ゆとりが創造的な仕事をつくる—まずはマネージャーを忙しさから解放しよう

チームで仕事をするために必要なこと 第14回

2020/03/03
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著者:日野瑛太郎
 

いつも忙しそうにしているマネージャーは多いものです。僕も会社員時代に何人かのマネージャーの下で働きましたが、いずれの人も毎日とても忙しそうにしていました。人柄や価値観はマネージャーによって様々でしたが、忙しいことだけはどの人も変わりありません。これは日本中の(もしかしたら世界中の)会社のマネージャーに共通する話なのではないでしょうか。

しかし、よく考えてみるとこれはあまりよいことだとは思えません。部下の立場から見れば忙しいマネージャーはそれだけ「相談しにくい」ものに見えますし、いつも会議で離席ばかりしているとなれば、部下たちの普段の仕事ぶりをマネージャーが把握することは難しくなります。本来であれば、マネージャーは余裕のあるスケジュールの下で、ある程度引いた目線から部下のことやチーム全体のことを考えているのが理想的だと言えます。ところが、実際にそういう状態で仕事ができているマネージャーはほとんど見たことがありません。

そこで今回は、マネージャーが忙しすぎることがチームにどんな悪影響をもたらすのかについて考えてみたいと思います。また、その前提として、そもそもチームにとって「忙しい」という状態はどういうことなのか、なぜチームは容易に忙しい状態に陥ってしまうのかについても併せて考察します。

チームにとって「忙しい」ことは良いことではない

最近は「効率化」や「生産性の向上」といった言葉をよく耳にします。たしかに、多くの日本企業にはシステムで自動化すれば一発で終わるような非効率的な業務や、何時間もダラダラと続く無意味な会議などの非生産的な業務がいくつも残っており、これらに対処することは重要です。

しかし、だからと言ってチームメンバー全員がスケジュールのすべてを仕事で隙間なくびっしりと埋めて、つねに一切の無駄なく朝から晩まで働くことがよいというわけではありません。数字だけ見るならその状態がもっとも生産性が高い状態だと言えそうですが、このようにチーム全員が「忙しい」状態になってしまうと、チームから大事なものが失われます

それは「ゆとり」です。「ゆとり」という言葉は「ゆとり教育」や「ゆとり世代」といった形で、どちらかというとネガティブな文脈で取り上げられることが多いこともあり、良いイメージを持っていない人も少なくないかもしれませんが、チームで仕事をする場合、特にチームで創造的な仕事をする場合に「ゆとり」はかなり重要なファクターになってきます

なぜ「ゆとり」が大事なのでしょうか。それは、ゆとりがないと人は創造的な仕事に時間を割くことができなくなるからです。ここでいう創造的な仕事というのは、絵を描くとか音楽を作るといった狭い意味での創造的な仕事に限りません。たとえば、いつもやっている面倒な手作業をなんとかして自動化できないか試してみるとか、最近チームの雰囲気がよくないけど原因はどこにあるのか考えてみるとか、そういった定型的でない発想を必要とする仕事を広く含みます。

このような創造的な仕事は、メンバー全員のスケジュールが朝から晩までびっしりと詰まっている状態、つまりチームが「忙しい」状態では決して着手されることはありません。この手の創造的な仕事は緊急性に乏しいため、ゆとりがないとそもそもやろうという発想に至らないからです。しかし、そうやって緊急ではないが重要な仕事を放置し続けていると、いつかもっと大きな課題になって跳ね返ってきます(利益率が落ちる、社員の離職率が高くなる、など)。

「忙しい=仕事を一生懸命」という誤った価値観

以上のことから、チームがつねに「忙しい」という状態は、決して褒められたものではないということがわかります。ところが、現実には「忙しい」チームのほうが圧倒的に多く、ある程度の「ゆとり」の下で、創造的な仕事に打ち込めているチームはかなり少ないものです。

このようにチームが忙しくなってしまう理由はいくつか考えられますが、その中でも特に大きな理由として、日本には「忙しい」状態を肯定的に評価しようという価値観があることが挙げられます。

「忙しいことは良いことだ」という言い回しが広く使われていることからもわかるように、忙しい人を「大変ですね」と労うことはあっても、「ダメじゃないですか」と叱責することは日本だとまずありません。これは長時間労働をしている人を頑張っている人だと認定することと、非常によく似ています。長時間労働については、最近になってようやく価値観に変化が見られ始めましたが、「忙しい」ということを肯定的に評価する風潮はまだまだ支配的です。

先に述べたように、忙しいという状態はそれだけ創造的なことに時間を割く余地を奪うことになるので、基本的には「よくないこと」と評価するべきです。マネージャーは部下が忙しそうにしていたら「よくやってる」と評価するのではなく、「なんとかしてゆとりのある状態に持っていかなければ」と危機感を抱かなければなりません

マネージャーが忙しいとチーム全体も忙しくなる

ところが、実際にはマネージャー自身も忙しいのがデフォルトであるということもあって、マネージャーの多くは部下の忙しさに対しては無頓着です。そもそも、自分が忙しすぎて部下がどのぐらい忙しいのか把握できていないマネージャーも数多くいます。

基本的に、チームメンバーの忙しさを効果的に解消することができるのは、人員アサインやタスク割り振りなどの権限を持ったマネージャーだけです。忙しい渦中にいるメンバー本人にやれることはほとんどありません。部下の側から「助けて欲しい」とマネージャーにアラートが上げられればよいのですが、マネージャー自身が忙しくてつかまらないとなると、そのようなアラートもマネージャーには到達しなくなります。

また、マネージャーの行動はチームの模範になるという側面もあるので、マネージャーが忙しくしていれば、それはチーム全体に「あるべき姿」として伝播します。つまり、マネージャーが忙しいチームは、チーム全体も忙しくなるということです。おまけに、「忙しい」状態はある種の充実感まで人に感じさせることがあるので「そもそもチームに問題がある」という認識に至らないという致命的な事態にまで陥ることがあります。

マネージャーは「ちょっと暇」なぐらいが理想の状態

以上を踏まえて、理想的なマネージャーの姿を考えるなら、マネージャー自身が「ちょっと暇」なぐらいの状態であることが大事だと言えます。日々のタスクに追われるのではなく、チーム全体を少し引いた状態から考える時間的なゆとりがあり、部下からも「いつも席で穏やかな顔をしているので、声をかけやすい」と思われるようなマネージャーこそが、実は良いマネージャーなのではないでしょうか。

こういうことを言うと、現にマネージャーをやっている方から「そんなこと言ったって、スケジューラーに次から次へと予定を入れられて忙しくなってしまうんだから自分ではどうしようもない」と反論が来るかもしれません。たしかに、マネージャーは会議への参加を要請される率が通常の社員よりも高いものです。言われるがまま会議に参加していると、肝心なマネジメントの仕事がほとんどできないという状態に容易に陥るのは事実です。

これに対する防衛策としては、スケジューラーに先回りして「ゆとり」の時間を入れてしまうという方法があります。タイトルは「ブロック」でも「予定あり」でも、あるいは架空の会議の名前でも、この時間に他の予定を重ねないようにしてもらえるならなんでも構いません。つまり、「ゆとり」の時間をスケジュール化して無理矢理作り出すわけです。

そんなことをすれば仕事に支障が出そうなものですが、実は意外となんとかなります。予定は空いているから入れられるという側面があるので、空いていないなら空いていないなりに、仕事はまわるものです。

マネージャーが忙しいことは、本人だけでなくチーム全体への悪影響が出るため、率先して解消していかなければなりません。そうやって生まれたゆとりの時間を使って、今度はチームメンバーの忙しさに目を配り、必要とあればそれを解消するための手を打つようにします。これこそがマネージャーの大切な仕事であり、これより優先すべき会議など本来であれば存在しないはずです。

現実には、すぐに「ゆとり」の時間を得ることが難しい場合も多いとは思いますが、ぜひ諦めずに挑戦してみてください。


photo by barbara w

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