【後編】「芸人もサラリーマンも戦場で戦ってる。大切なのはいかに裏方を大事にできるか」水道橋博士(芸人) | マネたま

【後編】「芸人もサラリーマンも戦場で戦ってる。大切なのはいかに裏方を大事にできるか」水道橋博士(芸人)

失敗ヒーロー!

2018/06/13
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華々しい成功の裏には、失敗や挫折がある。その失敗エピソードから成功の秘訣をヒモ解く『失敗ヒーロー!』。今回ご登場いただくのは、たけし軍団の一員として、若き頃からビートたけしさんと師弟関係を結んできた水道橋博士。最近ではバラエティタレントとしてだけでなく、コメンテーター、作家としても活躍する水道橋博士の人生哲学とは一体どんなものなのでしょうか。後編では、師弟関係の本質から、お笑いの世界とサラリーマン社会の共通点まで、水道橋博士節炸裂のお話を伺いました。

ビートたけしとは「人生の道標」

――水道橋博士にとってビートたけしさんはどのような存在ですか?

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水道橋博士(すいどうばしはかせ)
1962年8月18日生まれ、岡山県出身。86年にビートたけしに弟子入り、翌年、玉袋筋太郎とともにお笑いコンビ「浅草キッド」を結成。テレビ・ラジオや舞台を中心に活躍の場を広げる一方、ライターとして雑誌等にコラムやエッセイを執筆する。芸能界を内側から綴った『藝人春秋』(文藝春秋)、その続編として自身が芸能界に送り込まれたスパイであるという設定で記した『藝人春秋2(上・下)』(同)が話題を呼ぶ。また、自身が編集長を務める日本最大級の有料メールマガジン『水道橋博士のメルマ旬報』も好評配信中。

水道橋博士(以下、博士):師匠です。芸の世界で絶対的存在と言い切れます。ただ、日本の芸能界の歴史で空前絶後の超人ですよ。だって、いくら追いかけても追いつかないんだもん。ずっとあらゆるジャンルの第一線にいるんだからさ。芸能界という同じトラックで、後ろ姿を追いかけているけど、何十周も追い抜かれている。周回遅れで、もう、追いかけることはやめようってなるんだ。「シーザーを知るためにはシーザーになる必要はない」。そう思ったのが、30代の半ば頃かな。それからは、人生の道標だと思っている。50歳を超えてから、俺が芸論を繰り返し書くようになって思うことだけど、「師匠選びも芸の内」、って言うけどね。師匠を持つということは、人生で道に迷った時には常に進路を相談できる。その意味では実に幸せなことだし、その芸人にとって永久の信心、信条を持つことなんだ。一門は宗派だし。言うならば、師匠に認められたくて、褒められたくて芸能生活を送っているんだから。

――では例えば100年後、芸能史というものが書かれた時に、たけし軍団とはどのような人々として記述されると思いますか?

博士:談志師匠がよく例えるけど、「落語は赤穂浪士の四十七士ではなく、そこから逃げちゃった奴等が主人公なんだ」って、そんな感じだと思うけどね。個々の名前一人一人がそれほど名を残すわけでもないだろうけど、くだらない芸名を名乗りながら、厳と存在した。でもまぁ、この例えが違うのは、たけし&たけし軍団は、逃げることなく、フライデーに討ち入りした(笑)、しかも、人気者として、完全に全盛期を作ったわけ。いわば、天下を取っているわけだからね。リアクション集団芸の創始だよ。

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――芸能界を揺るがしてきた存在なわけですもんね。そんなたけしさんを師匠と崇める水道橋博士にお聞きしたいのですが、師弟関係って一体どのようなものなんですか?

博士:師弟関係っていうのは、人生において絶対にブレない疑似家族なんだよ。俺は家出して、勘当されて、入門したからこそ、師匠は家長で絶対軸。お兄さんはずっとお兄さん。みんな、父親の師匠には一生を捧げるという誓いを立てている。だから、俺が橋下徹生放送降板事件(※)を起こした時も、たけしさんのところに直接行って、「これ以上、師匠が『やるな』って言ったらやりません」ってお伺いを立てた。でも、たけしさんは「大いにやってくれ!」って言ってくれたから、矛を収めなかった。師匠が良いって思ってくれている限り、たった一人でも、その道を突き進むのが弟子なんだよ。世間は関係ないよ。

※編集部注:テレビ大阪の番組『たかじんNOマネー〜人生は金時なり〜』で当時大阪府知事だった橋下徹氏と口論になり、生放送中に水道橋博士が番組を降板した事件。

芸能史を正確に書くために、ルポルタージュを志向

――究極の芸の道とはそこにあり、ですね。ただ、水道橋博士は政治の道を志そうと思えば志せると思います。でも芸の道に留まっていらっしゃる。そのバランス感覚が絶妙だと思います。

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博士:俺は圧倒的にお笑いの方が優れていると思ってるからね。お笑いとは究極の職業で、コメディアンは政治家よりも上位にある。最高権力者と寄り添いながらも、「王様は裸だ!」と言うことを許されている人々なわけ。だから、俺のコメントが右寄りでも左寄りでも、そんなの構わないんだ。左右を弁別しない。威張っている権威を弄ぶ。芸人を愛でる、政治家をからかう、その立ち位置を作れているという自負はあるよ。

――芸と政治の絶妙なバランス感覚の中で、水道橋博士は猪瀬直樹元都知事や石原慎太郎元都知事と交友関係を持たれています。そういった「偉い」方と付き合うコツみたいなものってあるのでしょうか?

博士:「お前、よく、そんなことを俺の前で言えるな!」って発言を実際に口にすることかな。

――怒られないですか(笑)?

博士:石原慎太郎さんの時は、周りのSPがわっと立ち上がるんだよ。そうすると、慎太郎さんが「待て!」って(笑)。「コイツは面白いことを言っている!」って、制するんだよね、周囲を。そこで信頼関係が生まれるんだ。そこらへんのエピソードに関しては、まだまだ書けることがあるから、乞うご期待ってところなんだけど。

――「書く」と言えば、水道橋博士の代表作『藝人春秋』は芸能界を内側から記述するルポとして傑作だと思います。芸能界を内側から書くことを目指されたのはいつくらいからなんですか?

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博士:竹中労に憧れを抱いた頃からかな。竹中労は、当時、芸能界を独占的に支配していたプロダクションと揉めながら、干されたタレントを庇うことをしたんだ。ペンの力で権威と戦うっていうことをやったわけ。偉大な存在だよ。だから、俺が今、『メルマ旬報』っていうメールマガジンをやっているのも、その影響が強い。その一方で、あのコンテンツは芸能史を正確に記述しようっていう試みでもある。執筆者は市井の「史家」が多いの。皆、歴史を残したい人が集まってやっている。都市伝説の方が大きくなる世の中だから、俺は裏を取って、正確なヒストリーを描きたい欲が強いの。それにはエッセイではなく、ルポルタージュや年表の方法が適しているんだよね。

――『藝人春秋』は、時折挟まれる情景描写が非常に巧みだと思います。読んでいて、風景が目の前に現れるようです。

博士:(インタビュアーからページの指定があって)そこのシーンを書く時に、まず、Googleマップで、その楽屋の窓からどんな景色が見えるか確認している。それから、当日の詳細な天気も調べた。例えば、橋が見えれば、その絵を描いて、文字にする。雨が降っていれば、その情景を描写する。そうすることで、劇的なシーンに臨場感をもたらすことができる。しかも、その表現を何十通りと書いて、一番適したものを採用してる。ただ、ササッと書いているわけではない。そのシーンに気が付いてくれたことは嬉しいし、それだけ力を込めている。

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