なぜ個人のスキルよりもチームワークが重要なのか

チームで仕事をするために必要なこと 第1回

2019/02/05
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著者:日野瑛太郎
 

世の中には様々な仕事がありますが、ほとんどの仕事はチームワークと無縁ではありません。小説家のようにもっぱら孤独と向き合うのが仕事の中心を占めるように見える仕事であっても、実際に商業ベースで本を出していくためには編集者とのチームワークが不可欠ですし、ましてや一般的な会社員の場合、どんなに個人スキルが高くてもチームワークに問題があるようでは仕事の成果を上げることは不可能です。

もっとも、一口にチームワークと言っても様々なチームの形があるので、一言で簡単に語ることはできません。3人ぐらいで編成された小さなチームもあれば、100人を超えるメンバーが所属する大規模なチームもあります。力強いリーダーがすべての意思決定をトップダウンでするチームもあれば、広くメンバーの意見を募りながらボトムアップで意思決定をしていくチームもあります。あるいは、メンバー全員が楽しそうに働いているチームもあれば、苦しみの声しか聞こえてこないチームもあります。

ではこのように様々なチームがある中で、どのようなチームであれば「いいチーム」であると言えるのでしょうか。これは非常に難しい問題です。僕たちはよく「うちのチームはいいチームだ」とか「あのチームはいいチームだ」とか簡単に言いますが、「いいチーム」かどうかを判断するための客観的な基準が存在するわけではありません。一方で、僕たちが普段からあるチームを「いいチーム」だと感じたりする背後にはそう感じさせるだけの理由が存在しているはずで、おそらくその構成要素はひとつではないと推測されます。今月から始まるこの連載では、そんな「いいチーム」の形を様々な角度から探っていけたらと思っています。

第1回目では、これらの議論の前提として、そもそもなぜ「いいチームを作ること」(チームビルディング)が大切なのかを考えてみましょう。

優秀な人をたくさん採用すればそれだけで強いチームは作れるのか

ひとつの考え方として、「とにかく優秀な人をたくさん採用していけば、自然と強いチームができる」というものがあります。この考え方の背後には、特段チームビルディングのような「チームをよくするため」の特別な取り組みをしなくても、個々のメンバーが優秀なのだからあとは勝手にいい結果を出してくれるだろう、という思想が背景にあるわけですが、果たしてこれは正しいのでしょうか?

実は僕は過去に、これに近い状態のチームで働いたことがあります。そのチームのメンバーの出自は錚々たるもので、外資系コンサル出身者や、過去に成績上位で何度も表彰されたことがあるトップ営業マン、業界内でもよく名前が知られているスーパーエンジニアなどが、プロジェクト遂行のために社内からかき集められました。彼らに比べて特に尖った能力があるわけでもない自分がなぜこのチームのメンバーになったのかは謎でしたが、ともかくこれだけの人たちを集めた以上、プロジェクトの成功は間違いないと当時の僕は思ったものです。

ところが、実際にプロジェクトが始まってみると、このチームは大きな問題を抱えていることがわかりました。いわゆるスーパープレイヤーが抱きがちな考えに「自分のやり方で仕事がしたい」というものがあります。それが他人に影響を及ぼさない自己完結したものであれば特に問題はないのですが、時に「自分のやり方」は「他人のやり方」と衝突します。このチームでは、その衝突がかなりの頻度で起こっていました。そして、さらに問題なのは、このチームにはその衝突を積極的に解消していこうとする努力、つまりチームワークを大事にしようという考え方が完全に欠如していたことです。本来であればチームワークの改善を主導すべきマネージャーは、個々のメンバーが「自分のやり方」を貫けなくなることを恐れるあまり、マネジメントの仕事を完全に放棄していました。

チームワークの欠如は、チーム全体の生産性低下にもつながりました。個々のメンバーが自分の能力に強い自信を持っているからか、他のチームに比べると情報共有などが疎かな場合も多く、そのことでしばしばチーム内で必要な連携が取れずに大きな手戻りなどもよく発生していました。

プロジェクトの進捗が思うようにいかないと、当然ながらチーム内の雰囲気は悪くなっていきます。雰囲気の悪さは個々人のやる気にも影響し、最終的にこのチームは退職者が続出したことで(優秀な人ほど辞めるのは早い)プロジェクトは中止になり、チームは解散することになってしまいました。

このようなチームで働いた経験から僕は、チームワークは個々人の能力の高さ以上にビジネスの成否を決める要素となるということを学びました。もちろん、個々人の能力の高さが重要でないわけではありません。しかし、どんなに高い能力を持っていても、チームワークが発揮できていないチームではその能力の高さは活かされません。つまり、能力の高い人をチームに入れること(採用)と、チームワークを強化すること(チームビルディング)は両輪であり、どちらが欠けてもダメなのです。

世の中の課題はよりチームワークを求めるようになってきている

思うに、現代ほどチームワークが必要とされる時代はないのかもしれません。人口減少により内需が減っていくなか、昔のような単純な労働集約型の業態はどんどん成り立たなくなってきています。AIによる単純労働の置き換えは今後も進んでいくことが予想され、我々人間が仕事で果たすべき役割はどんどん複雑化していきます。また、世の中の変化の速度も早くなってきているため、急激なビジネス環境の変化にも柔軟に対応しなければなりません。

このような解くべき問題の複雑化や環境変化の速さには、チームの力を使うことで対応することができます。問題が複雑化するのは対象の中に様々な問題が混在しているからで、どんなに能力が高くても、それらの問題をすべて一人で解くことは普通できません。しかし、チームで問題に対峙し構成員の各々が得意分野で力を発揮することができれば、複雑化した問題でも解ける可能性が出てきます。また、環境の変化についてもチーム内で役割を柔軟に入れ替えることができるのであれば、個人では到底できないような素早い外部環境への適応が可能になります。

もちろん、これはすべてのチームが実現できるわけではありません。もしかしたら、できないチームのほうが多いかもしれません。しかし、適切なチームワークを発揮することで、個人だったら絶対に達成できないことを達成した例は確実に存在します。世の中に大きなインパクトを与える仕事がしたいなら、チームの力を使うことは避けては通れません。

「いいチーム」はチームワークの価値を信じている

ここで、冒頭のどのようなチームであれば「いいチーム」と言えるのか、という問いに立ち返ってみます。もちろん、この問いに対する答えはひとつではありません。しかし、すべてのいいチームに共通する基本的な信念として、「チームワークの価値を信じている」ということが挙げられるのではないかと僕は考えます。構成員全員がチームワークの価値を信じており、その上で自分たちが今所属しているチームをよりよいチームにしていこうという「改善の意志を持ち続けている」ことは、いいチームであるための必須要素なのではないでしょうか。

今までいくつかのチームで働いてきましたが、「チームで働くこと」にそもそも否定的な人たちが集まっているチームがうまくいっている例は見たことがありません。また、「チームをよくしていこう」という改善の意志を持たないチームが結果を出し続けた例も見たことがありません。この2つは、いいチームを作り維持するための十分条件ではないにせよ必要条件ではあると思います。

現実にチームを改善したり強化したりするためにしなければならないことは多岐にわたりますが、これらのどんな活動も「これなら別にひとりでやったほうがいいや」と思った瞬間に意味がなくなります。そういう意味では、「チームワークの価値を信じること」はいいチームを作るための土台となる考え方です。次回から、より具体的ないいチームを作るために必要なことを検討していくことになりますが、まずこの土台となる考え方を心に留めておいていただきたいと思います。


photo byINPIVIC Family

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