強いチームをつくるためには、メンバーを「叱る」ことから逃げてはいけない

チームで仕事をするために必要なこと 第6回

2019/07/02
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著者:日野瑛太郎
 

チームで仕事をしていると、時にはメンバーに対して厳しいことを言わなければならない状況に遭遇することもあります。特に、新入社員のメンターや、マネージャーという立場で働く人は、相手が間違っている行動を取った時にはそれを軌道修正してあげることも仕事のひとつです。つまり、時には相手を「叱る」こともできなければならないというわけです。

この「叱る」という行為は、現代では特にやりにくくなったと言われています。厳しいことを言いすぎてパワハラだと言われてしまったらどうしようとか、叱ったせいで相手のモチベーションを必要以上に下げてしまったらどうしようとか、そういう心配をしてなかなか相手を叱ることができないという人は少なくありません。メンバーの相談に乗ったり、ポジティブなフィードバックを返したりすることは難なくできるという人が、いざメンバーを叱らなければならないという場面では二の足を踏んでしまっている光景もよく見かけます。

ネガティブなフィードバックを与えなければならない時にそのままにしておくと、相手は自分の行為に問題があったことに気がつきません。気がつかない以上、同じ問題は時間を置いてまた繰り返されます。そうやって誰かがチーム内で問題行動を繰り返していると、他のメンバーが迷惑を被ったり、あるいはその問題行動自体を真似する人がでてきたりして、チームの雰囲気や生産性が蝕まれていきます。人を叱ることから逃げてばかりいると、チームは徐々に弱くなっていきます。

思うに、真に優秀なマネージャーやメンターは、相手を叱ることも上手いものです。そこで今回は、チームメンバーのよくない振る舞いに対して効果的に注意を与える方法、つまり、効果的な叱り方について考えてみたいと思います。

頭ごなしに怒ってはいけない

昔からよく言われていることなので聞いたことがある人も多いと思うのですが、「怒る」ことと「叱る」ことは違います。「怒る」という行為は、相手の不適当な行動に対するネガティブな感情をそのまま相手にぶつけることを指すのに対して、「叱る」という行為は、相手の不適当な行動に対して相手のために注意を与えることを指します。つまり、「怒る」のは自分のためにすることですが、「叱る」のは相手のためにすることです。

チームで仕事をする場面では、「怒る」ことはほとんどの場合不適当で、すべきことは「叱る」ことです。特に、条件反射的にカッとなって立場の弱い者に一方的に感情をぶつけると、それは典型的なパワハラになってしまいます。仮に、部下や後輩に対しての怒りに我を忘れてしまい、とにかくガツンと言ってやらないと気が済まないという気持ちによくおそわれるというのであれば、叱り方を学ぶ前にまずは自分の感情をうまく統御する方法を学ばなければなりません。このテーマは専門的になるためこの記事では詳述することを避けますが、心当たりのある人は「アンガーマネジメント」などのキーワードで調べてみていただければと思います。

注意する時は人前ではなく一対一で

自分の怒りの感情を解消してスッキリするためではなく、相手や他のチームメンバーのために誰かを叱ることを決意したとして、大切なのはその伝え方です。人にネガティブなことを伝える際には、ただ理路整然と情報を伝達すればいいわけではありません。誰かを叱る際のゴールは、あくまでその人に今後の行動を改めてもらうことです。どんなにフィードバックの内容が正論でも、相手がそれを聞くことで意固地になってしまったり、落ち込み過ぎてしまったりしては、相手が今後行動を改めてくれることは期待できません。

どのように伝えれば効果的かは相手のタイプによって異なる点もありますが、すべての人に共通するのは、原則として人前で注意してはいけないということです。ミーティングの場や執務室内など、他の人にも誰かが叱られているのがわかってしまう場所でこれ見よがしに指導を行っている光景に出くわすことがありますが、これは相手の名誉に配慮していないという点でよくない叱り方です。

繰り返しになりますが、叱ることの目的はあくまでその人に今後の行動を改めてもらうことです。この目的を達するために、叱っている場面を他の人に見せたり聞かせたりする必要はありません。人前で叱られるのは、誰だって恥ずかしいものです。後輩や部下を叱る必要が生じた時は、会議室などの誰も見ていないところで、一対一で叱るように心がけましょう。

相手に問題があると決めつけない

また、叱る時の姿勢として、最初から自分が正しいと決めつけて叱ってはいけません。実際、相手の言い分を聞いてみると「なるほど、そういう考え方もあるな」と気付かされたり、相手側の事情が見えてきたりすることもよくあります。

たとえば、後輩がメモを取らないことを注意したい、というケースを考えてみましょう。ここで「メモを取らなければダメだろう。だからいつも同じミスを繰り返すんだ」と頭ごなしに強く自分の意見だけを言うのはあまり良い叱り方ではありません。それよりも「いつもメモを取っていないようですが、大丈夫ですか? 忘れてしまいませんか?」とあくまで相手を心配する形式をとりつつ、それとなく注意を与えるほうがよいでしょう。また、このように疑問文で聞けば、相手も反論が必要な時には反論がしやすくなります。

このように相手に反論の余地を残した形で注意をすれば、「実は◯◯さんは話すのが早いので、メモを取っている時間がありませんでした」という反論をもらって、自分の問題に気づくことにつながるかもしれません。実際、何か問題が発生した時に相手だけに100%問題があるということは稀で、多かれ少なかれこちら側にも問題はあります。その可能性に気づくためにも、相手が100%悪いと最初から決めつけて注意をしないように日頃から気をつけたいものです。

注意は上からではなく相手と同じ目線で与える

人を叱る時にもうひとつ気をつけなければならないのは、相手に上から目線だと思われないようにすることです。ほとんどの場合、誰かに注意を与えるのは先輩だったりマネージャーだったり、いわゆる「上」の立場の人が多いと思います。それゆえ、特に気をつけずに注意を与えようとすると、無条件で「上から目線」に見えてしまいます。もちろん必要以上にへりくだる必要はないのですが、言い方には気をつけなければなりません。

上から目線だと思われないためのひとつのテクニックとして、注意を与える前に、自分もよく同じようなミスをする(あるいは、昔はよくしていた)と告白してから注意をするというものがあります。このように自分も完璧でないことを示しつつ「お互いに気をつけよう」とつなげることは、相手と同じ目線で注意を与える方法としては有効です。実際、立場的には上であったとしても、人間同士として対等なのは事実なのですから、誰かを叱る時に偉ぶらないようにするのは忘れてはならない配慮です。

以上は叱る際の原則論のようなもので、実際に誰かを上手に叱ることができるようになるためには、様々な経験を積むことが不可欠です。時にはうまく叱れずに相手に反発されてしまったり、言いたかったことが相手に伝わらずに歯がゆい気持ちになったりすることもあると思いますが、叱ることから逃げずに経験を積んでいけば必ず叱るスキルは上達します。相手をひとりの人間として尊重するという原則に気をつけながら、ぜひいろいろと試してみてください。

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