【後編】「モヤモヤしたときは中二のときの俺と語り合うようにする」・サイプレス上野

失敗ヒーロー!

2017/10/31
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俺たちは誰の下にもつかない〈迷い子〉だ

―― 御著書『ジャポニカヒップホップ練習帳』を読んでいると上野さんは環境が良かったんだろうなと思うばかりです。人と出会うことで、自分のなかの糧になってるものってあると思うのですが、良い影響の受け方っていうのはご自身のなかで何かあったりしますか?

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1980年生まれ。横浜市戸塚区の横浜ドリームランドで青春時代を過ごす。近隣団地のドリームハイツに住む先輩・後輩でサイプレス上野とロベルト吉野を結成。2007年 1stアルバム『ドリーム』が話題に。一気にインディーズヒップホップシーンの寵児となる。2015年にはテレビ番組『フリースタイルダンジョン』のモンスターとして活躍。フリースタイルでの暴れぶりが話題となり全国的にその名を轟かす。2016年に自伝的エッセイ『ジャポニカヒップホップ練習帳』を双葉社から刊行。2017年9月6日ミニアルバム『大海賊』でメジャーデビュー。

サイプレス上野(以下、サ上) 俺とロベルト吉野の特異的な点っていうのは、誰の下にもつかなかったところなんですよね。誰かの色に染まるのが嫌だったので。それが大きかったですね。だからこそ、いろんな人の意見を尊重できるし、関わりたくない人とは関わらない。俺たちは〈迷い子〉なんですよね。

――〈迷い子〉だからこそ影響を受けるか受けないか自分たちで選べるわけですね。逆に悪い影響を受けてる人も見てきましたか?
 
サ上: 同世代でかっこ良かった奴が、誰かの下についてダサくなっていくのはけっこう見ましたね。嫌だなぁって思ってました。宗教みたいなものですからね。べったりくっついて、その人の色に染まって。

―― 先輩たちに負けたくないっていう気持ちもあったりしましたか?
 
サ上: それはめちゃくちゃありました。食ってやるぞって気持ちで、前座とかも出て行ったりするし。俺たちの方が絶対に今ヤバイことやってますんでっていう気持ちは常にありましたね。

――上野さんはこれまでもコラボレーションによって新しいヒップホップの領域を切り開いてきました。自分と他人を組み合わせて相乗効果を作り出す秘訣があれば教えて下さい。
 
サ上: まず一番大切なのは、一緒にやってて楽しい人だっていうこと。知らない人とはやらない。別にべったり昔からの友達じゃなくても良いんですけど、ちゃんと魂が通っている人が良いですね。例えば、一回酒を酌み交わしたりとかして相手を知ることが大事です。

―― じゃあ自分たちとのフィーリングが合わなければコラボレーションには至らない?
 
サ上: 無理にやる必要はないですね。相手の名前とか全く関係ないっす。まぁ、桑田佳祐クラスがやってくれるとかいったら、話は別でしょうけど(笑)。意外と二つ返事でやっちゃったりして(笑)。

――『フリースタイルダンジョン』を経て、ご自身はどう変わられましたか?

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サ上: 自分としてはあまり変わってないんじゃないかと思っています。まぁ、街を歩いてて顔を指されたり、声かけられたりすることが増えたので、見てる子が増えたんだろうなっていうのは感じますけど。でも、俺たちが『フリースタイルダンジョン』の方に向かってフィットしようとしたっていう感じではないですね。番組が始まる前からとっくにバトルには出てるので、その気持ちでやってるだけかな。

―― 自分たちがやり続けてきたことの延長に『フリースタイルダンジョン』がたまたまあったわけですか?
 
サ上: そうですね。影響とは違いますが、今ってネットでも見ることができたりするわけでしょ。そうすると、どんどん広がっていくから、負けが込んできたら、ちょっと落ち込んだりはします。でも、それは特別なことじゃない。ライブがうまくいかなかった時の方がもっと落ち込みますし。

――『フリースタイルダンジョン』以後、ヒップホップを取り巻く社会の状況はどのように変わりましたか?
 
サ上: 大きく変わってると思うんですよ。あれだけみんなが興味を持ってみてくれたんだから。ただ、いろんなブームにも言えることなんですけど、フリースタイルだけがもてはやされてるのは違うなって思います。昔の、ボイスパーカッションとヒューマンビートボックスみたいなものですね。あの頃、ボイパやってる奴だけがすごいチヤホヤされたでしょ。でも、ビートボクサーで芯の通ってる人間もたくさんいましたから。文化的なものをちゃんと踏まえてるんですよね、彼らは。だからかっこいいんですよ。

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サ上: それと似たような状況が今のヒップホップにはあります。よく、「俺もサイファー(公園や広場でラッパーが集まってフリースタイルをすること)やってラッパーになりたいんです」って言われるんです。サイファーやってラッパーになりたいってどういうことなんだろうなって(笑)。別に名乗れば誰だってラッパーだよ、みたいな。どこでもサイファーやってるし、勝手に行けばよくない? いちいち俺に断ってやることでもないし。

―― そこら辺の感覚が鈍くなってる人が多いんですね。
 
サ上: 今、サイファーやってる人はクラブに行かない人が多い。やんちゃじゃないんですよ。確かに、クラブは昔に比べたら締め付けが厳しくなっていたりします。でも、俺たちはそういうのかいくぐって、中には入れなくても、外で年上のラッパー待ってて、テープ渡して聴いてくださいよってやってた。めんどくせえなって言われれば、じゃあ今聴いてくださいってその場でラップしたりしてましたからね。

――『フリースタイルダンジョン』の功罪として簡単にアクセスできるようになってしまったってことがありますね。
 
サ上: デカイ会場でその子たちがやろうとしている気持ちがあるのかなって思うんですよ。確かに、どこでもやれるから手軽でいいとは思うんですけど、それは遊びとしては便利なだけで。本気で大きな舞台でやりたいって考えてる人がどれくらいいるのかなって。例えば、俺が横浜で始めた時はベイホールをパンパンにするのが夢だったから。そういうのないのかなって思いますね。

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サ上: こないだも戸塚でサイファーやってるっていうから、ヒップホップ仲間の漢くんを連れて行ったんですよ。そしたら、そこでサイファーやってる子たち、怖がって出てこなくて(笑)。やべえ本物だよ……みたいな(笑)。ヒップホップやってる奴らって前に出たがりな奴らが多いイメージじゃないですか。なのに、隅っこにへばりついちゃってて。いや、本物を食うのがお前らの未来なんじゃないの?って思いましたね。

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