劔 樹人 家庭と仕事を両立させることは、もう欲張りなことじゃない【後編】

失敗ヒーロー!

2020/04/15
Pocket

華々しい成功の裏には、失敗や挫折がある。その失敗エピソードから成功の秘訣をヒモ解く『失敗ヒーロー!』。前編に引き続き、自伝的コミックエッセイ『あの頃。 男子かしまし物語』の映画化が発表された劔樹人さんが登場。漫画家としてのみならず、バンドマンとしても活動する劔さんですが、妻でありエッセイストの犬山紙子さんとの夫婦生活を綴った『今日も妻のくつ下は、片方ない。 妻のほうが稼ぐので僕が主夫になりました』にも描かれた通り、家庭を守る主夫でもあります。そこで後編では、主夫としての劔さんにフォーカス。家庭と仕事、さらにはけっして譲れない、音楽との両立の仕方を探ります!

家事も育児も大切な仕事という自負

――前編では「家族がいて、音楽を続けられている今が幸せ」というお話がありましたが、劔さんは主夫でもあります。主夫になることは奥さまである犬山紙子さんのご提案だったそうですが、提案された当時の想いをお聞かせください。

劔 樹人(つるぎ・みきと)
1979年、新潟県出身。大阪で過ごした大学時代にベーシストとして音楽活動を開始。上京後の2008年より叙情派轟音ダブバンド「あらかじめ決められた恋人たちへ」に参加、今も活動を続ける。2009年に「神聖かまってちゃん」のマネージャーとなり、バンドを題材とした映画で俳優デビュー。2011年より漫画家としても活動し、2014年にエッセイストの犬山紙子さんと結婚。著書に主夫としての毎日を描いた『今日も妻のくつ下は、片方ない。 妻のほうが稼ぐので僕が主夫になりました』があるほか、自身の大阪時代を描いた『あの頃。 男子かしまし物語』は映画化が決定。2021年の公開を控える。

劔 樹人(以下、劔):最初は戸惑いましたね。「私はお金周りのことが好き。反対にあなたはお金に興味がないし、面倒見がいい。家賃や生活費は私が出すから、家事をお願いしたい」と提案されたんです。そもそも僕には、ろくに家事の経験がなかったんですよ。結婚するまでは、いかにも男の一人暮らしという生活だったので。しかも当時はバンドのマネージャーとして、日本を駆け回っているような時期だったんです。それが僕には楽しくもあったから、「家庭に入ったら、この楽しさがなくなってしまう」という怖さもあって。

でも、妻の言うことには一理あったし、悩んでいてもしょうがない。「とりあえず、やってみよう」くらいの気持ちで家庭に入ったところ、結局、しっくり来ています(笑)。ただ、周りの目が気になる時期もありました。主夫というだけでヒモのような見方をされたり、家にいて、怠けているような見方をされたり。僕の性格上、どうしても気にしていましたが、慣れたんですかね。今はなぜか、全く気にならなくなっています。

――そうした主夫に対する偏見に苛まれ、葛藤を抱える男性や夫婦もいるはずです。劔さんが「気にならない」と思えるのは、なぜなのでしょうか?

劔:妻が「育児も家事も大切な仕事」と言い続けてくれたことが、大きいと思います。それに主夫の存在って、家族のためにはもちろん、これからの多様な社会にも大事なはずですよね。主夫という存在が当たり前にならなければ、世間の偏見はなくならない。しかも僕は、漫画を描いたり、こうして取材をしてもらえたり、少なからず発信できるポジションにいます。主夫である僕が偏見に負けてしまったら、世間への説得力がないじゃないですか。

家庭を守る大変さを知っているから労える

――主夫としての自負が、偏見をはねのけているのですね。そして劔さんは、主夫であると同時に発信者。漫画の執筆やバンド活動もあるなか、家庭と仕事をどのように両立しているのでしょう?

劔:これも妻のおかげです。家庭と仕事を両立するのって、めちゃくちゃ大変なんです。娘が生まれてからというもの、その大変さを痛感しています。保育園に通わせているものの、今、イヤイヤが酷すぎて、保育園に送り出すだけでクタクタなんですよ(笑)。クタクタの状態から1日が始まるので、仕事が手に付かないことも日常茶飯事。「娘を寝かせてから漫画を描こう、曲を覚えよう」と思っても、ついつい一緒に寝てしまったり。

それでも妻は、何も言わないんです。何も言わないどころか、労ってさえくれます。だからこそ、両立ができているというか。妻には本当に感謝しています。ただ、こういう夫婦関係が特別かというと、そんなことはないと思っていて。妻が僕のことを休ませてくれるのは、彼女が家事や育児の大変さを知っているからなんです。この知っているということが、何より大事な気がしますね。むしろ、それだけなのかもしれない。

――当たり前のようでいて、それが難しい人たちもいるなか、劔さんと犬山さんは理想のご夫婦ですね。

劔:ありがたいような、照れくさいような、そんな風に言ってもらえることが多くて。でも、努力している部分もあって、お互いの状況を知るために、きちんと話し合うようにしています。妻も僕もフリーランスなので、話し合う時間が取りやすいんですよ。そう思うと会社勤めの方のほうが、大変かもしれない。ただ、話し合いをしながら、お互いを褒め合うことは意識しています。妻が「褒め合うことは大事」と言うんですよ。

マネたまご マネたまをフォローすれば最新記事をお届けします!
運営会社 | Copyright © kaonavi, inc. All Rights Reserved.