2017/03/21 公開

「カメラを持つモチベーションに」SAKURAカメラスリング・杉山さくら

「働く女性」の未来像

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社会に出てみて感じるのは女性も男性もやっぱりすごいんだということ

赤ちゃんの『抱っこひも』から得たヒント

――はじめに、現在の杉山さんが何をされているのか?カメラスリングとは何なのかを教えてください。
 
杉山さくら(以下、杉山) 一言で言うとストラップです。SAKURAスリングは幅広の布を使った、ストール状のストラップで、カメラの重さを分散して首や肩にかかる負担を軽減する構造になっています。

自社製品であるSAKURAカメラスリングを身につけながら、笑顔でその利点を語ってくれる杉山さんは、このアイディアを武器に起業を果たしました。当初は「起業なんて夢にも思っていなかった」という杉山さん。これまでの道のりは、大きな変化の連続だったと言います。

――ストール状のカメラスリングである『SAKURAスリング』を思いついたきっかけは何だったのでしょう?
 
杉山 直接的に『これだ!』とひらめいた瞬間は、子育てがある程度落ち着いて、フィルムカメラで写真を撮り出した時のことでした。当時の愛機はライカR6.2という写りも素晴らしいのですが、重さも女性が持つには素晴らしいもので、とにかくずっしりしていたんです。カメラの重厚感に合わせて革のストラップをしていたんですが、これがどうにもしっくりきませんでした。

冬にカメラを持って外に出たとき、斜めがけしていたストラップとコートが触れている部分が毛羽立っていることに気がつきました。コートが傷つくって困りますよね。温かくなって薄着になったらコートの代わりに革紐が直に素肌に触れることになります。これが嫌で、革紐のストラップに自前のストールをクッション材として巻き付けて使っていたんです。

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――たしかにカメラの重さは女性に限らず「どうにかならないかな」という悩みですよね。
 
杉山 そんなときに、子育て中に散々お世話になったベビースリングの存在を思い出したんです。『あ、ベビースリングって布だったじゃん』って。これをどうにか応用できないかとすぐに革紐の革の部分を外して幅広の布1枚をカメラにくくりつけてみたら、これがとても楽でした。革紐に限らず、従来のストラップでは重さがダイレクトに伝わってきていたものが、一枚布では広い面積に分散されるため本当に軽く感じたんです。

――ベビースリングの中には、人間工学に基づいて設計されているとうたっているものもあります。
 
杉山 自宅で初めて布のストラップを身につけたとき、人生で4回目の “特別な感覚”に襲われたんです。ハッと一回心臓が止まって、一瞬沈黙したあと急に動き出したような感覚。血液が体中に一気に流れ出るみたいな……。それより前の3回は子どもたちの名前を決めたときです。私には3人の子どもがいるんですけど、生まれてくる子どものために名前を考えていると決まって『この名前しかない』という名前がフッと天から降りてくるんです。『生まれてきたらこの子をこの名前で呼ぶ』、出会うべきものに出会った感覚っていうんですかね。それと同じものを感じたんです。

――それがSAKURAカメラスリングだったわけですね。運命のアイディアが、3人のお子さんの子育てのサポートをしてくれたベビースリングにルーツがあるのも面白いですね。
 
杉山 ベビースリングは生地が柔らかくて、薄いのに丈夫なんです。赤ちゃんを落とさないように作られているので当たり前ですが、耐荷重がすごい。お世話になったお母さんならわかってくれると思うのですが、腰や肩への負担も少なくて、子どもが「包まれている」という安心感がすごくあるんです。

――そこからSAKURAスリングの制作が始まるわけですね。
 
杉山 『これだ!』と思いついてから、まずは全部手作業で作ってみることにしたんです。実はお裁縫が得意とか、手芸をやっていたとか、『作れるからやってみよう』というのでは全然なくて、とりあえずこのアイディアを形にしたいというのが原動力でした。

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ノウハウゼロから制作へ 頼みの綱はネットと“ママ友”

 
杉山 生地の縫製の仕方はYouTubeの動画を片っ端から見て試行錯誤しました。ミシンの使い方も学生時代に少し習ったくらい。検索で引っかかった質問サイトのベストアンサーを参考にしたり、知っていそうな人に聞いたり。どんな素材が最適かを検討するときは、スタイリストをやっているママ友に助けてもらいました。

生地の強度や耐荷重、発色、色落ちしない、洗濯可などいくつもの条件を挙げて、ママ友が教えてくれたのがポリエステル。「水着と同じ素材だから」と言われて納得しました。このほかにもいろいろな職業のママ友がいたので、知っていそうな人にとにかく聞いていました。運動会の合間に駆け寄って話を聞いたりしてましたからね。

――はじめは自分で使うために作っていたんですか?
 
杉山 自分で使ってましたね。その当時は誰もつけていないストラップ、つまり「布」をカメラにつけているわけですから、恥ずかしいのもあったと思います。周りの人にも『真似して良いよ』と言っていたんですが、誰も真似してくれず(笑)。それでも自分が使うためだけの試作品で満足しなかったのは、高校で金属工芸を勉強していたことも関係あるのかもしれません。金属を加工した小物作り程度ですけど、製品を作るプロセスは知っていました。「ものづくりに大事なことは身につけた、きっと大丈夫」って思っていたところはありました。

――そこから製品化、起業につながっていくわけですが、製品化のきっかけは?
 
杉山 その前にカメラの話をしなければいけないですね。写真の話です。元々カメラスリングを作るきっかけになったのは、自分が重いカメラを持ち出して写真を撮るようになったからです。起業はカメラを趣味にするようになったこととリンクしているんです。

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