2017/06/14 公開

「弟子入り!マネたまくん」三遊亭王楽

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東京都台東区 演芸場「池之端しのぶ亭」

今回弟子入りさせていただくのは……

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落語家 三遊亭王楽
父は『笑点』でお馴染みの三遊亭好楽師匠。同じく『笑点』で司会を務めた落語会の至宝、故・三遊亭円楽師匠に弟子入りし、好楽師匠とは親子でありながら兄弟弟子という間柄。円楽師匠からは、27人いる弟子のうち最高となる10の演目を直々に師事され、入門の2001年から8年後の2009年に真打ち昇格。師匠仕込みの古典落語はもちろん、現代的なエッセンスを盛り込んだ新作落語も発表する、落語界の寵児にして、新人類とも言うべき逸材です。

芸事は一生精進!師匠の懐に飛び込むには?

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「落語家に弟子入りなんて、企画とは言っても恐れ多すぎる……」と緊張気味のスタッフとは対照的に、王楽師匠は落語についてご自身の経験を交えながら気さくにお話しくださいました。

三遊亭好楽師匠

落語っていうのは、なんとも上下関係の厳しい世界です。師匠のお世話や雑用が主な仕事の「前座見習い」から始まり、ようやく舞台に上がれる「前座」に「二ツ目」という階級を経て、寄席のトリを飾る「真打ち」に。バラエティ番組でよく聞く「師匠!」というのも、真打ちだけに許される呼称というワケです。

私は、この階級をタタタッと駆け上り、真打ちまでにかかった年月は約8年。平均と比べれば早く、“スピード出世”とも言われましたが、それは違う。単に私が入門した三遊亭一門の慣習で、他の一門より早かっただけのこと。真打ちとなれば、いわば一人前。お客さまの見る目が厳しくなるのはもちろん、力量を試すコンテストにも出られない。「もっと芸を肥やす機会がほしい」と、早すぎる昇進を恨んだものです。

しかし、芸事は一生精進。どこで芸を肥やすかと言えば、多くがお師匠さんを囲む宴の席です。最近は「飲み会は嫌いだ」なんて若者も多いようですが、いかがなものか。緊張の場に身を投じてこそ、学びが身につく。とりわけ伝統芸能の落語において、弟子は師匠のDNAを受け継ぐ子孫。宴の場は、独り立ちしてもなお、師匠の懐に飛び込める貴重な機会。飛び込みさえすれば“親と子”の関係に戻り、師匠に尽くすための宴の席が、師匠から与えられる学びの席になるのです。

さあ、いよいよ弟子入りです!

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まずは、ご披露いただきました。甘いマスクに穏やかな語り口の王楽師匠ですが、落語に身を投じた瞬間、別人が憑依したかのよう。たった一人で演じているはずが、目配せの距離感と口調の妙が、そこには存在しないはずの“もう一人”を生み出します。

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身一つであらゆる場の空気を表現する落語ですが、使用する数少ない道具が扇子と手ぬぐいです。それゆえ門外漢からするといかにも貴重なものと思いきや、王楽師匠曰く「例えば扇子は、そばを食べる箸になったり船をこぐ艪(ろ)になったり。とりわけ舞台では強く握るものですから、私らからすれば消耗品ですよ」とのことです。

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さて、今回教えていただくのは、道具をいっさい使わずに表現する“酒の注ぎ方”です。「宴の席は学びの席」という王楽師匠ですら「つい最近宴の席で師匠から『お前、ちょっと注いでみろ』と言われて、見直した」いわば“難題”です。

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三遊亭好楽師匠

例えば、栓を開けたばかりの一升瓶ですと、ほんの少し傾けるだけでお猪口がいっぱいになるでしょう? この一升瓶には、どれほど酒が入っているのかまで再現してこそ、お客さまの前には“ない”はずの一升瓶が浮かび上がります。

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王楽師匠の教えに従っていざマネしようとしてみるものの、これがやっぱり難しい。仕草を再現することばかりに集中してしまって、角度や重さを考える余裕なんてまるでありません。

三遊亭好楽師匠

話の本筋ではないけれど、まずはこれができないと、お客さまを引き込ませられないですよ。慣れれば誰にでもできますよ。

そんな師匠のお言葉に、早くも撃沈ムードが漂います。

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試行錯誤を重ねるものの一向に上達しないスタッフを見かねたのか、王楽師匠から「栓を抜いたばかりの一升瓶は重くて当然です。握れば手首にスジが出るでしょう?」という鋭いご指摘。その細かな視線に細部に宿った芸の魂を感じます。

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しかし、師匠からのアドバイスも虚しく、頭が混乱して上達しないマネたまスタッフ。いかにも「筋」が悪いようで……。

三遊亭好楽師匠

これがお客さまを前にすると、緊張もひとしお。だからこそ緊張する場に自ら身を投じ、緊張になれることも芸を肥やすことに欠かせないんです。

笑顔でそうおっしゃる王楽師匠の姿に、落語の“深み”を垣間見たような気がします。

“宴の席こそ、学びの場“ということを忘れない

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今回、恐れ多くもマンツーマンで、落語の一端に触れさせていただきましたが、この距離感は、実際の稽古でも同じとのこと。

三遊亭好楽師匠

師匠の前でも緊張するし、お客さまの前でも緊張するし、『人に聞かれている』と思うと、たった一人で落語の稽古をしていても、いまだに噛んでしまうほど緊張します(笑)。
人前で芸を見せる。この緊張に打ち勝つには、やはり稽古しかありません。
体に染みつくほど細かな仕草を繰り返し、その上で、緊張という空気に慣れる訓練を重ねます。

そんなお話しを聞けば、「芸事は一生精進」というお言葉も、「師匠を囲む宴の席こそ、学びの場」というお言葉にも納得です。「飲み会は嫌い」なんて、言っている場合じゃないのかも?

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