セクハラと恋愛の境界って?社内恋愛にはルールが必要

チームで仕事をするために必要なこと 第17回

2020/07/01
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著者:日野瑛太郎
 

人が集まってチームとして仕事をしていれば、時には「職場の同僚」という枠を超えた人間関係が生じることもあります。それが単に「プライベートでも一緒に遊びに行く仲間」といったようなものであれば、特段大きな問題にはなりえないのですが、場合によってはトラブルに発展しかねないのが、チームメンバー同士の恋愛関係です。

本来であれば、恋愛関係は仕事とは別のプライベートに属するものですから、そのような個人的な関係にまで会社やマネージャーがとやかく言うべきではない、とも考えられます。この原則に従って考えるなら、仕事に支障をきたさないのであれば別に自由にやってもらって構わないというのが答えになりそうです。

ところが、現実にはそれですべて解決というわけにもいきません。外形上は本人同士の自由な恋愛関係に見えても、実はそれがセクハラだったという事態もありうるからです。チームメンバーがセクハラに巻き込まれているというのであれば、会社やマネージャーはそれを見て見ぬ振りをするわけにはいきません。厳正に対処する必要があります。

そして、この「本人同士の自由な恋愛」と「セクハラ」の境界は極めて曖昧です。人によって解釈の分かれるグレーゾーンは必ず存在します。それゆえ、リーダーやマネージャーが「恋愛だったらいいけど、セクハラは禁止」という原則を示しただけでは、メンバーに対して何の責任も果たせていないことになります。

そこで今回は、チーム内での恋愛やセクハラに、どう対処するのがよいのかについて考えてみたいと思います。最初に断っておきますが、僕の知る限り、この問題に完璧な回答を与えた人やチームは見たことがありません。現実にどうしていくべきかは、チームの実情や実際に働くメンバーたちの意見などを参考につねに調整していくものだと思います。そのための、参考のひとつにしていただければ幸いです。

職場の人間関係は「勘違い」を生みやすい

会社のチーム内で恋愛とセクハラの境界線が曖昧になるのは、チーム内の人間関係に「仕事上の上下関係」が生まれうるからです。また、仕事が生活の糧を得るためにするものである以上、「嫌なら辞める」「そっと距離を取る」といった対処がしづらいという点も理由として挙げられます。

このような、ある意味「制限つき」の人間関係が結ばれる職場では、多数の「勘違い」も生じることになります。パターンとして一番多い「勘違い」は、上司と部下の間の関係、あるいは先輩と後輩の間の関係でしょう。上司が部下から「好意を抱かれている」と一方的に勘違いし、部下を熱心に何度も二人きりでの食事に誘っているが、実は部下は迷惑していて、でも仕事上の上下関係があるから断れない……というトラブルは、もはや職場のセクハラ事案の典型です。はっきり断られないから上司はますます勘違いし、そのせいで結局部下は会社を辞めてしまった、という悲惨な話まで僕は過去に聞いたことがあります。

難しいのは、仮にこれが上司と部下の関係であったとしても、本当に当人同士が「お互いに好意を抱きあっている」のであれば、会社がそれを禁止するというのも、やはりおかしいといえばおかしいということです。人が誰かに対してどんな気持を抱いているのか外形から完全に判断できない以上、厳密に社内恋愛とセクハラを分けようとしても、このようなグレーゾーンは必ず生じます。

「社内恋愛は一切禁止」にすべきなのか

グレーゾーンが生じる際にどうするべきか、対処法として考えられるひとつの方法は、安全側に倒すこと、つまり「セクハラに発展しかねないものはすべてNGにする」という方法です。

ポリシーとして一番わかりやすいのは、社内恋愛を一切禁止にすることでしょう。こうすれば、少なくともチーム内で一方だけが好かれていると勘違いして、セクハラが延々と続くという事態は避けられます。職場はあくまで仕事をする場所と決めてしまい、恋愛をしたいならプライベートの人間関係の範囲内でというルールにすれば、少なくとも社内のセクハラに対処するのは簡単になるでしょう。

ただ、このレベルまで禁止するのには抵抗のある人も多いのではないでしょうか。僕自身も、これはちょっと人権侵害なのではないかという気がします。現実に、職場で知り合った人と結婚して幸せな家庭を築いているという人もたくさんいますから、そういう芽を会社がすべて摘み取るのはやりすぎなのではないかと思われます。

そこでもう少しルールを緩和して、たとえば上司や部下、先輩や後輩など、実際に仕事上の上下が生じうる関係における恋愛を禁止するという対処法を取っている会社は、結構あるようです。特に外資系の会社などでは、たとえば上司と部下が二人きりで食事をすることを禁止する、といったルールを設けてセクハラを未然に防ぐ方法を取っているところもあります。

それでも人間同士の交際関係に制限をかけているという点で、これも厳密には人のプライベートでの行動を制限しているわけですが、この程度の制限は仕方がないのではないかという気もします。

Facebook社の明快な社内恋愛ルール

この方法とは少し違う方法で、チーム内でのセクハラに対処する方法をルール化している会社もあります。僕が知っている例で「なるほど、そういうやり方もあるのか」と感心したのは、米国Facebook社における社内恋愛ルールです。

Facebook社では、社内恋愛を禁止にはしていません。ただし、職場の同僚をデートに誘ってよい回数を厳密に「1回だけ」と決めています。その1回で断られたら、もうそれ以降は誘ってはいけない、誘えばセクハラになるというある意味では明快な基準を設けています。

雑誌記事の取材に答えたFacebookの担当者によると、どういう断り方をされた場合に拒絶されたとみなすべきか、といった基準まで明確化されているそうです。「その日は忙しいので無理です」といった婉曲なお断りも拒絶であり(たしかに、仮に本当に忙しかったとしても乗り気だったら代替日の提案があるはずです)、それでも重ねて誘うようであればそれはアウトとみなされます。

このFacebook式のルールをどの会社も完全に踏襲すべきだとは思いませんが、一つ参考にしてもよいと思うのは、このような形で明確なポリシーを会社が定めて広く発表していることです。日本の組織は、良くも悪くもグレーなところを曖昧なままにして、それぞれのケースに対して実情に応じた対処をするという方針になりがちです。そういうやり方だと、チームメンバーは何がどうなるとアウトなのかがよくわからず、過剰に行動を抑制してしまったり、あるいは逆に踏み込みすぎてしまったりする危険があります。これでは伸び伸びと働くことはできません。

環境が許すならば、セクハラや社内恋愛に対してどのようなルールを設けるべきか、組織内できちんと話し合って合意ができるとよいと思います。そして、そのルールは誰もがつねに参照できるようにしておき、メンバーの入れ替えが頻繁に生じるなら、定期的にまた話し合う機会があるとよいでしょう。また、ルール化の際は弁護士などの外部の専門家の意見も取り入れられるとなおよいはずです。

どういうルールがよいのかを明確に示すことは難しいですが、ひとつ言えることは、ルールが何も決まっていない状態はよくないということです。他の組織の例なども参考にしつつ、会社やチームの実情にあわせたルールを作ってみていただければと思います。

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