どうすれば社員の「生産性」を適切に評価できるのか? | マネたま

どうすれば社員の「生産性」を適切に評価できるのか?

本当の「働き方改革」の話をしよう その3

2017/12/05
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著者:日野瑛太郎
 

「働き方改革」が叫ばれる中で、「生産性」というワードを耳にする機会が非常に多くなってきました。これまでの日本の会社ではとにかく長時間働いてそれによって価値を出そうという考え方が主流でしたが、そのような働き方は非常に生産性が低いものであり、今の時代には合っていません。これからは働く時間が短くても高い付加価値を生み出すことができる生産性の高い働き方が求められるようになります。

このような生産性が重視される時代には、社員の評価方法も時代に合わせたものにアップデートする必要があります。「社員をどうやって評価すればいいのか」という問いは「働き方改革」が叫ばれる以前から非常に難しい問いとして存在していましたが、なかなか明確な答えが出しづらい問題であるがゆえに、上司のフィーリングや思い込みによって評価が決められていた現場が少なくありません。

たとえば、長時間労働を率先して行っている社員の評価は「毎日、遅くまで頑張っている」という印象だけで高くなりがちでした。実はその社員が毎日遅くまで残業をしているのは残業代目的で、ただダラダラと仕事をしていただけだとしても(つまり、非常に生産性の低い働き方をしていたとしても)、上司から頑張っているように見える以上は高い評価になってしまうのです。

一方で、テキパキと効率的に仕事を進め、毎日残業せずに定時で帰る社員(つまり、非常に生産性の高い社員)があまり評価されないということも起こっていました。せっかく効率を上げて一生懸命働いているのに、上司から「あいつはいつも定時で帰ってるけど、仕事のやる気がないのか?」などと言われてしまっては社員のモチベーションダウンは甚だしいものがあります。こんないい加減な評価をされてしまったら、生産性を高めようという社員は誰もいなくなるに違いありません。

今後、社会全体として生産性を高めていこうというのであれば、上述のような印象に基づく社員評価の方法は直ちに捨て去らなければなりません。そして、生産性の時代にふさわしい社員の評価方法に変えていく必要があります。ではいったい、それはどのような評価方法なのでしょうか? 今回はその点について考えてみたいと思います。

仕事の成果は「生産性」を保証しない?

生産性の時代にふさわしい社員評価の方法という話になると、よく仕事の成果だけを評価することが一番だと考えてしまう人がいます(いわゆる単純な「成果主義)」。たしかに、仕事の成果だけを見て社員を評価するようにすれば、毎日残業している人が無条件で高く評価されたり、毎日定時で帰っているからやる気がないと評価されたりすることはなくなります。どんな働き方をしようがそれは自由で「結果がすべて」というのはある面では公平な評価のようにも思えます。

しかし、この評価方法にも問題はあります。それは、仕事のやり方を評価の対象から外したがゆえに、非効率な働き方も許容されてしまうという点です。仮に「結果がすべて」だということになれば、生産性を高める努力を一切せずに、根性だけで解決するのも本人がよいと思っているのであればアリということになってしまいます。「成果主義」にさえすればみんなが効率的な働き方をするようになるというのは単なる希望的な思い込みで、実際には今まで以上に長時間労働が加速する可能性だってあるのです。

また、そもそも「仕事の成果」を正当に評価できるのかという問題もあります。部品の組み立てのような単純な作業であれば、成果を数値化してアウトプットの多い・少ないを判断することも可能ですが、会社で多くの人が従事している仕事はもっと複雑で多数の関係者が絡んでいるため、仕事の成果だけ見てある社員が生み出した価値を客観的に評価することなど不可能です。結局、フィーリングで評価することになりかねません。

まずは「目標」の定義から始めよう

思うに、社員を評価するためには、まず目標を定義するところからはじめる必要があります。目標が具体的にしっかりと定義されていれば、いざ社員を評価する時にはその目標と到達度を比較することで、客観的にその社員の評価が定まります。逆に、それ以外の方法では客観的な評価などできるはずがありません。ここでいう目標は、社員の評価を行う際の物差しの役割を果たします。

目標は、ある期のはじめに社員と上司で面談をして十分に話し合った上で決めるのが一般的です。目標設定の具体的なコツについては以前書いた記事を参照していただきたいのですが、この記事でも書いたように、目標の到達度が客観的に測れるような目標を立てておくことは特に大切です。ここで決まった目標が社員のミッションとなり、あとで評価面談をする際には、この目標と実際の成果とを照らして社員を評価することになります。

実はこの評価の方法は目標管理制度(MBO:Management by Objectives)と呼ばれるもので、あのピーター・ドラッカーが1954年の自著で提唱したものです。つまり、かなり古くからある人材評価の方法なのですが、生産性の時代だと考えられる現代でもベースとなるのはこの評価方法になります。

仕事の「仕組化」や「ナレッジの共有」にこそ高評価を

生産性が今後ますます重要になっていく現代においては、生産性を高めるような仕事をした社員にはぜひとも高い評価を与えたいものです。そのような評価を行うためにも、社員と上司で目標を定義する際には、積極的に生産性向上に関するものを含めるようにすべきでしょう。

たとえば、チーム内で定型化されている作業を自動化する、あるいは作業のムダを省いてより効率的なオペレーションを考えるなどの仕事は、どちらかというと「おまけ」のような扱いを受けやすい仕事です。このような仕事は「時間がある時に、誰かが適当にやってほしい」という状態のまま放置されることが多いのですが、きちんと担当者をアサインし、その社員のミッションとして明確に目標を定義すれば、積極的に取り組まれるようになります。

また、より広い意味で考えると、業務知識の共有などもチーム全体の生産性を高める仕事だと言えます。もしかしたら、知識を共有することでより仕事を効率的に行うアイディアが他のチームメンバーから出てくるかもしれません。このようなチーム内の知識共有に関する仕事についても高い評価を与えるようにしたいものです。

作業の効率化業務や知識の共有は、短期的に見るとその分だけ本来の業務を行う時間が削られることになるので、一時的には生産量が低下するように見えます。しかし、中長期的な目線に立つと生産性への寄与度は非常に高いものです。価値ある仕事が多数なされるようにするためにも、まずはこのような生産性に寄与する仕事が高く評価されるという空気を組織内に根付かせることがまず大切だと言えるでしょう。

正当な評価が「生産性」の向上につながる

今まで日本の会社員の生産性が低かったひとつの大きな理由に、そもそも生産性の高い働き方が評価されなかったことが挙げられます。色々と工夫をして生産性を高めるよりも、会社に遅くまで残って頑張っている姿勢を上司に見せた人のほうが評価されるのであれば、誰も進んで生産性を高めようとはしないのはあたりまえです。

生産性の高い働き方に正当な評価を与えることができれば、社員は率先して自らの生産性を高めようと努力するようになります。その結果、長時間労働は減り社員の心と体の健康も守られます。会社の業績だって、上がっていくかもしれません。

もちろん、評価制度の運用は非常に難しく奥の深いテーマなので、いきなり完璧な運用をすることは不可能です。最初は試行錯誤が必要でしょうが、少しずつでもいいので、ぜひ生産性を高めた人がやる気を失わない評価制度の運用を目指していただきたいと思います。

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日野 瑛太郎
ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)などがある。
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