チームを成長に導くアドバイスとは? 過剰なアドバイスは部下の成長機会を奪う

チームで仕事をするために必要なこと 第10回

2019/11/06
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著者:日野瑛太郎
 

一般論として、人に親切にすることはよいことです。何か新しいことに挑戦する時に経験者からアドバイスをもらえれば心強いですし、困っている時にも誰かに相談に乗ってもらえれば心の負担は軽くなります。

ところが、親切も過剰になると問題が生じます。特にアドバイスを求めているわけではない場面でアドバイスをもらっても鬱陶しいだけですし、自分でやろうと思っていたことまで全部相手にやってもらうなどすると、その親切心を重く感じてしまいます。日本には「お節介」という言葉や「小さな親切、大きなお世話」といった、他人に親切にする際のさじ加減の難しさを示す言葉が複数あることからもわかるように、親切は程度を間違えると逆に相手を苦しめたり、不快にさせたりすることにつながります

最近では恋愛や夫婦関係において「モラハラ」(身体的な暴力ではなく精神的な暴力により相手に苦痛を与えるDVの一形態)という言葉を耳にする機会も多くなってきましたが、こういったモラハラの加害者は「相手に対して過剰に親切である」という傾向があります。この親切は、言ってみれば支配欲の裏返しです。普段から相手に対して過剰に親切にしているからこそ、その見返りとして、相手に対して傍から見れば倫理的に許容できない振る舞いを平気でするようになるわけです。このように、暴走した親切心は人の心を強く傷つける可能性があります。

以上は恋愛の場での話ですが、過剰な親切心やアドバイスが問題になるのは、仕事の場でも基本的には同じです。適度なアドバイスはチーム内の仕事の効率を高め生産性の向上に寄与しますが、これが過剰になるといくつも問題が生じます。そこで今回は、仕事における過剰な親切やアドバイスの問題点を検討し、そうならないためには何に気をつけるべきかについて考察します。

過剰な親切やアドバイスはメンバーの成長機会を奪う

まず、チームメンバーに対して過剰に親切心を発揮したりアドバイスをしたりすることには、メンバーの成長機会を奪ってしまうという問題があります。成長機会の喪失は本人にとってマイナスなだけでなく、チーム全体にとってもマイナスです。

たとえば、様々な業務に通じているベテランのメンバーが、なんでもかんでも先回りして他の人がやるべき仕事をやってしまったとしたら、いつまでたってもその仕事ができるのはそのベテランメンバーだけになってしまいます。短期的にはそのほうが早く仕事が仕上がるかもしれませんが、中長期的に見るとチーム全体が被る損失は小さくないと言えるでしょう。

もっとも、これはさじ加減が難しい問題でもあります。チームメンバーの成長を促すためという理由で、先人の知恵を一切共有しないというのでは、逆にチームの生産性を下げることになります。他人の仕事をすべてやってあげるというのはやりすぎですが、前回やった時にハマった落とし穴などを事前に共有するようなことは、むしろ積極的にするべきでしょう。このような親切やアドバイスは決して過剰ではありません。

おすすめの方針は、「情報」は積極的に提供するものの、仕事の「実施」自体は原則として本人に任せるようにするというものです。繁忙期で明らかに本人のタスクが限界を超えているという場合を除けば、他の人の仕事を「やってあげる」というのは基本的には行き過ぎです。一方で、その仕事についてまとめたドキュメントを共有するといったことは、積極的にやっていくべきでしょう。

「好意を無下にできない」という気持ちが生産性を低下させる

上司や先輩など、アドバイスをしてくれた人が上の立場の人の場合、それを無下にすることはためらわれます。どんなに的外れのアドバイスであったとしても、一応は検討した姿勢を見せないと、その人を軽視しているように思われかねません。

たとえば、ある機能を実装しようとしているプログラマーが、先輩から「こういった設計で実装するといい」とアドバイスを受けたとします。ところがこのアドバイスはかなりトンチンカンな内容で、そのプログラマーは即座にもっとよい他の設計を思いつきました。このような場合、先輩のアドバイスしてくれた設計を無視して、自分の考えた設計で仕事を進められるかと言うと、実際には人間関係を壊すのが嫌でどうするべきか悩んでしまうというケースが少なくないと思います。

この例のように、アドバイスをした人とされた人との間に何らかの上下関係があると、アドバイス内容の良し悪しにかかわらず、それを受け入れざるをえなくなることがあります。アドバイスという柔らかな形を取ってはいるものの、これは実質的には命令に近いもので、マイクロマネジメントの一種と感じる人もいることでしょう。

このようなことが常態化すればチームの生産性は低下しますし、それだけでなく、アドバイスを受けた人の仕事に対するモチベーションを下げることにもつながります。アドバイスをした本人は気づいていない(むしろ、いいことをしたと思っている)ことも多いのが、このケースの難しいところです。

「アドバイスを無視する自由」がアドバイスを受けた人には必要

前述のような「アドバイスを無下にできない」という気持ちを、アドバイスを受けた側が抱いてしまわないようにするためには、チーム内に「フラットな議論」ができる土壌がなければいけません。具体的には、変なアドバイスに対して「それは違うんじゃないですか?」「そうじゃなくて、こっちのほうがよくないですか?」と言っても差し支えないような関係、もっと言うと「アドバイスを無視する自由」をメンバー全員があたりまえのように持てることが必要です。

チーム内にそのようなフラットな議論ができる土壌を築くことは一朝一夕ではできませんが、すぐにできることとして、アドバイスをする際にクッションになる言葉を挟むという方法があります。アドバイスをする時、たとえば「もっと他にいい方法があったら教えてほしいんですが」や「あくまで参考程度に聞いてもらえばいいんですが」という言葉で「このアドバイスは無視してもらってもいい」ということを示すようにするのです。

これは地味ですが効果がある方法です。アドバイスをする際には、それはあくまで情報提供であって、やり方の指示ではないということは、いくら強調しすぎても強調しすぎることはありません。特に、アドバイスをする側とされる側の間に上下関係がある際には、このような言い方をすることが非常に重要になります。

アドバイスは原則として「頼られたら」する

いっそのこと「特に相手から求められていない限りは、アドバイスはしない」と割り切ってしまうのもひとつの考え方です。これは別に他のメンバーに冷たくしろと言っているわけではありません。アドバイスを求められたら、今まで通り、アドバイスをすればいいのです。ただ、聞かれない以上は、原則として相手にアドバイスすることを自分に禁じます。

このやり方を用いると、最初のうちはもどかしく感じるかもしれません。傍から他人の仕事ぶりを見ていて「自分ならもっといいやり方を知っているのに!」と思ってしまうこともあるでしょう。でも、ここで出過ぎないことです。良かれと思ってあれこれ細かくアドバイスすることは、前述のようにマイクロマネジメントに近くなり、相手のモチベーションを下げかねません。

その代わり、折に触れて「問題は起こっていないですか?」「困ったことはないですか?」といった形の質問をするようにしましょう。このような呼びかけを定期的にすることで、本当にアドバイスが必要な時には頼ってもらえます。人と人が助け合って仕事をしていく際の距離感としては、おそらくこのぐらいが適切なのではないでしょうか。

アドバイスを過剰にしてしまうのは、相手をひとりの独立した人間としてみなしていないことの裏返しでもあります。そのような関係は、仕事での協働関係としては適切ではありません。お互いに「頼られたら」笑顔で助け合うぐらいがちょうどよいと個人的には思います。どのぐらいの距離感だとメンバー全員が気持ちよく自立した人間の集まりとして働けるのか、ぜひ色々と試行錯誤をしてみてください。


photo by Dennis Skley

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