チームの円滑な情報共有を実現するために必要なこと

チームで仕事をするために必要なこと 第7回

2019/08/01
Pocket

著者:日野瑛太郎
 

ひとりで仕事をする場合と、複数人で協同して仕事をする場合とで決定的に違うことのひとつが「情報共有」の必要性です。ひとりで仕事をするのであれば、必要な情報はすべて自分が把握しているので、情報共有が原因で困った事態に陥ることは基本的にはありません。一方で、複数人で仕事をしていると、よく情報共有が原因で問題が発生します。

よく起きるのが、情報が必要な人に「伝わっていない」という問題です。仕事で誰かと議論をしていてなぜか話が噛み合わず、よくよく事情を聞いてみると相手に知っていて欲しい前提となる情報がうまく伝わってなかったことが原因だった、という経験はないでしょうか? 時には、情報共有がうまくいっていないことが原因で仕事に手戻りが発生してしまうこともあります。このようなことは、組織の生産性を高めるためにも避けなければなりません。

効果的な情報共有の方法は、組織の大きさや目的によって異なります。必ずしも、すべての情報を組織のメンバー全員が参照できる状態が正しいというわけではありません。機密情報のような一部の人だけが知っておくべき情報を広く共有するのは望ましくありませんし、自分の業務にほとんど関係がない情報まで日々細かく共有されても煩雑さが増すだけです。

そこで今回は、まず多くても十数名程度の小規模なチーム内における理想的な情報共有方法について考察します。そのうえで、部署全体や会社全体といったような数百名程度の大規模組織における情報共有についても考えてみたいと思います。

口頭だけによる情報共有は危険

まずは、小規模なチームにおける情報共有についてです。このぐらいの規模なら「情報共有が密すぎて困る」ことはほとんどありません。たとえば、あるプロダクトを開発する小規模なチームがあったとして、そこで誰がどの機能の実装を担当していて、どんなコードを日々書いていて、いま何に頭を悩ませているのか、くらいのことはメンバー全員が知っていても害にはなりません。一方で、このぐらいの人数なのにもかかわらず、「あの人は何の仕事をやってるんだろう?」という疑問が続出するようだとすると、それは情報共有の量が足りていないおそれがあります。

情報共有にはいくつかの手段があります。もっとも古典的で昔からあるのは、口頭による情報共有です。朝会や夜会といった定例の会議を開いて、そこでメンバー全員に対して各自がいまやっている仕事のことや、困っていることなどを発表することにしているチームは少なくないと思います。これはこれでひとつのやり方です。

ただし、口頭による情報共有は、いくつか問題があります。第一の問題は、その場にいないと聞くことができないことです。朝会や夜会は全員参加が原則だとは思いますが、時には有給取得などの事情で欠席することもあるはずです。そういう場合には情報の欠落が生じてしまいます。

また、口頭の情報は振り返って見返すことができないため、記憶違いを招くおそれもあります。昔から、情報共有の場面に限らず「言った・言わない」というトラブルは頻繁に起こります。想像以上に、人間の記憶はあてになりません。

そこで、口頭で情報共有をする際には、必ずサブで文字としても情報を残しておく仕組みを入れることをおすすめします。メモ書き程度のものでいいので、朝会や夜会では簡単な議事録を作って終了後にチャットツールやメールなどで共有すれば、欠席した人もあとで参照できますし、言った・言わないといったトラブルも防げます。誰かひとりの人が議事録を担当し続けるのは負担が大きすぎるので、担当者は持ち回りにするか、発言の後に各自がチャットツールに投稿するなどの決まりにしておくと負担も減ってよいでしょう。

目的に応じてフロー型とストック型のツールを使い分ける

最近は、チャットツールを導入している職場も増えてきていると思います。チャットツールは基本的には情報共有の強い味方です。メールほど形式張らずに、カジュアルに意見を投稿できますし、口頭の発言と違って文字でログも残るのであとで見直すことも可能です。話しかけるのと違って相手を拘束することもないので、相手の集中を奪ってしまう心配もありません。導入していないチームがあるとしたら、ぜひとも導入を検討したいものです。

ただし、チャットツールにも弱点はあります。これらはあくまで「フロー型」の情報共有ツールなので、ここに投稿された情報は時間が経つにつれてどんどん流れていってしまいます。もちろん、少しであれば遡って見ることもできますが、あまりに遡る量が多くなってしまうと情報を探すのが大変になります。

これらの弱点を補完できるのが「ストック型」のドキュメンテーションツールです。業務の作業手順や、経費申請のルールといった「折に触れて、何度も参照したい情報」はこの手のストック型のツールにまとめます。どのドキュメンテーションツールを導入すべきかは、ぜひチームごとに予算や使い勝手などを比較した上で決めていただきたいと思いますが、少なくともこの手のツールを今時ひとつも使わないというのはありえません。こちらもチャットツールと同様、ぜひ導入を検討してみてください。

ドキュメントは「あとで」ではなく「業務をしながら」作ってしまう

ストック型のドキュメンテーションツールを使う場合には、いくつか注意点があります。

まず、みんながよく知りたくなるような情報のドキュメント化は面倒臭がらずに優先して行うことです。ドキュメントを書くのはそのための余分な時間を確保しなければならないので大変ですが、ドキュメント化していないと、違う人から何度も同じ質問をされて結果的にドキュメントを書く以上の時間を奪われることになります。

小まめにドキュメント化をするコツは、ドキュメントを「あとで」書くのではなく、実際に「業務をしながら」作ってしまうことです。たとえば、手順書を書くなら、実際に手順Aをやり終わったらその手順をドキュメントに書き、その後で手順Bに進んで、それも終わったらまたその手順をドキュメントに追加する、という形で作業を進めていきます。このような小刻みにメモを取るようにドキュメント化を進めていけば、作業が終わると同時にドキュメントが完成することになりドキュメントがない状態を防げます。

ドキュメント化する場合は「情報が古くなる」ことに注意

また、もうひとつ気をつけておきたいのは、ドキュメントに書かれた情報がいつまでも最新のものであるとは限らないということです。業務フローなどが変更になった場合、あわせてドキュメントの内容も更新するようにしないと業務の混乱を招きます。ドキュメントは定期的にメンテナンスをしなければなりません。

もし、メンテナンスをする余裕がどうしてもない場合は、最低でもドキュメントに「この情報は古い情報です」とだけ追記することだけはしたいものです。そうすれば、少なくとも誰かが古い情報を信じて業務を行ってしまうことだけは避けられます。

大規模組織では“Who Knows What”を知ることが大事

以上は、小規模なチームにおける情報共有の方法です。これが仕事上の情報共有の基本となることは間違いないのですが、さらに組織が大きくなって、たとえば数百人規模の組織になってくるとこの方法でもすべての情報を把握することはできなくなります。

基本的に、ある程度の規模以上の組織では、すべての情報を構成員全員が密に把握することは現実的ではありません。不可能な上に、それをやろうとするのは非効率でもあります。むしろ、大規模な組織で必要になるのは、細かい情報を把握することではなく、誰が何を知っているのか――“Who Knows What”を把握することです。

このように、組織の構成員全員が同じ情報を把握するのではなく、誰が何を知っているのかを重視する概念を、トランザクティブ・メモリーと言います。これはアメリカの社会心理学者であるダニエル・ウェグナーが提唱した概念で、大規模な組織のパフォーマンスを上げる一つの鍵になると考えられています。

“Who Knows What”を把握するには、日頃からチームの垣根を超えてコミュニケーションをすることが有効です。シャッフルランチのようなチーム間交流の仕組みは、トランザクティブ・メモリーの強化に有効かもしれません。仕事上の困難に直面した時に、「これだったら、あのチームの◯◯さんが詳しいらしいよ」と言えるようになれば、組織はより強くなっていくでしょう。

ぜひ、自分の組織の規模にフィットした巧い情報共有の方法を探してみてください。


photo by kerry morrison

マネたまご マネたまをフォローすれば最新記事をお届けします!