副業を解禁すれば会社も社員も強くなれる

本当の「働き方改革」の話をしよう その7

2018/05/01
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著者:日野瑛太郎
 

最近、「働き方改革」の流れに乗ってか、副業を解禁する企業が増えてきています。ソフトバンクやDeNAといった大手企業が副業を許可しはじめたことはニュースになりましたし、日本政府も時代の変化に合わせて、モデル就業規則(厚生労働省が公開している就業規則のひな形)から副業禁止規定を削除しました。今後は会社員が副業をすることが普通になっていくのかもしれません。

実は、僕自身も会社員時代は副業に結構な時間を割いていました。当時はいまほど副業に対する理解が浸透していなかったので、副業をしているというと怪訝な顔をする同僚も少なくなかったのですが、副業は僕に様々なメリットをもたらしてくれました。

会社以外の仕事に幅広く取り組むことで、会社では伸ばすことができないスキルを伸ばすことができましたし、純粋に副業の収入によって金銭的にもだいぶ楽ができました。何より、副業を通じて会社以外の「自分の仕事の時間」を持ったことで、会社の仕事を相対化することができたのは最大の収穫でした。そうやって副業を通じて「会社の世界がすべてではない」と知ったことが、いまの自分の考えや生き方に繋がっていると確信しています。

このように、僕は基本的には副業を強く推奨し肯定する立場ですが、副業をする際は少し注意が必要なのも事実です。そこで今回は、副業がもたらすメリットと、実際に副業を行う際の注意点について考えてみたいと思います。

副業を認めることは、会社にとってもメリットが大きい

社会全体の流れは副業解禁に傾きつつあるものの、それでもまだ副業を禁止している会社は少なくありません。経営者の中には未だに「副業を解禁すると、本業が疎かになるリスクがある」という考えを持っている人がいます。しかし実際には、むしろ副業によって、本業に良い影響が出ることだってありえます。僕自身、会社員時代にそれを実感したことがあります。

当時、僕は会社でソフトウェアエンジニアをしていたのですが、ある日突然、スマホアプリを開発する仕事にアサインされました。このアサインは、僕の会社でのキャリアを見ると、やや強引なようにも思えました。なぜなら、僕はそれまではずっと一貫してサーバーサイドの開発にのみ従事していたため、スマホアプリの開発というのはスキルセットにやや乖離があったからです。普通はこのようなアサインを行うと、キャッチアップが必要な分、戦力になるまで時間がかかってしまいます。

ところが、実際にはほとんど苦労することなく、僕はスマホアプリを開発するチームに合流することができました。入ったその日にはいくつかの機能を実装できたので十分戦力になれたと思います。これが可能になったのは、僕が会社の仕事とは別に、副業としてスマホアプリを開発する仕事をやっていたからです。

このように、副業によって得たスキルが、本業に役立つことは少なくありません。僕の経験した例では、本業も副業も、どちらもプログラミングという同じ領域に属するものでした。もっとも、このようなシナジーは本業と副業が違う領域に属していても起こります。たとえば、副業でライターの仕事をしているエンジニアは、副業をしていないエンジニアに比べてドキュメントを書くスキルに秀でていると言えるはずです。時には、ほとんど関連がなさそうな副業と本業が結びつき、ユニークなビジネスアイディアが生まれることだってあるかもしれません。

現代は、仕事量を単純に増やすことだけでは成長が見込めない時代です。それを打破する手段としてイノベーションという言葉が持て囃されていますが、そのようなイノベーションは「一見関係がなさそうなもの同士の組み合わせ」によって起こることもあります。社員の副業を解禁することは、イノベーションを呼び込むことにも繋がりうるのです。

副業をするなら自分のいちばん興味があることで副業しよう

では、実際に会社員が副業をする場合、どうやって副業の対象を選べばいいのでしょうか。最近は、副業解禁の流れを受けて様々な副業を紹介した本なども出版されているそうですが、僕の考える副業の選び方は非常に単純です。それは、自分のいちばん興味があることで副業をするということです。

会社でやる仕事では、必ずしも自分がいちばん興味を持っているものをやらせてもらえるとは限りません。時には、意にそぐわないことも「給料をもらっているから」という理由で我慢してやらなければならないこともあります。副業では、このような働き方をしてはいけません。本業ではやりたくないことをやっているのに、副業でもやりたくないことをやっていては、人生が無駄に過ぎていくだけで終わってしまいます。

副業を興味優先で選ぶということは、副業では金銭的な収入よりも楽しさを優先するということです。自分が心から興味を持って取り組める仕事は、多くの場合、最初はまったく儲かりません。しかし、それでいいのです。生活に必要な分は本業で稼いでいるのですから、副業はゆっくりとお金を気にせず楽しんで行うべきです。そうやって腰を据えて取り組めば、いずれ副業でもお金が稼げるようになるかもしれません。

僕があまりおすすめしない考え方は、副業をもっぱらお金を稼ぐ手段と考えてしまうことです。もちろんお金を稼ぐことは悪いことではありませんが、そのために楽しくないことでも我慢してやろうと考えてしまうと、それは結局、労働時間を伸ばしているだけになってしまいます。たとえば、平日は会社で働き、土日にコンビニでアルバイトをするというのもたしかに副業とは言えますが、コンビニでの仕事に特別興味がないのなら、このような働き方は気持ちの面でも体力の面でも続くはずがありません。

疲れたらいつでも休めることが大切

副業を選ぶ場合にもうひとつ大切なことは、疲れたらいつでも中断できるものを選ぶことです。そういう意味では、大きな受託開発のような仕事を副業として請け負うことも僕はあまりおすすめしません。これらはいずれも、大きな責任が発生する仕事です。本業でも責任を負っているのに、副業でもさらに責任を負ってしまうと、もはや逃げ場がなくなってしまいます。

僕は会社員時代に(受託ではなく自分向けに)スマホアプリを開発したり、ブログを書いたりすることをもっぱら副業として行っていましたが、これらはいずれもやめたくなったら自分の意思でいつでもやめられる仕事です。実際、本業が忙しく時間が取れない場合は中断することもありました。仮に時間があっても、疲れている時は休むことを優先していました。だいぶいい加減に聞こえるかもしれませんが、むしろ最初はこのようないい加減な態度でやれるぐらいの仕事にしておかないと、追い詰められた時に大変なことになります。

もちろん、副業では他人から仕事を一切請けるなと言いたいわけではありません。内容によってはそもそも請負以外の形態では仕事になりにくいものだってありますし、僕自身もライター関係の仕事は会社員時代にいくつか請けていました。ただ、このような請負の形で副業をする場合は、自分の余力がどのぐらいあるのかをつねに慎重に判断しなければいけません。

副業は、うまく行えばスキルアップやキャリアアップなどに繋がり、個人の可能性を大きく広げてくれます。しかし、やり方を間違えば仕事や責任に追われ、生活を破綻させる危険だってあります。どうか副業とうまくつきあって、職業人生をより実りのあるものにしてください。

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日野 瑛太郎

ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)などがある。

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