瀧波ユカリ/漫画家「生きているだけで偉い」が私の基本【後編】

2019/05/15
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華々しい成功の裏には、失敗や挫折がある。その失敗エピソードから成功の秘訣をヒモ解く『失敗ヒーロー!』。今回登場するのは、漫画家の瀧波ユカリさん。近年は自身のSNSで多くの方から悩み相談がくるなど、肩の力を入れすぎない彼女の姿勢に共感の声が集まっています。漫画家としての苦労と、ストレスのない人間関係の築き方を教えていただいた前編に続き、後編では多くの女性が抱える“悩み”の根源についてヒモ解いていきます。

頑張ることは正義じゃない

――『ありがとうって言えたなら』も『はるまき日記』も、みんなが大変だと感じる介護や育児を違った視点で描かれていますよね。前編でもお話しいただいたように、大変なことでもどこか割り切ってポジティブに捉えているというか……。

瀧波ユカリ(たきなみ・ゆかり)
1980年3月28日生まれ。北海道釧路市出身。2004年アフタヌーン四季賞冬のコンテストで『臨死!!江古田ちゃん』が四季大賞を受賞し漫画家デビュー。受賞作は『月刊アフタヌーン』で即連載化。自身の育児経験を綴った漫画エッセイ『はるまき日記』や、母を看取った体験を綴った『ありがとうって言えたなら』など、リアルな日常を描いた作品で注目を集める。

瀧波ユカリ(以下、瀧波):こう見えて根はネガティブなんですよ。自分の努力でどうにもならないことに関しては、昔からネガティブ。『ノストラダムスの大予言』に怯える子どもでした。数日後に楽しいイベントがあったとしても、「楽しみ」と待っているタイプではなく、「期待しすぎないように」と思ってました(笑)。

でも、自分の努力でどうにかなることに関してはポジティブだったんです。世界は滅亡するかもしれないけど、期末テストはいい点を取ろうみたいな(笑)。年齢を重ねるごとに、もっと人生を楽しんでいいんじゃないかと考えるようになった結果、だいぶポジティブ思考ができるようになりましたね。努力でどうにかならないと思っていたことも、実はなんとかなるんじゃない? って捉え直せばいいと気づいたんです。

――その肩の力の抜けた向き合い方が、瀧波さんらしさなのでしょうか。

瀧波:「頑張り万歳」みたいな雰囲気には乗っからないようにしていますね。例えばビジネスの世界によくあるような「頑張れば年収いくら」みたいな価値観だけに浸っていると、数字でしかものを選べなくなると思うんです。昔、「美魔女」という言葉が流行った一方で、「美ばかりを追い求めるのは愚かだ」という逆の論調もあって、世の中には本当にさまざまな意見がある。自分の考えをきちんと持っていないと、どれを聞いても「そうか」と揺さぶられてしまいます。頑張ることがいいことだという考え方もそのまま受け止めるのではなく、カテゴリ分けをして、「ここは頑張る、ここは頑張らない」と自分にとっていいものだけを採用すべきじゃないでしょうか。

――世の中の意見をそのまま受け入れるのではなく、頑張るべきところだけに力を入れると。

瀧波:そうですね。私の場合は「もらった仕事の期待を裏切らない」ということくらいでしょうか。その時にできる一番いい結果で出すことです。それさえ努力できていれば、仕事は続いていくと思っています。

悩みの根源は、自己肯定感の低さ

――ご自身のSNSで、さまざまな方からのお悩みに応えられていますよね。

瀧波:元々Twitterは日常生活の一環くらいの気持ちでやっていたんですけど、今では私のTwitterは知っているけど、漫画を知らない方も多くいる不思議な状況です(笑)。漫画のファンの中には、作品だけを求めていて作者のことは知りたくない人も結構多いんですよ。漫画の世界観を崩されたくないというか。「江古田ちゃんのように独身で、男を取っ替え引っ替えしてつらく生きてる人だと思っていたのに、実際の作者は結婚してて騙された気分だ」とか。

最初はプライベートとしてやっていたので、Twitterの発言にとやかく言われるのは嫌でした。でも、その発言たちが自分の人格を図られる指標になってしまうなら、ここでは素でいられないことを受け入れようと思って。見せたい自分を見せればいいんだと徐々にリニューアルしていきました。気づいたら、なぜかお悩み相談を受けるようになっていましたね(笑)。頑張ってやったことではないですが、そうして膨らんだお仕事もあります。

――1人1人のお悩みにすごく丁寧に返している印象があります。

瀧波:いろんな悩みに答えてきて気づいたのは、みんな自己肯定感が低くて苦しんでいることです。全部の悩みの原因はここじゃないかと思えるほどに。国民的な病気というか、癖、国民性のようなものなんでしょうか。今、女性は子育ても出来て当たり前、仕事もやって一人前みたいになっていて、人と比べて「私なんて」という悩みが本当に多いんです。

――どうすれば、そういった自己肯定感の低さを改善していけるのでしょうか?

瀧波:「私なんて」と思った瞬間、力技でそれを否定するしかないと思います。「そんなことないよ。だってあなたは○○でしょ」と無理に自分を擁護する必要もない。ただ「そんなことないよ」って否定してあげればいいんです。他の人と比べてダメだと思うのは、うっかり入ってきた情報に中毒になっているだけ。今の自分に満足できていたはずなのに、たまたま入ってきた情報に揺さぶられているんです。

人と比べて悩むことがいかに無駄か、若い人たちにも知ってほしいですね。若者らしく悩めば悩むほど成長できるって思っている人もいると思うんですけど、しないと思う。何時間悩んでも何も変わらないんです。

――悩むことで満足してしまう側面はたしかにあるかもしれません。

瀧波:ただ悩むのではなくて、「じゃあ明日から何をするか」を考えないと成長しないですよね。「自分はダメなんじゃないか」と苦しむより、「あれっ? 自分ってダメかも? じゃあ明日からこうしよう!」って軽く考えるくらいがいいんです。悩みを具体的な行動に切り替えることも無理そうなら、考えることすらしないほうがいいです(笑)。

悩んでいるから真面目なわけではなくて、エネルギーの使い方を間違っているだけだと思います。悩みを細分化して、楽しく行動に切り替えていける人のほうが真面目だと思うんですよ。

――若いうちからその境地にたどり着けるものでしょうか。

瀧波:ちょっとずつでいいと思います。悩むことが無駄であるとわかるまで、私も時間がかかりました。だから若い方が聞いても「なんだよ、人の気も知らないで」と思うかもしれませんが、頭の片隅にでも入れて置いてくれれば、気づくのが少し早くなるかと思います。

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