「カメラを持つモチベーションに」SAKURAカメラスリング・杉山さくら

「働く女性」の未来像

2017/03/21
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起業のモチベーションは写真の個展開催

 
杉山 結婚して子どもができて、共働きでないと生活ができないと思っていましたから、ごく自然に保育士として働いていました。わが家には現在中1の長男、小5の長女、小3の次女がいるのですが、次女が長女と同じ保育園に入れなかったんですね。別の保育園に入れたからまだ良かったのかもしれませんが、保育士として働きながら2ヵ所の保育園に送り迎えをし、3人の子育てをするという生活を1年過ごして『さすがにこれは無理』となって、非正規の保育士に転職しました。

そして次女が年長になったときふと、自分のこれからの人生について考える機会があったんです。そんなときに保育園のパパ友だった、写真家/音楽家の安達ロベルトさんの影響で、写真の世界に興味を持ちました。

――カメラのきっかけもお子さんのパパ友つながりなんですね。

杉山 そうですね。パパ友、ママ友にはとてもお世話になっています。ロベルトさんにはフィルムの詰め方から教わりました。写真についても『写真は、内面が映るもの』『心の反射神経でシャッターを切る』とか、それまで考えてもいなかったことをたくさん教わって、いまの自分にぴったりな趣味になるなと思いました。

――子育てに追われていたご自身にとって、カメラで写真を撮ることが必要だった?

杉山 写真って、自分が気づいてないことを気づかせてくれるんです。忙しく子育てに追い立てられ、わけがわからなくなっていた時期でした。気分転換に洋服を買いに行っても、自然と仕事で使えそうな洋服を選んでいることに気づいて。何を好きなのかもわからなくなっていました。そんなとき、フィルムカメラで撮影を始めました。フィルムって、撮ったときと現像したときのタイムラグがあるじゃないですか? 現像してみて「そのときの自分は何を思ってこれを撮ったんだろう?」って考えるようになりました。

フィルムなので、デジカメのように撮ってすぐ消すってこともできません。シャッターを切るにはそれなりの理由があって、一枚の重みもある。誰でも、何でもいいじゃない。家族とか花とか、大切なものをそのときに感じた思いで撮るのが楽しかったんです。

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「こう見えて人見知りで臆病」という杉山さんは、フィルムカメラと出会って、徐々に外の世界に目を向け始めるようになったそうです。カメラのワークショップや写真展に出かけるようになり、代官山の北村写真機店で働きはじめました。カメラスリングのアイディアが“降りて”きたのものちょうどその頃のことでした。

杉山 写真を撮るようになってしばらくして、6人のグループ展を開かせていただいたんです。そのときは作品を誰かに見てもらえればいいやくらいの気持ちだったんですけど、周りの人やお友だちが本当にたくさん来てくれたんです。誘い合って何百人と来てくれたんです。それでみんなに『次は個展だね』って声をかけてもらいました。

個展となると私の写真の実力はさておき、お金もかかります。でも、やってみたいと思ったんです。それならどうするか? 保育士のパートの仕事を増やすのか? 資格を持っている介護の仕事をするか? これまでの経験や生活を振り返ると、どっちも厳しいと思ったんです。そこでカメラスリングのアイディアで起業できないかと思ったんです。

――起業のモチベーションは個展を開くということだと。
 
杉山 当初は本当にそうで、いまでもその想いはあるんです。『個展が開けるようなアーティーストになろう』という想いは今も持っています。周りが真似してくれなかったカメラスリングですが、お世話になっている代官山北村写真機店の店長・須藤達也さん(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社)とアートディレクターの菊池美範(株式会社エイアールディー)さんの二人だけは、『これは商品になるよ』 って言ってくれたんです。そこから最短での商品化を目指して、いろいろ準備を始めました。

――制作と違って、商品化、起業となるとやることも変わってきますよね。
 
杉山 はじめの1年は個人事業主で、1年前に法人化しました。起業するにしても、手続きやら何やらは全てネットで調べたんです。商品化に踏み切ってから、半年後には代官山・北村写真機店に10本置いてもらってそこからすべてが始まりました。

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起業準備中は誰とも会わず、ブレないことを最優先

――起業に当たって誰かの助言を得られたのでしょうか?
 
杉山 それが、起業の準備期間はできるだけ人に会わないようにしていました。人に会わない方が、やりたいことができる。人に会うとどうしてもアドバイスや心配、不安に寄りかかってしまう。自分がブレちゃうと思ったので、本当にあの期間は家から極力出ずに準備を進めていました。

――一番身近にいる旦那さんの反応は?
 
杉山 しばらく渋い顔をしていました(笑)。「保育士でいいじゃないか」と。カメラとか外の世界に目を向け始めたときに『35歳までは好きなことをして良い。けど、35歳からは正社員で働いて』と言われていたんです。働くのはそのつもりでしたけど、夫が想定していたのは保育士としての正職でしょうからいきなり起業というのはちょっと違いますよね。

――今はどんな感じなのですか?
 
杉山 もともと家事は私よりできる人だったので(笑)、本当に助けられています。どちらの役割というよりも主人のペースで家が回っている感じなので、いまの仕事をしているからどうというのはないと思います。この前も海外出張から帰ったら観葉植物が増えていて家がすごくきれいになっていたんです。私がいない方が片付くって(笑)。

――起業して気がついたことありますか?
 
杉山 自分で制作をして気がついたことなんですけど、 “一点もの”の価値ですよね。ハンドメイドで全部つくっていると、同じものを10本作る方が難しいし、私には退屈で苦痛なんです。だからSAKURAカメラスリングも一点、一点柄が違う。工業製品としての流通を考えると、定番商品があって、同じ製品が並んでいた方が品番で管理できたりメリットも大きいのですが、一点もののほうが自分にとっては魅力的なんです。そのことに私は、マーケティング論やPR論を通してでなく、自分の生活の中から気づき、学びました。私たちの生活でもそうだよな、と。お母さんの手作りのもの、たとえばお弁当だって一点ものですよね。

それと、社会に出てみて感じるのは女性も男性もやっぱりすごいんだということです。金銭的な面は別にして、女性も実は社会的に価値が高いことを家の中で当たり前にやっています。だから、SAKURAスリングは、男性でも女性でも「カメラを持って出かけるモチベーションになる製品」でありたいと思っています。

<了>


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