坂本美雨 人間の魅力は“ダメな部分”にある【前編】

失敗ヒーロー!

2019/09/18
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華々しい成功の裏には、失敗や挫折がある。その失敗エピソードから成功の秘訣をヒモ解く『失敗ヒーロー!』。今回はミュージシャン、ラジオパーソナリティとしても活躍する一方で、一児の母としても奮闘中の坂本美雨さんが登場。「娘を多くの大人にふれさせていきたい」とおっしゃる坂本さん流の子育てには、仕事と育児を両立させる秘訣が隠されていました。

大人のダメなところも、子どもに見せていきたい

――大変お忙しいご両親(ミュージシャンの坂本龍一さんと矢野顕子さん)の元に生まれた坂本さんですが、幼少期の体験が現在の坂本さん自身の子育てに影響していると感じることはありますか?

坂本美雨(さかもと・みう)
1980年5月1日生まれ。東京都出身。9歳の時に両親が音楽活動の拠点をニューヨークに移したことをきっかけに家族で移り住み、10代をニューヨークの郊外で過ごす。1999年に映画「鉄道員」の主題歌、「鉄道員(TETSUDOIN)」をリリース。同年9月、フルアルバム「DAWN PINK」で本格的に音楽活動を開始。2015年第一子誕生。ソロ活動に加え、シンガーソングライターのおおはた雄一氏とのユニット「おお雨(おおはた雄一+坂本美雨)」として多くの音楽フェス等に出演中。2018年より児童虐待防止活動「#こどものいのちはこどものもの」を開始。

坂本美雨(以下、坂本):大きく影響していますね。父も母もとても忙しく、家にいないことは日常茶飯事。私の育ての親とも言える2人のベビーシッターさんをはじめ、両親それぞれのマネージャー、レコード会社の方々、父の運転手さんなど、本当に多くの大人に囲まれて成長しました。だから自然と私もそういう風に子育てしていますね。

――お子さんをお仕事の現場に連れて行くこともあるとか。

坂本:今思えばもう少し長く仕事をお休みすればよかったんですけど(笑)。産後2ヶ月でラジオの仕事に復帰したんです。収録中はシッターさんに別室で娘を見てもらって、収録の合間に授乳してましたね。娘も私と同様、生後2ヶ月からシッターさんや私のマネージャー、ラジオ局のスタッフなど、たくさんの大人に囲まれて成長しています。大人になった時に覚えているかはわからないですけど、「お母さん、仕事になるとちょっと声が変わるな」とか、そういった仕事の緊張感はきっと感じていると思うんですよね。「このタイミングでお母さんに声をかけちゃいけないな」とか。小さな子どもでも状況を読み解く力が自然と身についている気がします。娘に気を遣わせて申し訳ないなと思う時もありますが、大人になった時に必要な力ではありますよね。

――子どもって意外とそういった空気を読む力が強かったりしますよね。たくさんの大人に囲まれて育つことのメリットとは?

坂本:私の場合は、小さいころから両親のライブに行っていたので、ひとつのステージを作るにはさまざまな人が関わっていることを学びましたね。両親はステージに立って脚光を浴びる存在ですけど、その舞台裏には証明や衣装、演出などさまざまな職人さんがいる。その技術の素晴らしさやみんなでひとつのものを作る喜びを子どもながらに感じることができました。

例えばヘアメイクさんの場合、母を美しくしてくれる華やかな職業に見えて、裏側では大量の道具を運んでいる。実は力仕事でもある職業なんですよね。そういう華やかな世界の裏側を小さいころから見れたことは、私にとってすごく大切な経験だったと思います。目立つことだけが美しいわけではないですから。

――幼少期からそういった仕事の現場に触れることは貴重な体験ですね。

坂本:他にも、大勢の大人に囲まれていたことで、大人のダメなところや狡猾なところも 小さいころから肌で体感してきました。一見ダメな大人でも魅力的な部分は必ずあるんだなと子どもながらに思って。だから自分の娘にも、幼いころからある意味大人のありのままの姿を見せて「どんなに自分がダメだと思っても、魅力は必ずあるから大丈夫」と感じてもらいたいです。

人に頼るコツは、前向きに堂々とすること

――ミュージシャンとしての活動に加えて、昨年から児童虐待防止の活動も始められました。お忙しいなかで、子育てと仕事をどう両立していますか?

坂本:もう任せられるところは任せちゃっています。シッターさんはもちろん、ライブで地方に行く時は、主人が子どもと一緒に過ごしてくれるのでとても助かっています。3日目くらいになるとお手上げらしいですけど(笑)。子どもと遊ぶのが好きな人がいたら、遠慮なく一緒に遊んでもらう。少しの時間でもホッとできますよね。

――遠慮なく頼るのって意外と難しいんですよね…。何かコツはありますか?

坂本:例えば、誰かに娘と遊んでもらうと、その人と娘の間に関係性が生まれますよね。その関係は娘が得するだけじゃなく、その大人にもいい効果が生まれると私は信じているんです。今の日本は「子どもの責任は親にある」という風潮があるから、子育てを人に頼ることに罪悪感を感じてしまう人は多いかもしれません。でも、大人側が子どもから受けるいい刺激というのもあると思います。

――甘え下手なお母さんたちにアドバイスをするとしたら?

坂本:う〜ん。人に甘えるって結構難しいんです。でも、「もっと堂々としていいんだよ」とお母さんたちに伝えたい。例えば、ベビーカーで電車に乗る時も、ビクビクしすぎていると周りの人たちもちょっと壁を作ってしまうと思うんです。でも、明るく堂々としていればきっと周りの人たちも心を開いてくれるはず。

娘のシッターさんはこれが自然とできる人なんです。ラジオ局の他の番組のスタッフや守衛さんにも「今赤ちゃんがいますよ」という雰囲気を堂々と出していたんですね。そうすると、だんだんと周囲の人たちが「赤ちゃんって意外とうるさくないんだな」といい面を見てくれるようになったり、「大きくなったね」と声をかけてくれるようになりました。図々しくなるのではなく、前向きな堂々とした姿勢でいれば意外と周りも受け入れてくれます。

――「育児と仕事のどちらかを選択しなくてはいけない」と悩んでしまう女性も多いと思います。坂本さんは妊娠中に「子育てでやりたい仕事ができなくなるかもしれない」と不安を感じることはありましたか?

坂本:私は子どもが欲しいと思って結婚したので、その迷いは全くありませんでした。歌う仕事は身ひとつでいつでも始められるので心配や焦りはなかったです。でも、それはミュージシャンという職種だからであって、オフィスで働く人とは少し状況が違うとは思いますが…。

それでも、ちょっとずつ仕事と子育ての新しい形を作れるのではないでしょうか。「いつ出産して、このタイミングで保育園に入れよう」と思ってもパズルのピースのようにピタッとはまることはない。子育てって基本的に行き当たりばったりだから、独身時代のようにひとつずつ課題をクリアしていくことは不可能に近いです。だから、子どもの成長に合わせて、働き方も少しずつ変化させていけたらいいですよね。そのためには自分が何を最優先にするか決めて、その最優先事項を実現できるように進むしかない。場合によっては仕事を辞めるという選択肢もあるかもしれませんが、会社や地域の福利厚生に頼ったり、上司に働き方の提案をしてみたり、工夫することをやめなければ解決の糸口はきっと見えてくると思います。

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