瀧波ユカリ/漫画家 空気を乱すことを怖がらず、自分の領域は自分で守る【前編】

2019/05/14
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夫婦でも仕事でも伝えるために必要なのは“タイミング”

――お子さんが生まれた後、お仕事のスタンスに変化はありましたか?

瀧波:夫婦で働き方を変えましたね。東京から札幌に引越しして、当時は夫もリモートでWebの仕事を受けていました。2人で別々の仕事をしていると、時間の奪い合いみたいになってしまって。例えば、2人とも夜中に仕事の修正が入ったりすると、明日の朝どちらが子どもを保育園に連れていくのか、議論になってしまうんですね。

それで、夫が仕事を辞めることにしたんです。夫も美術大学を出ていて、漫画の仕上げをやろうと思えばできる人だったので、私の漫画だけにすればいいんじゃないかと夫から提案されました。収入が私の漫画一本になるのは、不安だったんですが。今は漫画の仕上げだけでなく、Web面のサポートの他、私の苦手なお金のことや書類仕事も夫がやってくれています。

――旦那さんが瀧波さんのマネージャー的な部分も担っているんですね。夫婦で仕事も子育ても分担していくのは、難しくありませんでしたか?

瀧波:最初はぶつかり合うことが多かったですね。言いづらいことを言わないでいると、結果的に言わなかった側が困るんです。思ったことは言ったほうがいい。その次に大事なのは、タイミングですね。私ばかりが家事をやっているなと思った時、ふと夜中にイライラが頂点に達して、隣に寝ている夫に「あのさあ!」って怒りだすのは最悪ですよね(笑)。夫が仕事から帰ってきた時にいきなり怒るとか。相手が予期しないタイミングに自分の言いたいことを言うのは、一番伝わらない方法だと思います。話を聞いてくれそうなリラックスした雰囲気の時に声をかけたり、「明日の夜に話したいことがあるから時間が欲しい」と前もって伝えたりしています。こちらも気持ちを落ち着かせてから話し始めるんです。

部下とのコミュニケーションも同じだと思いますよ。部下が何か失敗をしたとしても、勢いで怒り始めてしまっては、部下もビビって傷つくだけです。自分の鬱憤が溜まっているからといって、自分勝手にそれを吐き出しても伝わりません。例えば「今日お昼の後、会議室とっておいたから来てくれる?」と呼び出してゆっくり話せば、相手も聞けると思うんですよ。気を遣ってくれたと相手も感じてくれれば、受け取りやすいと思います。

「良く思われたい」は地獄の始まり

――上司・部下の関係以外でも、女性から女性へのハラスメントやマウンティングなど、人間関係の問題は絶えませんよね。

瀧波:ママ友同士では、昔からの友達に出すような自分の素は出せないですよね。そこは役職だと思って取り組んだほうがいい。「ここは自分のことをわかってもらう場ではない」と割り切る必要があります。良く思われたいと思ってしまうと地獄なんですよ。どんな場でも「ここではこう振る舞う」と決めておく。会社だったら自分の立場の範囲の中で振る舞って、その範囲を超えたことを求められたら応えないと決めておくんです。

たまに人をめっちゃ怒らせているのに「私は悪くない」と堂々としている人がいますよね。そういう人を参考にしたらいいと思います(笑)。飲み会をスパっと断る唯我独尊タイプの人を見て「嫌だなあ」と思うんじゃなくて、その人の技を盗んでほしい。周りの空気を乱すことを怖がりすぎず、守るべき範囲をしっかり守れている姿を参考にするんです。

私たちは自分の領域を自分でキープしていかないといけない。自己肯定感さえ持てていれば、それは可能なんです。周りが削ってこようとするなかで、その領域を守るために継続的な努力をしていく。何事にも大切な基本姿勢だと思っています。

後編では・・・

若くして漫画家デビューした瀧波さんですが、やはりそこには失敗や苦労がありました。それでも、「例え悲しいことやつらいことが起こっても、新しいことに出会うとどうしても描きたくなっちゃうんです!」と笑顔で教えてくださいました。そのどこか肩の力が抜けた素直な姿勢が、瀧波さんが共感を集める理由のひとつなのかもしれません。続く後編では、自身のSNSで多くの悩み相談に応えてきた瀧波さんに、現代人の悩みの本質についてお伺いしていきます。

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