鈴井貴之「俳優でもNGなし」成長するには、自分の可能性を狭めないこと【前編】

失敗ヒーロー!

2019/08/20
Pocket

華々しい成功の裏には、失敗や挫折がある。その失敗エピソードから成功の秘訣をヒモ解く『失敗ヒーロー!』。今回は、映画監督、タレント、放送作家として、テレビや演劇業界を盛り上げてきた鈴井貴之さんが登場。あの伝説的な人気ローカル番組『水曜どうでしょう』の裏話や、ハングリー精神旺盛な鈴井さんが挑戦し続けられる原動力についてヒモ解いていきます。まずは、現在、稽古真っ最中の舞台のお話からスタート。

場違いなアーティスト集団「OOPARTS」

――舞台『リ・リ・リストラ〜仁義ある戦い・ハンバーガー代理戦争』がいよいよ始まりますね! 今回どうして「元ヤクザ」を主人公にしたんですか?

鈴井貴之(すずい・たかゆき)
1962年5月6日生まれ、北海道出身。CREATIVE OFFICE CUEの取締役会長。映画監督、タレント、放送作家。大学在学中に演劇に出会い中退、以後いくつかの劇団を立ち上げて北海道の演劇界にその名を轟かす。1992年にCREATIVE OFFICE CUEを立ち上げ、自身も出演、企画、構成をした『水曜どうでしょう』が全国で人気に。2010年プロジェクトとしてOOPARTSを再始動。Takayuki Suzuki Project No.5 OOPARTS『リ・リ・リストラ〜仁義ある戦い・ハンバーガー代理戦争』が東京・札幌・大阪にて2019年8月23日より開幕。

鈴井貴之(以下鈴井):題材にしにくいもの、社会から注目されないものに興味が湧くんです。暴力団員の数は今減ってきていますが、彼らはヤクザを辞めても暴力団排除条例により5年間銀行口座を開けないし、賃貸契約も結べません。更生後の再就職率も低く、「更生して立ち直れ!」と言われるわりには、社会的な救済措置がない。まだそうした締め付けがあるから、辞めてもまた違う闇の世界、アウトローの世界に行ってしまうという悪循環があります。とはいえ、決して僕たちが闇社会とつながっているわけではございませんので(笑)。

――疑ってないので大丈夫です(笑)。今回の舞台、チームの雰囲気はいかがでしょう?

鈴井:おもしろいものを作るのには、チームワークがすべてなんですね。うちは劇団のように毎回同じメンバーではないので、最初は手の内の探り合いがあるわけですよ。でも3日も経てば探っている場合ではなくなり、どんどんみんなのキャラクターが立っていくという感じです。

――前回の舞台の主人公は孤独死の現場を清掃する特殊清掃員でしたし、弱い立場の人、アウトローにいつも目を向けていらっしゃるなと。

鈴井:自分自身もある意味マイノリティーですから、ずっと世の中とずれた人に興味があるんです。北海道で芸能活動をするということ自体、障害がたくさんありました。今は札幌すらも離れて、田舎に住んでいます。都会で活動したほうがいろいろと話が早いけど、ひねくれ者なので(笑)。プロジェクト名である「OOPARTS」も、アウト・オブ・プレイス・アーティスト、場違いなアーティストというのが正式名称です。

――札幌を離れての暮らしはいかがですか? たくさんの大型犬と、森の中に住んでいると聞きましたが…。

鈴井:嘘偽りなく、穏やかになりますよ。自然もそうですが、そこに住んでいる人たちに癒されます。人と人のつながりが強くて何かあれば助けてくれますし。例えば、我が家の除雪車が溝にハマってしまい困っていたところ、休業日にも関わらず近所の業者の方が来てくれました。請求書を送ってくださいって言ったら、「これくらいいいよ、だって今日休みだもん」って。都会なら休業日だからこそ、割増料金を請求してきそうなものなのに。なんていい人たちなんだと思うし、こちらも何かある時に恩返しをしたい。こうやって人間関係って構築されていくんじゃないですかね。

――そんな寛大な人も多い北海道で事務所を立ち上げて、どんどんお仕事の幅が広がっていきましたよね。

鈴井:TEAM NACSのがんばりと『水曜どうでしょう』のおかげで、僕のことを知ってくれる人が増えて、とてもありがたいことです。

体制が整っていない地方でこそ、自己演出の実力がつく

――ゼロから事務所を立ち上げて、今では各々が全国的に活躍できるほどに成長した理由は何だと思いますか?

鈴井:一つのものにとらわれないからでしょうか。自分はこういう者だからこれはしないとか、これはNGというのは、うちの事務所では基本的にないんです。だから大泉洋もコメディアンみたいにしゃべります。弊社ではCUE DREAM JAM-BOREEというイベントを2年に一度行っているのですが、ここではみんな歌わないといけません(笑)。

――まさにマルチタレント。それも会社の方針なのでしょうか?

鈴井:ローカルで生きていくには、マルチでないといけない。これはやらないという線引きはしません。そもそも地方は、東京と比べるとサポート体制があまり整っていないんです。例えば、東京のラジオなら放送作家がいるけど、地方にはいない。つまりパーソナリティは自分で原稿を書いて、視聴者からのメールを見て、自分で考えて自分の言葉で話すわけです。そういうふうに全行程を自らやらざるを得ないローカルタレントのほうが、僕は潰しが効くと思っています。だから、うちの事務所ではみんなにラジオパーソナリティを経験させています。

――TEAM NACSのトーク力の根底にあるのはラジオなんですね。

鈴井:ラジオは大変です。リスナーの方は、隠そうとしてもこちらの体調すらわかるんですよ。知ったかぶりをしても、絶対メッキが剥がれる。人に何かを伝える喜びもあるけど、責任や怖さもあります。だから、よく考えてやりなさい、と若手に伝えています。ラジオだと聴いている人の状況もいろいろですよね。正座して聴いている人は基本いないわけですから、運転しながら、料理しながら聴いている人に伝わる方法を考える。あとは告白が上手くいってルンルンと運転して聴いている人もいれば、親の訃報を聞いてタクシーで病院へ向かう途中で聴いている人もいるかもしれない。発信する立場の人間が内輪で盛り上がるのではなくて、それら全員をイメージしてしゃべるようにしなさいと伝えてます。

――見た目でもごまかせないですし、シビアですね。

鈴井:実力をつけるにはいいですよ。あてがわれたものをやるより、自分で考えたほうが自己演出の力がつく。放送作家がいない、サポート体制がないローカルだからこそ、可能性はまだまだあると思っています。

マネたまご マネたまをフォローすれば最新記事をお届けします!
運営会社 | Copyright © kaonavi, inc. All Rights Reserved.