田中泰延 しんどさは他人の都合ではかられる。自分を気遣えるのは自分だけ【前編】

失敗ヒーロー!

2020/03/17
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華々しい成功の裏には、失敗や挫折がある。その失敗エピソードから成功の秘訣をヒモ解く『失敗ヒーロー!』。今回は自身初の著書『読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術』が16万部を超えるヒットとなった、田中泰延さんが登場。“青年失業家”を自称する田中さんですが、かつてはコピーライター、CMプランナーとして広告代理店に勤務。当時の激務によって入院も経験されたといいますが、人生のモットーは「気楽に、不機嫌を避けて生きること」。いかにしてそのモットーにたどり着き、実現してきたかをヒモ解くと、他人の都合に呑み込まれず、自分を重んじることの尊さが明らかに!

僕のしんどさとみんなのしんどさは関係ない

――田中さんは「小さいころから、気楽に生きようという方針だけはあった」というお話をされていますが、幼少期のどのような経験が、この方針を芽生えさせたのでしょう?

田中泰延(たなか・ひろのぶ)
1969年大阪生まれ。早稲田大学第二文学部卒。1993年に株式会社 電通入社、コピーライター/CMプランナーとして勤務。2016年の退職後からは“青年失業家”を自称し、ライターとして活動を始める。2019年6月、初の著書『読みたいことを、書けばいい。』を上梓。ツイッターアカウント:@hironobutnk

田中泰延(以下、田中):小学校2、3年生の時だったかな。夏のめちゃくちゃ暑い日でしたよ、朝礼中に気分が悪くなってしまって。恐らくは水分不足だったんですね。あまりにしんどいものだから、先生に「保健室に行かせてください」と伝えたところ、「しんどいのはお前だけやない! みんなしんどいんや!」と怒鳴られて。理論が破綻していますよね。僕のしんどさとみんなのしんどさは、何の関係もないのに。

「みんなのしんどさは関係ありません。僕がしんどいので、保健室に行かせてください」と訴えると、今度はボコボコですよ。当時は昭和50年代。体罰が当たり前の時代だったからね、鼻血が出るまで殴られて。しんどさを訴えても、最後には鼻血が出るだけ。しかもしんどさって、他人の都合ではかられるものなんだと。だったら、しんどさなんて抱えず、初めから気楽に生きたほうが得じゃないですか。

――「不機嫌になることは避ける」というお話もされていますが、小学生当時の経験は、この方針にもつながっていそうですね。

田中:不機嫌の要因って、そこら中に転がっているんです。公立の小中学校って、校区があるじゃないですか。この範囲に住む人は、この学校に行きなさいという。僕はたまたま、小学校も中学校も、家の近所だったんですよ。始業のチャイムが鳴り始めたのと同時に家を出ても、鳴り終わるまでには校門をくぐれる。その一方で校区の端のほうから、30分かけて歩いてくる生徒もいるわけです。この時点で、しんどさのレベルが段違いですよね。

段違いなのに、しんどい思いをして歩いてくる生徒には、何の得もない。むしろ、不機嫌になるだけですよ。何の得もないことで不機嫌になるなんて、バカバカしい。そこで小学生ながらに思ったんです。僕は一生このまま、こんな無意味なことはしたくない。大人になれば、好きな場所に住めるじゃないですか。だから僕は、大学時代も就職してからも、通う先から見える範囲にしか、家を借りたことがありません。

サラリーマン時代に4度の入院。原因は広告業界の商慣習

――すると田中さんが電通を退職されたのも、不機嫌を避けるためだったのでしょうか? サラリーマン時代の24年間に、4度の入院をされたとのこと。しんどかったはずです。

田中:電通を辞めたのは、退職金目当てですよ。早期退職者には、お金をいっぱいくれるというから(笑)。もちろん、改めて振り返ってみれば、しんどい時期もありました。あのしんどさは、電通に限らない。広告代理業の商慣習にあるんでしょうね。クライアントも代理店も制作会社も、一丸となって、いいものを作ろうと頑張るんです。ただ、一致団結して目指していた像が、一瞬にして崩れ去ることがある。これがクライアントのお偉いさんですよ。いきなり会議に割り込んできたかと思うと、「なんか、わしの思てたイメージと違うわ。即刻、作り直しや!」と、その一言で全てが振り出しに戻る。これはしんどい。

この根っこにあるのが商慣習ですよ。一連のキャンペーンを企画して、松坂桃李のような人気タレントのCMを作るとしますよ。莫大なお金が動くじゃないですか。それでも広告業界には、契約書が一切ない。口約束も契約として成立するから、法的に許されてしまうんです。全てが口約束で進み、明確な根拠も注文もなしに「なんか違うから作り直せ!」が通じてしまう。このしんどさが、身体に出たんでしょうね。お医者さんの見立てによれば、過労とストレス。ただ今は、残業時間がかなり改善されているようです。それでも業界全体の商慣習を見直さないことには、しんどい思いをしている人がいるでしょうね。

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