ダイバーシティの推進は組織にとっても労働者にとってもメリットしかない | マネたま

ダイバーシティの推進は組織にとっても労働者にとってもメリットしかない

本当の「働き方改革」の話をしよう その5

2018/02/09
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著者:日野瑛太郎
 

「働き方改革」が叫ばれる中で、重視されるようになった概念のひとつに「多様性」があります。たとえば、日経新聞が行った「働き方改革」に関する調査である「スマートワーク経営」調査では、スマートワーク経営を支えるひとつの柱として「ダイバーシティの推進」が挙げられており、「多様性のある組織づくりをした会社は新しい働き方を実現している」という価値判断がなされていることがわかります。

このように、多様性(ダイバーシティ)に対する社会からの注目度は高まっていることもあり、コーポレートサイトなどで自社の取り組みとして「多様性のある組織づくり」を紹介する会社も増えてきています。今までは日本企業といえば「同じような人ばかり採用して、採用後は同調圧力によってさらに同じような人ばかりの組織を作る」という嫌なイメージがありましたが、それが解消されつつあるというのであれば大変喜ばしいことです。

ところで、あなたは「なぜ企業は多様性のある組織を目指さなければならないのか?」と問われて答えられますか? 言い換えるならば、なぜ組織は均質ではいけないのでしょうか?

考え方次第では、組織は均質なほうが効率的なように思えなくもありません。同じような人たちだけで構成される均質な組織なら、構成員の間で価値観の違いや考え方の違いで揉めることもないでしょうし、全員でひとつのことを推し進めるのも得意そうに見えます。一方で、構成員が多様な組織の場合は、構成員間の価値観の違いや考え方の違いをうまく折り合わせなければいけません。その分だけ、物事を推し進める効率は低下するようにも思えます。

このように、多様な組織には均質な組織にはない「非効率さ」が確実につきまといますが、それでも組織が多様性を重視しなければならないのはなぜでしょうか? それは、多様な組織には均質な組織にはない大きなメリットが存在しているからに他なりません。今回は、この点について考えてみたいと思います。

多様性のある組織は変化に強い

まず、多様性のある組織の強みのひとつに、変化に強いということが挙げられます。これは、ビジネス環境の変化が早いと言われる現代においては非常に大きなメリットです。

多様性のある組織の構成員は一人ひとり考え方も違えば得意・不得意も違います。これを総体として見た場合、何をするにせよ組織内の誰かがそれを得意としている可能性が高いと言えます。守備範囲が広い、と言い換えてもいいかもしれません。それゆえ、組織のメインの活動が短い期間で大きく変化したとしても、構成員の役割を柔軟に変えることで変化に対応できる可能性が高くなります。

たとえば、とある会社の主力事業がtoB(企業向け)からtoC(一般消費者向け)に短い期間で大きく変化した場合を考えてみましょう。toBの事業とtoCの事業ではマーケティングのやり方も、営業のかけ方も大きく異なります。ここでその会社の構成員がtoBに特化した均質な集団である場合、toCの事業に短い期間で対応するのはかなり大変です。社内には保有しているスキルも考え方もtoBに特化した人材しかいないわけですから、短期間でなんとかするなら、toC事業の経験者を頑張って採用するぐらいしか方法はないでしょう(そして、そんなに簡単に都合よく人は採用できません)。これに対して、構成員に多様性がある場合は、構成員の配置を適性に応じて組み替えることでtoC事業に対応できる可能性があります。toB事業の時にはそれほど注目されなかった誰かのスキルや考え方が、toC事業に転換後に会社の大きな強みになることだってありえます。

上で挙げた例のように、会社の主力事業がtoB事業からtoC事業に変化するような変化は現実ではありえないと考える人がいるかもしれませんが、変化の早い現代では会社の主力事業が大きく変わることは決して珍しいことではありません。ベンチャー企業はビジネスアイディアとマーケットをすり合わせるために「ピボット」と呼ばれる方向転換を頻繁に行いますし、大企業であってもフィルムメーカーが医薬品事業に参入し、ネット企業が自動運転事業に参入するなど変化の例は多数存在します。むしろ、そうやって時代に合わせて変化できることが持続できる企業の条件であり、そのためには構成員が多様であることが不可欠です。

多様性のある組織からイノベーションが生まれる

また、イノベーションを生み出すという観点からも、組織の多様性は重要になってきます。

事務処理能力の高い人間を大量に集めて、それこそ人海戦術でビジネスを回せば会社が成長していく時代はもう過去のものです。これから日本の人口は減っていくことが確実になっていますし、国際競争は今よりずっと激しくなることが予想される以上、人の数の力で押し切るようなビジネスを続けていては未来がありません。そういうこともあり、最近ではやたらとイノベーションの重要性が喧伝されますが、その土台になるのが多様性のある組織です。

均質な集団が集まって議論したところで、生み出されるアイディアはやはりその集団の均質性がそのまま反映されたものにしかなりません。一方で、多様な集団による議論は、それだけ多くのものの見方が反映されていることになるので、斬新なアイディアを生み出すという点では有利です。もちろん、イノベーションを起こすのはたとえ多様性のある組織であっても簡単なことではないと思いますが、少なくともそのような組織を目指すことがイノベーションを起こすための必要条件であるとは言えるのではないでしょうか。

多様性のある組織でこそ個人は成長することができる

さらに、多様性のある組織は、働く個人にとっても有益です。なぜなら、そのような多様性のある環境でこそ、人は新たなものの見方や考え方を学び取り、成長することができるからです。

特に意識しないでいると、人間はすぐに均質な人たちで固まろうとしてしまいます。そのような均質な集団は居心地こそよいものの、何かを学ぶという観点ではあまりよい環境ではありません。均質な集団の中にいると、頭の中に起こる考えは「そうだ、その通りだ」という自分の信念を追認するものばかりになり、年を経るとともにより頑固な人間になっていくのが関の山です。

一方で、多様性のある集団の中に身をおいていると、嫌でも日々の発見の機会が多くなります。ある程度生きていれば、誰でも「ハッとさせられた経験」があると思いますが、そのような「新たなものの見方」を学べる機会は多様性のある組織のほうが圧倒的に多いと言えます。このような「物事を別な角度から見る」経験を重ねることで、人間はバランス感覚を身に付け他者と折り合っていく力が滋養されます。その力は仕事にかぎらずプライベートの人間関係においても役に立つことでしょう。

ここまで、多様性のある組織のメリットをいくつか述べてきましたが、何より重要なことは「多様性な組織で働くほうが楽しい」ということです。周囲がみんな、ほとんど自分と同じような人たちだったとしたら、それはほとんど一人で働いているのと変わらないのではないでしょうか? 誰かと一緒に何かをすることを楽しみたいのであれば、自分とは違う人たちの集団の中に身を置いたほうが刺激的ですし、何より退屈しません。多様性のある組織は、そういう単純な理由からも良いものです。

ぜひ、多様性のある組織の中で、いろんな人がいることを楽しみながら働いてみてください。

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日野 瑛太郎
ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)などがある。
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