誰もが加害者になりうる。ハラスメントをしないために絶対に気をつけるべきこと

本当の「働き方改革」の話をしよう その15

2019/01/08
Pocket

著者:日野瑛太郎
 

最近、ネットのニュースなどでパワハラやセクハラが話題になることが増えてきています。それだけ世の中がパワハラやセクハラに対して厳しい目を向けるようになってきたということだと言えますが、一方で気がかりなこともあります。ネットなどで話題になるパワハラやセクハラは、基本的に「誰が見てもアウト」というケースがほとんどです。たとえば最近だと、営業成績が振るわない部下を「数字ができないなら、ビルから飛び降りろ」「オマエの家族を皆殺しにしてやるぞ」と恫喝したとか、深夜に仕事をサボっていないか監視するため3分おきにLINEで「起きてます」と連絡させたとか、通常の感覚ならドン引きせずにはいられないパワハラが数多く報道されています。

これらの行為がパワハラにあたることは誰の目にも明らかでしょう。あまりにも明確に「アウトな行為」であるがゆえに、自分とは無縁な話だと思ってしまう人もいるかもしれません。しかし、そのような認識は危険です。パワハラやセクハラは必ずしもニュースで報道されるような過激なものであるとは限りません。報道されないレベルのパワハラやセクハラは日々数多くの職場で発生していますし、しかもほとんどのケースでは加害者がハラスメントにあたると自覚せずに行っています。

本人としては部下を熱心に指導しているつもりでいても、パワハラやモラハラになってしまっている例は様々な会社でよく見かけます。あるいは、本人としては場を和ませようと気軽な冗談を発したつもりでも、相手にはセクハラだと受け取られてしまっていることもありえます。パワハラやセクハラは、意識的に気をつけていないと簡単に加害者になってしまうという視点を忘れてはいけません。

そこで今回は、パワハラやセクハラなどのハラスメントについて、まず個人としてどのように気をつけるべきかを考えます。また、組織からハラスメントをなくすために、会社は何をするべきかについても検討します。

ハラスメント加害者には「相手目線」がない

ほとんどの事例では、ハラスメントの加害者は自分がハラスメントを行っていることに気がついていません。「ハラスメントになることは自分でも分かっているが、それでもあえてやっている」というケースは稀です。つまり、多くの場合問題とされる行為は「加害者の中ではセーフ」になっているわけで、この点において、被害者と加害者の間で認識に齟齬があります。

何よりもまず理解しなければならないのは、ハラスメントになるかならないかの判断をするのは加害者ではなく被害者であるということです。加害者がいくら自分の中ではセーフだと思ったと言っても、受け取った側がハラスメントだと感じたのであれば、ハラスメントになってしまうというのが近年の主流とされる考え方です。極端なケースはともかく、ハラスメントになるかならないか微妙なグレーゾーンでは「相手がハラスメントだと感じればハラスメントになる」と考えておけば間違いはありません。

これは結局、自分の行動についてどれだけ「相手目線」で考えることができるかという意味でもあります。「自分ではハラスメントだとは思わなかった」という言い訳は、コミュニケーションの受け手側の目線に立っては考えなかったということを言っているのと同じであり、自分勝手だと非難されても仕方がありません。思うに、「相手目線」で考えながらコミュニケーションを取ることは、ハラスメントの境界線の判断だけにとどまらずビジネスパーソンにとって大切な能力です。この点については自分に甘えずに、できるだけ「相手目線」で考えて行動する習慣を身につけていただきたいと思います。

「昔は問題にならなかった」は言い訳にならない

年配の方などに多いのですが、パワハラやセクハラについて「昔はこのぐらいでは問題にはならなかった」という言い訳をする人がいます。これは、はっきり言って論外です。仮に昔は許されていたとしても、我々は昔ではなく今に生きているわけですから、現在のルールに照らしてアウトならアウトになるのは当然です。

おそらく、「昔は問題にならなかった」という言い訳をする人は、昔の価値観を特にアップデートすることなく働いているということなのだと思います。これは「自分にとって居心地のよい価値観以外は認めない」ということでもあり、非常によくない考え方です。繰り返しになりますが、ハラスメント加害者になることを避けるために必要なのは「相手目線」で考えて行動することです。相手目線に立つためには、つねに「自分の持っていない価値観や考え方」に対してオープンでなければなりません。

「昔はよかった」と考えるのは個人の自由です。そう考えることを批判する権利は誰にもありませんが、だからと言って「他の人に昔と同じように考えること」を強制することは許されません。現代社会で働いている以上は、昔のルールは自分の中にだけとどめ、現代のルールに従って周りの人と協働していくべきだと言えます。

「うちの会社ではあたりまえ」も言い訳にならない

また、一部の会社では、組織風土としてパワハラ的なコミュニケーションを「うちの会社ではあたりまえだ」と言って許容している場合があります。たとえば、営業会社やコンサルティングファームなどでは、教育という名目でミスをした新人や部下を激しく叱責することがあるようですが、(部下がそれを完全に望んでいる場合を除けば)これもパワハラに該当するケースは多いように思われます。

非常に残念なことは、このようなパワハラまがいの「叩いて伸ばす」という教育方法が、先輩から後輩に脈々と受け継がれてしまっているということです。新人時代に叩いて伸ばされた人は、かなりの確率で後輩も自分と同じように叩いて伸ばそうとします。これは僕の友人の話ですが、彼が徹夜して作った資料を上司に提出したところ、上司はそれをチラッと見ると「ダメだな」と言ってすぐに彼の目の前でシュレッダーにかけてしまいました。友人はその時は泣きそうになったと言っていましたが、後日飲み会の席でその上司に聞いたところ、その上司も昔、当時の上司に徹夜で作った資料をシュレッダーにかけられたことがあったそうです。つまり、パワハラまがいの指導方法が秘伝のように代々受け継がれているわけです。この友人が、将来部下の作ってきた渾身の資料をシュレッダーにかけないことを祈らずにはいられません。

あたりまえですが、負の連鎖は代々受け継ぐのではなく、自分の代で終わりにするのが本当の意味で組織のためになります。組織風土に感化されてついハラスメントまがいの行動を取ってしまっている人は、実は先輩たちから悪い影響を受けていたのではないかと少し考えてみてください。

ハラスメントは予防がもっとも効果的

最後に、組織からハラスメントをなくすために、会社としては何をするべきかについて考えます。

会社は様々な人が集まって協働する場所ですから、コミュニケーションの行き違いはつねに起こるリスクがあります。問題は、その行き違いが時にはパワハラやセクハラといった大きな問題に発展してしまうことです。一度ハラスメント事件が起こってしまうと、被害者はもちろんのこと他の社員のモチベーションにも影響がありますし、会社としての評判も落ちます。そういう意味では、ハラスメントは起こってから対処するのでは遅いのです。

ゆえに、会社がすべきことは何より第一に予防ということになります。どのような事例がハラスメントにあたるのかを研修などでしっかり社員に共有し、加害者になってしまった場合に被る不利益を周知徹底することで、ハラスメントの発生率自体を下げることが求められるでしょう。

もちろん、それでも100%ハラスメントの発生を防ぐことはできません。実際に起こってしまった場合は、事前に決めたルールに従って厳正に対処することが大切です。起こってから「対処するためのルールがない」と慌てないためにも、事前に通報窓口や事件の処理方法についてしっかりと決めておくことも会社の義務だと言えます。

当然ですが、ハラスメントは仕事のパフォーマンスを下げるものであり、個人にとっても組織にとっても有害なものです。会社と個人のそれぞれがハラスメント発生の予防に努めることは、「守り」の働き方改革として、今後もより強く求められていくでしょう。ハラスメントがなくなり、未来の会社がより働きやすい場所になることを願います。


photo by Owen Parrish

マネたまご マネたまをフォローすれば最新記事をお届けします!
運営会社 | Copyright © kaonavi, inc. All Rights Reserved.