2017/09/12 公開

プレイングマネージャーになることの落とし穴と気をつけるべきこと

「脱社畜ブログ」流マネジメントハック その12

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部下のマネジメントや教育を行いつつ、自らもプレイヤーとして前線に出て仕事をする人を「プレイングマネージャー」と呼ぶことがあります。このプレイングマネージャーという立場の是非については、しばしば論争の対象になります。

僕自身は、プレイングマネージャーという立場を完全に否定する考えではありません。たとえば、ベンチャー企業のような慢性的に人手不足の会社では、どう足掻いても自分がマネジメントに専念していてはリソースが不足するので、マネージャーになっても自ら手を動かさざるを得ないというケースがよく見られます。このようなケースでは、マネージャーがプレイングマネージャーになってしまうのもやむを得ないと言えるでしょう。

一方で、純粋にマネジメント業務に魅力が感じられず、プレイヤーの仕事に未練があるという理由でプレイングマネージャーになってしまう人もいます。これはあまり褒められたものではありません。そういう理由でプレイングマネージャーになる人は、そもそも心が大きくプレイヤーに傾いているので、結局はマネジメントが手薄になり現場が大きく混乱します。このような理由でプレイングマネージャーになるのはやめるべきです。

基本的に、マネージャーは専任できるならそれが理想なのは言うまでもありません。マネジメントの仕事は多岐に渡りますし、部下の仕事を観察したりチーム全体を俯瞰して見るためにはやはり心の余裕が必要です。もっとも、そうは言っても現実的な要請から、プレイングマネージャーにならざるを得ないという人も少なくないでしょう。今回は、そんな人のためにプレイングマネージャーをする際に気をつけなければいけないことについて考えてみたいと思います。

プレイングマネージャーの本業はあくまでマネージャー

まず前提として、プレイングマネージャーの本業はあくまでマネージャーであるという事実をしっかりと確認しておかなければなりません。マネージャーがプレイヤーの仕事もしているのであって、プレイヤーがマネージャーの仕事もしているというわけではないのです。

これらは一見同じことを言っているように聞こえるかもしれませんが、実際には大きく違います。プレイングマネージャーはマネジメントが主であり、プレイヤーは従です。プレイヤーとしての仕事のせいで、マネジメントが疎かになることは絶対にあってはいけません。

たとえば、プレイングマネージャーを称する人が、目の前の仕事が忙しくなって部下の仕事ぶりをチェックできなくなるのは本末転倒です。プレイヤーとしての仕事がたとえ100点でも、マネージャーとしての仕事が40点だったとしたら、そのプレイングマネージャーの評価は40点です。逆に、プレイヤーとしての仕事が40点でも、マネージャーとしては100点の仕事ができているなら、そのプレイングマネージャーはかなりよく仕事をしていると言ってよいと思います。

「自分がやったほうが早い」という考えは封印する

プレイングマネージャーがよくハマる落とし穴に、本来であれば部下に振るのが適当な仕事をほとんど自分でやってしまうというものがあります。

プレイングマネージャーになる人のほとんどは、プレイヤーとしてとても優秀な人です。それゆえ、いざ仕事を分解して誰かにやってもらう際に「これは自分でやったほうが早いな」という判断が働きやすいと言えます。

プレイングマネージャーの頭の中では既に仕事の筋道が見えており、完成イメージもあるので、これを他人に説明するよりもさっさと自分で手を動かしてやってしまったほうがチーム全体にとってもいいに違いない――このように考えて、複雑な仕事はほとんど自分で処理してしまい、簡単な仕事ばかり部下に振るという人は実際よく見ます。チームの外から見ると、チーム全体で仕事のアウトプットはしっかりされることになるのでうまく行っているように見えますが、このままでは他のチームメンバーの能力が育たないことになるので中長期的にはチームが大きく害されます。

このようなやり方は、自分のマネジメント能力不足をプレイヤーとしての優秀さで無理やり補っているとも言えます。繰り返しになりますが、プレイングマネージャーはあくまでマネージャーが主でプレイヤーが従です。主であるマネジメントをしっかり行うためにも、「自分がやったほうが早い」という考えは封印しなければなりません。

部下が参考にしたくなるような仕事を目指す

理想を言えば、プレイングマネージャーがするプレイヤーとしての仕事は、チームの他のメンバーの成長を促すようなものであって欲しいと思います。

これはまだ僕が会社でエンジニアをしていた頃の体験談ですが、ある日僕の所属していたチームに大規模なシステム改修のミッションが課せられました。必要工数は膨大で、今いるチームメンバーだけではどう頑張っても足りません。他所のチームからも人をかき集めたりしてみたもののそれでも十分ではなく、最終的には当時の僕の上司が期間限定でプレイングマネージャーとなり自らコード(プログラム)を書くことになりました。

その上司がプレイヤー時代に大変なやり手だったという話は何度か耳にしていましたが、実際に彼が書いたコードを見たのはその時が初めてです。実際にコミットされたコードを見て、僕は感嘆しました。非常に簡潔で読みやすく、それでいて正確で拡張性があり、まさに「お手本」とすべきコードと言えました。「ああ、僕が今まで書いていたコードは何だったのだろう、もっとしっかり勉強しなければ」と決意を新たにしたことを覚えています。この上司のコードに感化された人は僕だけではなかったようです。

このように、プレイングマネージャーは自らのプレイヤーとしての仕事を通じて部下を教育することもできます。これは、専業マネージャーにはないプレイングマネージャーだけの利点です。せっかくプレイングマネージャーをするなら、そのような周囲を惹きつける質の高い仕事をしていただきたいと思います。それができれば、部下はきっとあなたについてきます。

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日野 瑛太郎
ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)などがある。
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