【前編】「僕にとっての“社会”は“普通”なこと。引きこもり時代を美談にしたくない」髭男爵・山田ルイ53世(芸人)

失敗ヒーロー!

2018/09/11
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ひぐち君とは全くの他人同士。コンビを組んだ最初から「失敗」だった

――今振り返ってみて、山田さんにとって、芸人を始めたばかりの頃の「失敗」って何でしょうか?

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山田:僕らの場合、最初からつまずいてるんですよね。普通、やっぱり、お笑い始める時って、同級生や養成所で意気投合した人とコンビ組むわけでしょ。でも、僕らは、さっき言ったような事情で、全く知らない人同士が組むことになってしまった。ひぐち君ってね、すごく我が強いんですよ。我が強いわりに、ネタもようわからんやつ書いてくるし、パフォーマンスも決して優れているわけじゃない。じゃあどうしてひぐち君とのコンビが続いているかっていうと、僕は実は養成所入ってから、何度もコンビ組んでは解散してるんです。しかも些細な理由で。それで次に組む時は、才能云々は置いておいて、続けることが大事やって決めていました。継続は力なりって言うでしょ。まさにそれやったんです。

――そこから貴族にたどり着いたわけですね。

山田:でもね、貴族にたどり着くまですぐやったかっていうと、そうでもないんです。やっぱり、芸人って始めたての頃はみんな、ダウンタウンさんとか売れてる人に憧れて漫才始めるわけじゃないですか。でも、そうすると、結局、同じスタイルで、同じようなことをするわけです。よっぽど、一個一個のボケの発想とか技術がないと、人より頭一つ出ないわけです。それに気づくまでに時間がかかりました。お笑いの世界ってね、世間の人は「自由奔放で変わった世界や」って思われはるんですけど、中に入ってみると、意外と同調圧力みたいなのがあるんです。普通の漫才やってた人が、急にシルクハットかぶって変なこと始め出すと、そんなん絶対あかんやんって空気が生まれる。だからなかなかそっちに踏み出すことができない。勇気が必要なんですよ。

僕にとって「社会」っていうのは「普通」なこと。そこにたどり着くまでに時間がかかった

――山田さんのお話を聞いていると「社会」がひとつキーワードなのかなと。引きこもりになられてから「社会」に属せてないっていう感覚があって、一発当てたことによって「社会」に戻ることができた。本にもそのように書かれていますが、山田さんにとって「社会」とは一体何でしょうか?

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山田:「社会」って、僕は「普通」ってことと同義やと思うんです。じゃあ「普通」って何かって言うと、山で言うたらね、一般の人たちからしたら麓のことを言うんですよね。でも、僕は一度「社会」から陥落してるから、僕にとっての「普通」は五合目くらいなんです。それくらいハードルが高いわけ。だから、「普通」っていう状態にはすごく憧れていて。よくね、ミュージシャンの方が「俺は社会の歯車になりたくない」みたいなこと歌うでしょ。僕は、逆。すごく歯車になりたい。誰かの敷いたレールの上を走りたい。だって、それが「社会」に組み込まれるってことだと思うので。

――現在は、「社会」に属してるって感覚はありますか?

山田:今は属しているでしょうね。娘もいますし。ただ、パパ友的なものには抵抗がまだあります(笑)。こないだ奥さんから、ママ友グループならぬパパ友のLINEグループを作るけど、参加する? って聞かれて、それはちょっと待ってくれって拒否しちゃいました(笑)。まだそういう人付き合いには苦手意識がありますね。友達もひぐち君しかいませんし。僕、困るんですよ。番組のアンケートで仲の良い芸能人は誰ですか? って聞かれると、いやいや、芸能人と仲良くなれるわけないやんって。そういう意味ではまだ引きこもってる部分はあるのかもしれません。

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後編では…

山田ルイ53世さんが描く一発屋流マネジメント術とは一体どのようなものなのでしょうか。一発屋芸人となり、一世を風靡した当時の心境、そこから落ちていく感覚、一発屋芸人たちとの出会い、そしてそこで見つけたビジネス哲学とセルフマネジメント術について、後編では詳しくお聞きしました。

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