになって初めてちゃんと正面から向き合えることってあるんですよね。だから、僕は、迷ったり、ごちゃごちゃしている時は、「とりあえずやろう」って思考に切り替えることにしています。もっと素晴らしい人は、未来予想図があって、そこから逆算して、計画表を書けるんでしょうけど、僕はそんなに器用やないんで。「とりあえず」一つひとつを潰していこうと、いつも考えています。

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