2017/02/09 公開

モンスタークライアントの管理術―部下を疲弊させないために―

「脱社畜ブログ」流マネジメントハック その5

Pocket

すべての仕事があてはまるわけではありませんが、多くの仕事ではクライアントとコミュニケーションを取る必要があります。B2Bの業態であれば顧客企業の担当者と、B2Cの業態であれば一般の消費者とやりとりをしなければならず、しかもなかなか神経を使う仕事です。

クライアントがものわかりのいいタイプであればよいのですが、必ずしもそのような恵まれた相手と仕事ができるとは限りません。言っていることに筋が通っていなかったり、言っていることがコロコロと変わったり、あるいは過剰な要求を押し付けてくるなど、一緒に仕事をするには厄介なクライアントはたくさんいます。僕はこのようなクライアントを「モンスタークライアント」と呼んでいますが、たとえ社内の人間関係が良好だとしても、モンスタークライアントが相手だと仕事はなかなかつらいものになります。

実は、このようなモンスタークライアントをうまくコントロールして、部下を疲弊させないようにするのもマネージャーの大事な仕事です。そこで今回は、そんなモンスタークライアントの管理術について考えてみたいと思います。

つねにクライアントのために全力を尽くすことだけが仕事ではない

仕事に対する姿勢として「つねにクライアントのために全力を尽くすべきだ」と考えている人がたまにいます。コンサルなどでは、これが行動指針のひとつに掲げられることもあります。このような考え方はたしかに立派なのですが、それを忠実に守ろうとしたせいでつらい状態に追い込まれることも少なくありません。

クライアントが満足するかどうかは、端的に言えば「相手の期待値を上回ったかどうか」で決まります。全力でいい仕事をすれば、当然相手の期待値を上回る可能性が高くなるので、クライアントは満足してくれるでしょう。もっとも、それと同時に次の仕事に対する期待値も上がるという事実を忘れてはいけません。

限界まで力を出し切って仕事をしてしまうと、次の仕事の際に、相手の期待値を超えられなくなるおそれがあります。

このような状況を避けるために、クライアントコミュニケーションでは全力で仕事をすること以上に「期待値コントロール」が重要になります。事前に相手の期待値を下げておけば、たとえ全力で仕事をしなくても相手の抱いた期待値を上回りさえすれば満足してもらえます。一方で、期待値コントロールを誤って相手の期待値を過剰に上げてしまうと、どんなに頑張って仕事をしても満足してはもらえません。普通、クライアントとの付き合いは一回切りで終わりというものではありませんので、このような長期的な視野に立ってクライアントとの付き合い方を考える必要があります。

クライアントの期待値コントロールは上司の役目と心得よう

そして、このようなクライアントに対する「期待値コントロール」を行うのは主に上司(マネージャー)の役目です。

多くの場合、部下は具体的な業務をクライアントの担当者と密にやり取りしながら進めることになるので、「クライアントのために全力を尽くす」モードになりがちです。クライアントから要求があれば、可能なかぎり応えられるように頑張る人がほとんどでしょうし、それ自体は悪いことではありません。

しかし、そうやってなんでもかんでも相手の要求に答え続けていると、期待値はどんどん高くなってしまいます。行き着く先は「頑張っているのに報われない」という状態です。そうなる前に上司は適切に介入してクライアントの期待値をコントロールしなければいけません。

介入方法は大きく2つあります。1つは、相手の要求を「それはできません」(あるいは「追加で料金が発生します」)と断ることです。担当者は情に流されついなんでも「できます」「頑張ります」と言いがちですが、マネージャーはもっと冷静でなければいけません。

もう1つは、部下の仕事を「そこまではやらなくてよい」と止めることです。頑張ってしまうタイプの部下の場合、クオリティを限界まで上げることにこだわることがありますが、その時点で十分なものができているならストップをかけて他の仕事を与えるべきでしょう。適切なクオリティコントロールができるマネージャーは良いマネージャーです。

クライアントコミュニケーションにおいて上司は「切り札」

以上の期待値コントロールを適切に行うことができれば、クライアント相手に部下が疲弊する可能性はぐっと下がります。それでも時にはクライアント企業の担当者がヘンな人、つまりモンスタークライアントで、部下が疲弊しそうになることはありえます。

これは僕が会社員時代にある企業の担当者と仕事をしていた時の体験談なのですが、僕がその人に送ったメールの一文に何か気に障るポイントがあったらしく、突然「詰めメール」を10通ぐらい連続で送りつけられたことがあります。今となっては完全に笑い話なのですが、その時はさすがに焦りました。とりあえず謝ろうと電話をしても、相手はなぜか電話先には出てくれません。

このケースは、最終的には上司にコミュニケーションを変わってもらうことで解決することができました。モンスタークライアントとの間でコミュニケーション上の問題が発生した場合、基本的に本人がそのまま継続的にコミュニケーションを担当して解決することは不可能です。相手は感情的になっていますから、同じ人が相手だと何を言っても納得してはもらえません。そんな時は、上司の出番です。

部下と代わってモンスタークライアントに対峙する場合は、必要以上にへりくだってはいけません。相手も「上司が出てきたぞ」ということは認識しており、最初はその相手の格を見極めようとしています。ここで舐められないことが大切です。もちろん、自分たちに非があるなら謝るべきですが、上司が「とりあえず謝っておこう」という態度ではいけません。不当な要求には絶対にノーと言うべきです。僕の場合も、上司が出てきたことで相手が冷静になり、それで元のビジネスコミュニケーションに戻ることができました(相手が何を怒っていたのかは未だに謎ですが)。

このように、クライアントコミュニケーションにおいて上司は「切り札」として使用できます。良い「切り札」でいるためにも、日頃からクライアントとの関係を一歩引いて冷静に把握する目を持ちたいものです。

マネたまご マネたまをフォローすれば最新記事をお届けします!
日野 瑛太郎
ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)などがある。
運営会社 | Copyright © kaonavi, inc. All Rights Reserved.