応募条件は「世界一周」、履歴書の代わりはパスポート。株式会社TABIPPOが定義する、新しい新卒採用の形。

2016/07/29
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一般的な採用活動では、応募者が持つ本当の姿を見ることは難しいとされています。それは、決まりきった履歴書やエントリーシート、画一的なリクルートスーツが大きな理由でした。採用担当は個性を無くした応募者のなかから、優秀な人材を見出すことを必要とされていたのです。

そんな課題の解決を目指し、株式会社TABIPPOは新しい形での新卒採用をスタートすると発表しました。その応募条件は、「世界一周している、もしくは入社までにする」、「2017年4月に入社できる」のたった2点です。

何故、TABIPPOは前例のない方法で採用活動を行うのでしょうか。また、このTABIPPOが始める採用活動はこれまでにあった課題をどのように解決へと導くのでしょうか。

今回は旅する文化を作る会社として、たくさんの国を訪れる経験をして欲しいと願う株式会社TABIPPOが行う新しい採用方法について、代表の清水直哉氏にお聞きしました。

履歴書の代わりはパスポート。嘘偽りの無い旅のエピソードから、応募者の姿が見えてくる。

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「面接は嘘つき大会」、そんなことが就活生の間でまことしやかに語られていることをご存知でしょうか?「面接では自分の本当の姿を見せるより、嘘をついてでも良いイメージを面接官に持たせるべき」とさえ一部では考えられているのです。

応募者が面接の場面で本当の姿を見せられない理由として、清水氏は「応募者が堅苦しくなって普段の自分を出せないこと、選考のために準備や対策を行うことが問題」だと語ります。

実際に書店では面接を攻略するための参考書が並び、就活コミュニティサイトでは「学生時代に頑張ったことを聞かれて◯◯って言ったら良い感じだったよ!」、「じゃあ私もそうしようかな」と、面接で賢く立ち回るための情報を共有する姿が見られます。これはつまり、「とにかく正解の答えを言わなければ」という思い込みが、応募者を画一化しているということ。たとえ採用担当から歩み寄ったとしても、そのような頑なな考えを持った応募者の意識を変えることは困難です。

しかし、このような従来の採用活動に疑問を感じたTABIPPOは、最初の選考を「社長との飲み会」、最後の選考を「旅に出てもらう」こととしました。その理由を、清水氏はこう説明します。

清水氏:「飲み会や、旅を選考とすることで全てを解決できるとも、必ずしも適正に評価ができるとも思っていませんが、少なからずその人の『自分らしい姿』が見えるのではないかと考えています。」

その他にもTABIPPOの新卒採用の大きな特徴として、「面接ではスーツNG」、「年齢制限を設けない」などが挙げられますが、特にユニークなのは「パスポートを履歴書の代わりにする」というもの。

清水氏:「パスポートを履歴書代わりに使うことについて、特にこういったものが正しい、こういったものであれば好印象、といった正解はありません。しかし、私が見たことの無い国のスタンプがあれば、この人は自分の知らない国を旅しているんだ、とワクワクしますね。『え?これどこのスタンプ!?』、『トルクメニスタンです!すごい良い国でしたよ!』みたいな会話ができたら嬉しいです。」

アピールポイントの書き方が似たり寄ったりな履歴書では、応募者の持つ本当の姿は見えませんでした。TABIPPOはそれをパスポートに変えることで、嘘偽りの無い旅のエピソードから応募者の本当の姿を見られるようになるのです。

日本人のパスポート所持率は24%……旅をすること、世界を見ることで様々な社会問題について多角的な視点を得られる。

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履歴書ではなくパスポートを見るTABIPPOですが、日本人のパスポート所持率はなんと24%。これは世界の先進国の中でも際立って低い数字です。しかし、そんな日本人の中にも旅行やボランティアを通じて積極的に海外へ行く人たちがいるのもまた事実。

昨今では、この海外旅行や海外ボランティアに行く人について、「意識高い系」という偏見が広がっています。この「意識高い系」とは、承認欲求を満たすため実際に得た経験以上のことを偽って語り、能力以上の人物であるよう振る舞う人のこと。海外に行くことそのものは批判されませんが、「意識高い系」がこぞって海外旅行や海外ボランティアの経験を自己PRの材料に使うため、「海外へ行く=意識高い系」という印象が知らず知らずの間に確立してしまったのです。

「意識高い系」は海外へ行った事実そのものを得意げに語りますが、清水氏が重要視しているのは旅の経験そのものではありません。

清水氏:「旅に正解は無いですし、1人旅だから良い、貧乏旅だから良いといったことも思っていません。最も重要なのは、その人が感じたこと、学んだこと、その中で形成されていった価値観です。選考のなかで、それらを引き出していきたいです。」

その一方で、清水氏は旅の経験だけが正しいと思わないことについても強調します。

清水氏:「インターンの活動や、ボランティアやアルバイトの経験も非常に意味のあることではないでしょうか。ただ、僕らは旅でしか学ぶことができないことが間違いなくあるでしょうし、日本人が旅をしていないこと、世界を見ていないことが、様々な社会問題に直結していると思っています。」

サバイバル力・困難をコントロールする力。旅は常識にとらわれずに行動できる力を養ってくれる。

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ところで、「旅で世界を、もっと素敵に」という企業理念を掲げているTABIPPOにとって、そもそも「旅」にはどのような魅力があるのでしょうか。そして何故、旅の経験を持つ人を求めようとしているのでしょうか。旅の魅力について清水氏はこのように考えています。

清水氏:「移動距離が大きくなることで、現在自分が生活している『日常』とは違う『非日常』に飛び込み、いつもとは違う刺激を得られる点にあるように思っています。よって、移動距離が長ければ長いほど、違いを見ることができ、非日常に触れられます。」

海外に行く割合が少ない日本人は「非日常」に触れる機会も少なく、生き方や働き方を見直す方法が見つからないことが危惧されています。幸福度が低く、自殺率が高い日本だからこそ、旅は自分の生き方や働き方を見直す1つの方法になるのかもしれません。

また、「旅という経験そのものではないどころか、価値はありません。大切なのは「非日常」で得た刺激や学びが、社会で活躍するための何かしらの能力を高めてくれること」だと清水氏は主張します。

例えば、見知らぬ土地でも生き延びようとするサバイバル力をはじめ、予期せぬトラブルに見舞われた時の困難をコントロールする力、常識にとらわれずに行動できる力……これらはどれも、「日常」で養おうとしても、限界がある能力です。

TABIPPOの社員がよく使う「計画的偶発性」という言葉もまた、旅によって養える能力の1つです。こちらはスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授によって提唱された考えであり、キャリアの8割は予想しない偶発的なこと(偶然の出来事や出会い)によって決定されるというものです。変化の激しい不安定な時代において、偶発性が起こりやすい場所へ飛び込んでいく、アンテナを高くするためには旅が必要です。

旅をする人としない人では、新しいものや人と出会う数は大きく異なります。たとえそれが異質なものであったとしても、何かしらの形でその人の血や骨となる可能性も大いに秘めているのです。

TABIPPOならではの採用活動の目的は、応募者の本当の姿、旅を経験して社会に貢献できる能力を持った人を見極めること。

左部分はTABIPPOが採用活動において疑問に感じている点、右部分は疑問点に対してTABIPPOが行う採用活動。画像:株式会社TABIPPO 採用ページより引用

「世界一周を経験した人」という応募条件は一見、物珍しく思われるかもしれません。しかしこの新しい採用方法はTABIPPOにとって、応募者の嘘偽りの無い本当の姿を見ること、更に旅を経験して社会に貢献できる能力を持った人を見極めようとする挑戦なのです。

それもすべて、TABIPPOが世界一周をきっかけに広い視点を持ったメンバーによって作られた企業だからこそ。従来のやり方で発生していた課題の解決に向け、TABIPPOは既存の採用では見えてこない、旅を通して成長した応募者の姿を見ようとしているのです。

株式会社TABIPPO:http://tabippo.net/

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