2017/07/06 公開

部下への仕事の振り方は、チームの生産性を左右する。

「脱社畜ブログ」流マネジメントハック その10

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部下に仕事を振ること、つまり仕事のアサインメントは、マネージャーの重要な仕事のひとつです。よく考えずにいい加減なアサインをすると、チーム全体の生産効率が下がるだけでなく、個々のメンバーのモチベーションにも悪影響を及ぼします。そうならないためにも、部下に仕事をアサインする際には、様々な事情を考慮し部下が仕事をしやすいように配慮する必要があります。ところが、実際にはあまり深く考えずに、いい加減に仕事を振っているマネージャーも多くいます。

たとえば、プレイヤー時代に上司から仕事の「丸投げ」をされて困った経験があるという人は、結構いるのではないでしょうか。あるいは、同じチームの中で、いつも特定の人にばかり仕事が集中していて、見るからにその人が疲弊している……という現場に出くわしたことはないでしょうか。これらの問題はいずれも、マネージャーのアサインの手際がよくないことが原因で起こっています。

アサインの手際がよくないマネージャーの多くは、仕事のアサインメントを、上から降ってきた指示を適当に自分の部下に割り振るだけのこと、としか捉えられていません。残念ながら、これではよい仕事のアサインはできません。では、どのように捉えればよいのでしょうか? 今回は、このテーマについて少し考えてみたいと思います。

マネージャーは上層部と部下の伝言係ではない

仮に、マネージャーが上から降ってきた指示をそのまま自分の部下に割り振るだけだとしたら、そもそもマネージャーの役割は何なのでしょうか? ここで実際に行われているのはただの情報伝達に過ぎません。つまりこの場合、マネージャーは上層部と部下との伝言係の役割しか果たしていないことになります。それしか役割がないのであれば、極端な話、マネージャーなどいてもいなくても一緒です。

ひとつ具体例を挙げましょう。ある会社で、残業時間の削減に取り組むことになったとします。経営陣は、全社を挙げて残業時間の前年度比10%削減を目指すことに決めました。各マネージャーには、残業時間の前年度比10%削減を実現するように指示が飛びます。

では、経営陣からこの指示を受けたマネージャーは、チームに帰って部下にどんな指示をすべきでしょうか。一番よくないのは、経営陣のメッセージをそのまま部下に伝えて終わり、というものです。「今年は残業時間を10%削減することになったので、やり方を考えて取り組んでほしい。よろしく」と言うだけだとしたら、このマネージャーはただの伝言係の役目しか果たしていないことになります。これでは、仕事を振られた部下は何をすればいいかわからず、途方に暮れてしまうでしょう。

チームの実情に合わせてタスクに落とし込み、「意味付け」を行うのがマネージャーの仕事

本来、マネージャーがすべきなのは、上層部からの指示を自分のチームの実情に合わせて咀嚼し、具体的なタスクに落とし込むことです。

たとえば、「残業時間の10%削減」という指示を自分のチームの実情に照らして考えると、自分のチームには「非効率な会議が多い」という問題に気づくかもしれません。そうなれば、会議の進行方法の見直しや、参加者の絞り込み、あるいは不要な会議自体の廃止など、いくつか取りうる策が見えてきます。ここまでブレイクダウンした上で部下に仕事をアサインすれば(たとえば、会議の仕分けをするので無駄な会議をリストアップしてほしい、など)、部下が何をすればいいのかわからず途方に暮れることはなくなります。

また、仕事を部下にアサインする際には、その背景をしっかり説明するべきです。今回の例で言えば、単に「無駄な会議をリストアップしてほしい」と言うだけでなく、全社を挙げて残業時間削減の取り組みを行っており、自分のチームの場合は特に会議の時間がボトルネックになっているという仮設を自分は立てている、という背景までしっかりと伝えます。「なぜやるのか」をしっかりと説明すれば、部下は主体的に仕事と向き合えるようになります。このように、仕事の「意味付け」をしっかりと部下に説明するのもアサインメントの一部です。

短期的には非効率に見えるアサインも「投資」として必要な時がある

仕事をアサインする際には、具体的なタスクに落とした仕事を「誰に振るか」も重要な問題です。

仕事の緊急性が高く、チームの生産効率の短期的な最大化が求められる場合には、「適材適所」に振っていくのが基本戦略になるでしょう。できるだけチームメンバーそれぞれが熟練しており、得意であるものが行き渡るようにタスクを分配していくのが、短期的にはもっとも効率がよいはずです。

ただし、時にはあえて未経験者や新人などに少し難しい仕事を振ってみるなど、非効率的なアサインも必要です。これは言ってみればチームへの「投資」です。いつも自分が得意な仕事や慣れている仕事ばかりやっていては、人は育ちません。新しい仕事にチャレンジする機会を作ることで、メンバーの仕事の幅が広くなれば、中長期的にはチームの生産効率も高まります。このように、状況に応じて「投資」的なアサインをするのも、マネージャーの大切な役割です。

メンバーの成熟度に応じて「振る」から「任せる」にシフトすることも大切

また、チームメンバーが育ってきたら、少しずつ仕事の指示の粒度を大きくしていくことを検討するとよいと思います。仕事の背景は今まで通りしっかり共有するものの、やり方は一任するなど部下の仕事の裁量を増やしていくのです。仕事を「振る」から「任せる」にシフトしていく、と言い換えてもいいかもしれません。

基本的に、箸の上げ下ろしを細かく指示するようなマイクロマネジメントは部下のモチベーションを大きく損ないます。自分で考えることが少ない分、成長の幅も小さくなります。まだ仕事のやり方がよくわかっていない状態ならともかく、ある程度部下の中で仕事のスタイルが確立されてきたなと思えたなら、思い切って任せてみるとよいでしょう。ただし、完全な丸投げになってはいけません。部下の質問や相談にはつねに乗れる状態でいられるように、つねに仕事の進捗に気を配ることを忘れないようにしたいものです。

部下やチームの力を最大限に引き出すためには、よいアサインメントが不可欠です。アサインメントのスキルは一朝一夕で身につくようなものではありませんが、前向きに試行錯誤を繰り返していけば、少しずつチームの状況はよくなっていくはずです。ぜひチャレンジしてみてください。

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日野 瑛太郎
ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)などがある。
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