2017/03/10 公開

マネージャーとして成長するってどういうことだろうか?

「脱社畜ブログ」流マネジメントハック その6

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ビジネスパーソンは、基本的に仕事の経験を積むことで成長していきます。「成長」の定義には議論の余地がありますが、たとえば新入社員の頃は一人ではほとんど何もできなかった人が、数年後には一人でも業務がまわせるようになっていればそれは「成長した」と言ってよいでしょう。プレイヤーとして自分がこなせる業務の幅を広げていくことを成長と捉えるなら、基本的に成長できるか否かは本人の努力次第ということになりそうです。

ところが、マネージャーの場合は少し事情が異なります。マネジメントは相手があってはじめてできることなので、自分ひとりがいくら努力したからと言って相手が動かなければまったく意味がありません。自分ひとりの努力だけではどうにもならないことが多いのです。このような複雑な課題に取り組むマネージャーにとって、成長とは何を指すのでしょうか? 今回は、この「マネージャーにとっての成長」というテーマについて少し考えてみましょう。

自分自身が成長しようという発想をまず捨てる

逆説的ですが、マネージャーにとっての成長は「自分自身が成長しようとすることをやめる」ことから始まると僕は思います。マネージャーの一番の仕事はチームや部下を成長させることであって、本人が成長することではありません。この点を勘違いしていると、マネージャーとして成果を上げることができず、結果的にマネージャーとしても成長することができません。

「自分はビジネスパーソンとして成長したい。そのためには努力を惜しまない」という意欲的な人をたまに見かけます。成長意欲が高いことは悪いことではないのですが、このような人たちがプレイヤーの頃の成長イメージを変化させることなくマネージャーになってしまうと、時にはチームメンバーを振り回すことにもなりかねません。

たとえば、いわゆる「マネジメントスキル」を上げることばかりに注意が行ってしまい、様々なフレームワークを習得したりマネジメントの本を読み漁ることにばかり時間を使って、肝心な「自分のチームの人間」を見ていないというケースは意外によくあります。マネージャーとして勉強をすることは否定しませんが(むしろ、時間がある限りやったほうがよいでしょう)、勉強はあくまで自分の目の前にある問題を解くためにやっているということを忘れてはいけません。

他人の成長を促そう

マネージャーが成長させるべきなのは、自分ではなく他人です。これは、自分が成長するのに比べると遥かに難しいと言えます。

あたりまえですが、他人は自分の思うようには動いてはくれません。そのような「自分の思いのままにはならない他人」を成長させるには、自分を成長させるために行っていたこととは違ったやり方が必要です。

ポイントは、「問題解決」よりも「動機」を重視することです。プレイヤーとして優秀な人ほど、目の前の問題を「どうやって解くか」に目が行きがちですが、自分の思い通りには動いてくれない他人を動かすためには「どうやって解くか」よりも「なぜやるのか?」という動機づけをはっきりさせることのほうを優先させるべきです。極端な話、「なぜやるのか?」という動機づけさえ本人の中ではっきりしていれば、あとは黙っていてもその人は勝手に努力して成長していきます。

もちろん、問題解決型の思考が悪いというわけではありません。「なぜやるのか?」という動機がはっきりした上で、実際に問題を解く際にはこの問題解決型の思考が必要不可欠です。既に動機づけが完了している部下をアドバイスする際には、従来どおりの問題解決型の思考でアドバイスをしていけばよいでしょう。大切なのは順番です。

自分が部下だったころを振り返ってみると、「なぜやるのか?」という動機の部分をしっかりと面談などで話し合ってくれるマネージャーの下では仕事に前向きに取り組むことができました。一方で、目の前の問題を解くことの相談にしか乗ってくれないマネージャーの下で働いていると、日々モヤモヤした気持ちが溜まっていき、仕事に全力で踏み込めないという状態になったものです。部下の成長を促したいなら、部下をモヤモヤさせてはいけません。

「自分でやったほうが早い」という考えは封印する

また、マネージャーとしてチームを成長したいのであれば、「自分でやったほうが早い」という発想は封印すべきです。

プレイヤーとして優秀な人がマネージャーになると、自分でやればあっという間に終わる仕事に部下が手間取っているのを見ていられなくなって、マネージャー自らがやってしまうことがあります。短期的な視点ではこちらのほうがチームの生産力が高くなるかもしれませんが、中長期的に見るとチームメンバーが成長しない分、逆に生産力が下がります。緊急時などの例外を除いて、マネージャー自らが出馬することは避けたほうがよいでしょう。

会社員時代に「自らコードを書きまくるマネージャー」が率いるチームのプロジェクトを見たことがあります。一見、そのチームの生産力は高そうに見えるのですが、メンバーに対する継続的な投資が行われていないので、いつまでたってもそのチームの生産力は上がりません。そのプロジェクトはマネージャーがひたすら頑張ることでなんとか最終リリースまで漕ぎ着けていましたが、もし途中でこのマネージャーが抜けていたらと思うとゾッとします。

チームが成長することで自分も成長できる

自分の成長ではなくチームの成長を優先し、チーム自体をより良いものへと変えていくことができれば、結果的に自分自身も成長することができます。

成長した部下から学ぶことも多いと思いますし、何より「チームをより良いチームになるように導いた」という体験は大きな財産です。マネジメントの本を何冊も読むよりも、ひとつの体験のほうがずっと役に立つことでしょう。こういった体験を積み重ねていけば、マネージャーとして大きく成長することが可能です。

結局、マネージャーとしてすべき仕事を前向きに実行していけば、成長は後から勝手についてくるものです。「思うように成長できない」と悩む時間があるなら、その時間で「いまマネージャーとして自分のすべきことは何なのか?」を考えたほうが何倍もマネージャーとして成長することができると言えるでしょう。ぜひトライしてみてください。

日野 瑛太郎
ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)などがある。
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