2016/03/09 公開

7社内々定「プロ就活生」が証言。大手外資系人事から受けた熾烈な“オワハラ攻防戦”の実態とは

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就活生を悩ませる「就活終われハラスメント」、通称「オワハラ」をご存知でしょうか。オワハラとは、企業が就活生に対して内定を出すことを条件に、他社の選考を辞退するよう強要する行為を指します。

7社もの企業から内々定を勝ち取ったという「プロ就活生」、Y君もまたオワハラを受けた1人でした。

就活を続けたいY君と、優秀な彼を何が何でも採用したい外資系企業のA社。両者が繰り広げた熾烈な攻防戦について、当事者であるY君本人が赤裸々に語ってくれました。

内々定の知らせはただ一言。「来ていただきたい」

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―まずはA社との間に起きた出来事のきっかけをお聞かせください。

Y君:4年生の4月、A社から内々定をいただきました。しかしその時点では「来ていただきたい」という一言で、「内定を出す」など核心をつく言葉や、内定通知書のような言質はありませんでした。

 

―2015年は内定を出せるのが8月1日以降という決まりがありましたからね。その頃から何か追いつめられるような雰囲気は感じていましたか?

Y君:いえ、最初は全く感じませんでした。まさか僕の身に起きるとは思っていませんでしたし、仮に「オワハラ」が来ても何とかなるだろう、と楽観的に考えていました。

 

ーでは、その後にじわじわと「オワハラ」の予兆が出てきたのでしょうか。

Y君:そうですね。オワハラをする企業があることは噂には聞いていたものの、その内容までは知らなかったので内心「就活を続けたければ続ければいいのに」と思っていました。しかし“物理的に就活を続けることを阻止してきた”のには驚きましたね。



~2015年6月。突然勃発したA社との攻防戦~

Y君は面接を受けた時、純粋な気持ちから「第一志望です」とはっきり伝えていました。しかしこの2ヶ月後、彼とA社による“オワハラ攻防戦”の火蓋が切って落とされることに……。

通常だと4月1日より開始していた面接時期が、8月1日に後ろ倒しされたことも記憶に新しい2015年。それによってできた期間に、Y君は「本当にこの会社で良いのだろうか」と考えるようになったそうです。

6月に入ったある日、Y君は「内定者研修」についてA社からメールを受け取ります。

 

Y君:内々定者は参加必須の研修が8月1日から数日間続くことを知った時、他の選考が受けられない。どうしよう。と焦りました。8月の始めには重要な面接が詰まっていたのです。

優秀な学生を囲い込みたい人事部vs挑戦し続けたいプロ就活生

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―就活生が他の企業の選考を受けられないようにする、いわゆる「囲い込み」ですね。

Y君:1日くらいなら学校行事などを理由に休めるんじゃないか?と考えましたが、向こうは百戦錬磨の人事です。どんな言い訳をしても見破られる可能性が大いにありました。困った末に、学校のキャリアセンターに相談することにしたのです。

 

―キャリアセンターと相談して、どのような結論になったのですか?

Y君:どうしても他社の選考に挑戦したかったので、A社に状況を伝え、「他社の選考を受けさせてください!」と真っ向から勝負しようと決意しました。その後、企業に伝えるためのシミュレーションを「圧迫」、「強い圧迫」、「優しい」と3つの状況で想定して、練習させていただきました。

内定については僕自身だけではなく、これから選考を受ける友人や、後輩にも不利に働くのではないかと考えていたので不安でしたね。

 

―そしていよいよA社に自分の考えを伝えるのですね。

Y君:はい。「ご相談したいことがあります」とA社の担当人事の方にアポを取り、お話させていただくことになり、話はこのような感じで進みました。

~A社人事との正面対決~

Y君:「選考を受けていた時は御社が第一志望でした。しかしこの数ヶ月で本当にやりたいことは何なのだろうと考えていくうちに分からなくなってしまいました。どのように生きていくのか、他社の選考を受けてから考えたいと思います」

人事:「それって……弊社をキープしておきたい、ということですか?

Y君:キープとは?

人事:「……。」

Y君:「他社の選考を受けてはだめですか?」

人事:「……弊社としては、コミットメントの高い学生に来ていただきたい。

Y君:コミットメントとは?

人事:「…………」

Y君:「僕の人生のキーワードは挑戦です。やらないよりもやって後悔する。このまま他社に目を向けることもせずに御社に入社を決めたとしたら、きっと心にわだかまりを抱えてしまうはずです。だからこそ全力で挑んで、検討した後に決めたいと思います」

人事:「分からなくもないけれど、他社を見るというのはOB訪問でもできるのでは?」

Y君:「しかし、面接という緊張感のある場で初めて分かる企業の良さもあります」



Y君の話に担当人事の心が動き始めた頃、新たな局面を迎えます。なんと、もう1人別の人事がやってきたのです。

後から来た人事:「君にとって弊社が1番ではないのなら、決して楽な仕事ではないし、だったら1番来たい人に来てもらいたい

2人の人事と話し合ううちに、少しずつ相手の表情が曇っていくのを感じ取ったY君。このまま続けたら内定後にも不利になるのではと危機感を持ち、一旦冷静にならなくては、と考えたそうです。Y君は「両親とも話したい」、と時間をもらえるよう申し出るのでした。
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Y君:「時間を置くのは構わないけれど、1週間以内に返事をください」と念を押されました。

 

―ちなみにご両親はA社についてどのように仰っていたのですか?

Y君:両親は「自分の好きなようにしなさい」と僕に任せてくれていました。母親は「良い会社だとは思うけれど、あなたには合わないのでは」とも言っていました。

 

―改めて返事をする、ということになりましたが、それからはどう行動されたのですか?

Y君:再度キャリアセンターに相談しました。選択肢としてはこの4つを用意していました。

・他の企業の選考も受けます、と宣言する
・素直に他社を受けずに内定をもらう
・こっそりと選考を受ける
・研修には行かずに保留にする

企業は選考が始まる8月1日以降でないと内定通知書を出せないと決まっていたので、A社の内定者は研修の最終日に内定書を貰えるといった状況でした。

ベストなのは「研修には行かずに保留する」でしたが1日考えてそれができなかったら辞退しようと決意しました。それからはまたキャリアセンターの方とのシミュレーションを重ね、電話で担当人事の方に伝えました。

 

―再度、人事へ気持ちを伝えたところ、どうなりましたか?

Y君:何を言っても「研修に来なければ内定が出ないとは言えないけれど、出る保証は無い」と、10分くらい堂々巡りでした。

「蹴るはずは無いだろう」という前提で話が進んでいたことからA社への印象が変わり、結果お断りさせていただきました。

 

―そうでしたか……。それから再び、就活を始めたわけですよね。

Y君:それからは就活に打ち込む熱が上がりましたね。説明会で出会った人を通じてとにかくOB訪問をするなど、レベルアップした就活をするようになりました。

 

―A社とはその後、何かありましたか?

Y君:A社にはその後お礼のメールを送りましたが、返事は来ませんでした。オワハラを実証するためには、言質をもらう、電話や会話を録音するなど“証拠を得ること”が大切だと思います。僕は「8月1日に内定を出す」の一言を貰いたかったのですが、やはり向こうが上手でした。

 

―オワハラに悩む就活生が注意すべきことはありますか?

Y君:意図的に感情的にならず、冷静になること。また、不利になることは言わないことですね。

 

立場の違いを利用した「オワハラ」は長い目で見たらマイナス

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「A社はとても憧れていた企業だったので、正直この出来事は残念でなりませんでした……」

インタビューの最後、Y君が寂しそうにこう言ってたのが印象的でした。採用の場も一種の会社のPR活動。立場の違いを利用してオワハラのような行為をすることは、お互いにとってマイナスにしかなりません。

「優秀な学生を採用したい」という企業側と、人生の大きな選択を迫られることになる就活生。

両者共に、気持ち良く終われる採用活動を目指したいものです。

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マネたま編集部
「現場視点から考えると、マネジメントがもっとオモシロクなる」をコンセプトに、マネジメントに関する情報を発信していきます。