リーダーの無自覚なハラスメントがチームを根本から腐らせる

チームで仕事をするために必要なこと 第13回

2020/02/04
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著者:日野瑛太郎
 

世間では、優秀なリーダーは人格的にも素晴らしい人物だと考えられることが多いようです。ネットやビジネス雑誌などで成功者のインタビュー記事を読むと、そこに書かれている内容が仕事のことだけであっても、なぜかその人の人格までもが立派に見えてきます。これはきっと「これだけすごいことを成し遂げた人なのだから、人間的にも立派なのだろう」という推定が働くからでしょう。

ところが、この推定は錯覚である場合が少なくありません。もちろん、優秀なリーダーであり、さらに人格者でもあるという人は存在します。しかし、それとは真逆で、リーダーとしては優秀だが人間としては問題があると考えざるを得ない人も数多くいるのが現実です。

たとえば、「イノベーションを起こすことができるリーダー」としてよく名前が挙がるスティーブ・ジョブズ。彼はアップルコンピュータを創業し、世界の人々の生活を変えるプロダクトを世に多く生み出したという点で間違いなく「優秀なリーダー」ですが、彼についての人格を疑わざるを得ないようなエピソードは数多くあります。共同創業者のウォズニアックに仕事の報酬をほとんど渡さなかったとか、社員に「週90時間働け」という文字がプリントされたTシャツを着させていたとか、壮絶なエピソードには事欠きません(これ以上は書きませんが、興味のある人は検索などしてみてください)。

最近だと、WeWorkの創業者アダム・ニューマンがCEOにふさわしくない様々な奇行により解任されたことを覚えている方もいるかもしれません。在任中のアダムは「ビジョンを語って人を引きつける」能力に長けており、そういう意味では優秀なリーダーに必要な素質を身に着けていたはずですが、残念ながら人格的には問題があったということです。

このような例から考えると、基本的にその人にリーダーの素質があるかということと、その人が人格者であるかということには、関係はないと言えるでしょう。ところが、世間的にはリーダーという立場によって人格的にも立派な人だと思われることが多いためか、リーダー自身が自分のハラスメント気質にまったく気づいていないということはよくあります。

そこで今回は、このようなリーダーによる無自覚なハラスメントが、チームにどのような影響を与えるのかについて考えてみたいと思います。

リーダーのハラスメントには誰も注意ができない

チーム内でハラスメントが起きるというのは大きな問題ですが、仮に加害者がリーダー以外の人物なのであれば、リーダーが適切に注意をするなどの方法によってまだリカバリーの余地があります。ところが、リーダー自身が加害者になっている場合、注意できる人がいないためハラスメントはそのまま放置されることになります。

特に困ってしまうのは、リーダーが「仕事はできる」人物だった時です。仕事ができることがある種の免罪符となり、リーダーのハラスメント気質が「まあ、しょうがないよね」という形でチーム内に暗黙のうちに受け入れられてしまっている例は割とよく見かけます。こうなってしまうと、リーダーが自分のハラスメント気質を自覚して直そうとしない限り、ハラスメントは絶対にチームからなくなりません。

リーダーがやっていることは、チーム内では「セーフ」だと認識される

さらに問題なのは、そのようなチーム内で黙認されるようになったハラスメントを、リーダー以外の人もするようになることです。リーダーがやっても許されているのだから、メンバーである自分がやっても問題ないだろうと他の人が考えてしまうのはある意味では当然です。つまり、リーダーが行っているハラスメントは、そのチーム内ではハラスメントではない「セーフ」な行為なのだと認識されてしまうことになります。

たとえば、僕は以前、メンバー全員が平気で差別的な言葉を使い合っているチームを目撃したことがあります。なぜそんなことになってしまったのだろうかと考えてみたところ、そのチームのリーダー自身が普段からそのような発言ばかりしているということに気がつきました。リーダー以外のメンバーがそのような発言をしていればすぐに注意されますが、このチームではリーダー自らがそのような振る舞いをしていたため、気づけばそれが「セーフ」だという規範ができてしまったのです。

チーム内にいる人たちはもうすっかり慣れてしまっていたため、特に問題だとは感じていないようでしたが、文脈を共有していない外部の人が彼らの振る舞いを見ると決まって驚きます。このような、悪い意味での「慣れ」を引き起こすという意味でも、リーダーのハラスメント的な振る舞いには気をつける必要があります。

気づけばメンバーがハラスメント気質な人間ばかりになる

チーム全体にハラスメントを「セーフ」とする空気が蔓延すると、ハラスメントに耐えられないメンバーはもはやチームを去る以外に何もできなくなります。通常であればリーダーに訴えることで改善を促すという道が残されているはずですが、この場合はリーダー自らが率先してハラスメントを主導しているので、もはやチームが変わる可能性はほとんどありません。その結果、まともな人は何も言わずにそっとチームからいなくなります

まともな人が去っていく一方で、ハラスメント気質な人は誰からも注意を受けないことから、チームに長く居座ります。この調子で人の入れ替えが続いていくと、最終的にはチームメンバーがハラスメント気質な人間ばかりになってしまうという結末が待っています。

傍から見ればそのようなチームは地獄以外の何物でもないのですが、中にいる人たちはそのことにはまったく気がつきません。チームは世間の常識からどんどん乖離していきますが、最近は「非常識」に「破壊的イノベーション」的なニュアンスが含まれているせいか、それをむしろ誇らしく思うチームすら増えています。特にビジネス的にはうまくいっているようなチームだと、組織内のハラスメント的な空気が省みられることはまずありません。

チームのハラスメント気質がチームを根本から腐らせる

しかし、どんなにビジネスとしてはうまくいっていても、チーム内のハラスメント的な空気が周囲からもずっと許容され続けると考えるのは間違いです。いずれどこかで必ずそれが原因の問題が発生し、チームや組織は大きな制裁を受けることになります。

具体的な事件には言及しませんが、成長中の企業が不祥事を起こしたり、倫理的に問題のある手法でビジネスを行っていることが発覚し糾弾されたりすることがたびたび起こるのは、このような組織内に巣食う「ハラスメント気質」が少しずつ組織を蝕んでいった結果だとも考えられます。チームに内在したハラスメント気質は慢性の病のようなもので、じわじわと少しずつ組織全体を蝕んでいき、気づいた時には手遅れになっているのです。リーダーはその危険について、つねに自覚的である必要があります。

もちろん、リーダーが完全無欠の人格者でなければならないというわけではありません。苦手なことがいくつかあったり、他の人とは違う感性の持ち主であったりするということであれば、何の問題もないと言えます。

ただ、自分の行動や振る舞いで、誰かを不必要に傷つけていないかについてだけは、つねに自覚的であってほしいと思います。特に、仕事がうまくいっていて、リーダーとして価値が出せていると自分で認識している時こそ、注意が必要です。そういう時は、往々にして誰も注意をしてはくれません。自分で気づかなければ、もう直すことはできないのです。

みなさんがリーダーとしての地位に驕ることなく、チームメンバー全員にも良い影響を与えながら活躍されることを願っています。


photo by Lyncconf Games

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