2016/10/31 公開

新任マネージャーは絶対覚えておくべき! 今の新卒採用のリアルとトレンド

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2016年3月、経済三団体の一つである経済同友会が、『新卒・既卒ワンプール/通年採用』の定着に向けて」という提言書を公表しました。

ここでは、既卒者を新人として通年で採用する、新卒者・既卒者をワンプールで新人として一括採用するなどにより、「今の『ワンチャンス就活』を変革する」ことがうたわれています。そして、あくまで例示ではあるものの、採用・入社時期は各社の事情により適宜設定すること、採用人数が一定数まとまった段階で新卒者・既卒者合同の入社時研修を行なうことなど、現在多くの企業がとっている「新卒採用~新人導入研修」のありようとは大きく異なった方向も呈されました。

果たして日本の新卒採用は、この提言にあるような姿へと変革していくのでしょうか。また、それはいったいどれくらいの時間軸で進むのでしょうか。

すでに変わりつつある「新卒一括採用」

既卒者を「新卒扱い」するという方向性が示されたのは、今回が初めてではありません。

日本の科学者の内外に対する代表機関である日本学術会議がまとめた「大学教育の分野別質保証の在り方について」の中で、企業の採用における新卒要件の緩和がうたわれ、当面達成すべき目標の一例として「卒業後最低3年間は、若年既卒者に対しても新卒一括採用の門戸が開かれること」が提示されたのが2010年夏。同年11月には厚生労働省が、卒業後3年以内は「新卒」として企業に応募できるよう、「青少年雇用機会確保指針」を改正しました。

それから6年。企業の新卒採用における実態はどうでしょうか。

就職みらい研究所の『就職白書』を見ると、2016年卒採用において、既卒者(大学・大学院卒業後3年以内)の採用を「実施した」と回答した企業は全体の24.6%。特に従業員数5,000人以上の超大手企業でその割合が高く、47.4%と半数に迫る勢いだったのです。

図1:2016年卒採用における既卒者採用の実施率(N=779)就職白書2016より
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他でも、「通年採用」は20.3%、「夏採用」は18.1%、「秋採用」は19.5%がそれぞれ「実施した」としており、新卒採用の時期はすでにある程度多様化していることが分かります。

図2:2016年卒採用における各種採用手法の導入率(N=779)就職白書2016より

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また、新卒一括採用と言えば、大学等を卒業予定の人が一まとめで「総合職」として就社し、ローテーションを繰り返しながら終身働くイメージを持つ人も多いと想像しますが、こちらの実態にも変化が見られています。「職種別採用」を取り入れている企業は新卒採用実施企業の64.4%、「部門別採用」は13.5%、「コース別採用」は19.9%。また「地域限定社員の採用」は10.8%、「アルバイト等からの社員登用」は6.3%と、入社経路も複線化しているのです。

図3:2016年卒採用における各種採用手法の導入率(N=779)就職白書2016より

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背景のキーワードは「グローカル」

日本の新卒採用は、なぜこのような変化を見せているのでしょうか。

各企業の置かれている状況や、その中で貫きたい信念などは、企業の数だけ存在することは大前提ですが、要約すれば「かつてない人材難」が立ちはだかっているということに尽きるのでしょう。

グローバル経済・社会化が進む中、競争環境は激化の一途を辿り、企業の人材期待はより高度化・細分化している。一方で我が国はすでに人口減少フェーズに突入しており、若者自体が少なくなる中でよりよい人材を獲得する難度も高まっています。

こうした内外の大きな環境変化を、半世紀も前の高度成長時代に築かれた日本型雇用システムを維持したまま乗り越えられるはずもありません。

たとえば約8年前。世界的な好景気の中、大卒求人倍率はバブル期以来16年ぶりに2倍を超える高水準に。業種・規模によらず全方位的に求人意欲が高まる中、1つのトレンドがあらわれました。それが「女性積極採用」です。それまで女性を敬遠しがちだった土木建築の現場や、不動産など取扱金額が極めて大きい営業職などでも、女性専属チームをつくるなどして心理的な敷居を下げ、女子学生たちの注目を集めようという動きが顕著になりました。

このような“特別チーム”の発足は、実は容易ではありません。社内野党と向き合い、丁寧にコミュニケーションしながら、一部社内の規定なども変更して実現されているのです。

たとえば約6年前。リーマン・ショックの影響で企業の採用意欲がぐっと冷え込んだ時期、各社の関心は「グローバル人材」へと向かいました。日本で学ぶ外国人留学生、海外で学ぶ日本人留学生のみでなく、海外で学ぶ外国人学生にまで触手を伸ばす企業が目立ち始め、国内学生の座席(=求人)が奪われるのではないか、といった論調もしばしば聞かれていました。

実際には、少なくとも今に至るまで、ほとんどの企業における採用のボリュームゾーンは日本で学ぶ学生です。しかし特定の職種やポジションにおいて外国で学ぶ外国人を採用する企業は少なくなく、そうした企業は世界の採用市場で戦う上で、現行の採用慣行や人事制度の見直しを迫られ、対応を進めつつあります。

日本企業が優秀な「グローバル人材」を取り逃がす典型的なパターンの1つが「配属先未確定」「初任給一律」「異動転勤あり」といった、いわゆる就社的雇用慣行です。外国人採用枠を別運用し、そこに限ってルールを変更して対応しようとしても、どうしても既存社員との不均衡等が生じてしまい、グローバル採用強化を契機に、人事制度や採用の在り方を見直した企業は少なくありません。

市場がグローバル化しているのは企業だけではありません。国内で学ぶ学生の中には、自身の就職市場を世界視野で捉えている人もいます。そういう人を採用したい場合は、やはり過去のやり方は通用せず、たとえば一律初任給の考え方を全面的に見直すなど、やはり高度成長時代に形成された既存ルール・慣行の厚い壁を崩していく必要が生じているのです。

このように「グローバル」軸でこれまでの採用慣行の見直しが進む一方、特にこの内需刺激策が盛んなこの数年において目を引くのは「ローカル」への対応です。これまで歩んできた人生のほとんどを「失われた20年」に覆われている今の若者たちは出身地域によらず「地元志向」が強い傾向があります。就職みらい研究所の『働きたい組織の特徴』を見ても、6割の学生が「全国や世界など、幅広い地域で働く」よりも「特定の地域で働く」を選択しています。

こうした「若者の地元志向」は、2011年3月の東日本大震災以降に加速したといわれています。実際の新卒採用の場面においても、地方都市での採用活動においては、世界的な超大手企業が、地元限定の中堅企業に競り負けるケースが散見されます。会社都合の転勤で将来設計が描きづらい人生はまっぴらごめん、目の前の人に喜ばれるために力を尽くし、その対価として自分らしく生きてい行くために必要な報酬が得られれば良い……。

そんな声に真摯に耳を傾け、その願いを実現するための制度改定などをいち早く実行した企業が、若者たちに選ばれているのです。

採用も「つながり」の時代へ

ここまで述べてきたような変遷の中、今大手企業を中心に最も注目されている採用手法の1つが「リファラルリクルーティング」でしょう。リファラルリクルーティングとは、つまり「社員紹介採用」のこと。かつては「縁故採用」と呼ばれたこの手法にAIなどの先端技術を掛け合わせることで、その効率・効果が飛躍的に向上する事例が見られるようになってきました。

これまでは、求職者側は「うまくいかなかった場合の気まずさ・後腐れ」を恐れ、就職活動ではあえて第三者的なサービスを用いることがほとんどでした。求人側の企業にとっても同様に「気まずさ・後腐れ」の懸念はありますが、なんといっても手間がかかりすぎるわりには成果が上がらないのが難点でした。

ところがデータベースマーケティングの技術が発展する中で、「うまくいく/いかない」を分ける要素がある程度特定されるようになりました。つまり成功の再現性がぐっと増してきたのです。一方でSNSの進展等により、現在は巨大な人材データベースが世の中にいくつか存在します。技術と情報が組み合わされることにより、その中から特定の人材を抽出してアプローチすることが可能になりつつあるのです。採用確率が格段に上がるような技術革新により、大手企業を中心に、リファラルリクルーティングへの関心が急速に高まっていると実感します。

この流れは、ソーシャルリクルーティング、ダイレクトリクルーティングへの注目にも波及しています。SNSの拡大で、個人間の繋がりづくりは随分と容易になってしばらく経ちます。しかしいざ就職/採用に役立てようとすると、作業が煩雑な割に目立った成果が得られにくく、特にスペックではなくタイプでマッチングする傾向の強い新卒には不向きとされてきました。

ところが、繋がりを可視化したり、母集団を最適化したり、選考を効率化したりといった活動が、データベース分析・活用技術の進展によって、さらに高いレベルで実現できるようになってきました。そうなると、毎年毎年新しい採用母集団を形成する手法に加え、蓄積してきたネットワークの中から採用母集団を抽出する手法への模索が加速するのは、自然な流れとも言えるでしょう。

とはいえ、こうした新手法のみで接点を持てる学生ばかりではないのも事実です。とりわけ大手企業においては新卒採用の人数もある程度大きく、それを確実にクリアするためにも従来型の母集団形成は欠かせません。10月に入り、各社の2018年卒採用計画の立案が本格化するが、当面はツールミックス・チャネルミックスを前提とした採用の進化への挑戦が続きそうです。

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岡崎仁美
1993年(株)リクルートに新卒入社。以来一貫して人材関連事業に従事。営業担当として中堅・中小企業を中心に約2000社の人材採用・育成に携わった後、転職情報誌『ビーイング関東版』編集企画マネジャー、同誌副編集長、転職サイト『リクナビNEXT』編集長、『リクナビ』編集長を歴任。2013年3月、就職みらい研究所を設立し所長に就任。
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