組み合わせの可能性は無限大!もしもピエール中野が『アイデアのつくり方』を読んだら
もしピエ 第四回

凛として時雨のドラマー、ピエール中野さんがビジネス書を読んでいく人気企画「もしピエ」。第4回目の今回は、ジェームス・W・ヤングの名著『アイデアのつくり方』です。
本編わずか62ページ、1冊通して読むのに1時間もかからない薄い本にも関わらず、アイデアを出して仕事をする人が一生使う考え方が載っています。ミュージシャンとして、クリエイターとしてさまざまな活動されているピエール中野さんはこの本を読んで、何を感じるのでしょうか? 今回もピエール中野さんの感想とともに本の重要な項目を紐解いていきます。
<目次>
■凛として時雨もX JAPANも、やってることは一緒?
■FNS歌謡祭でも活用されている?アイデアを組み合わせる方法
■憧れのYOSHIKIさんに初めて会った日
■制約の中で、アウトプットに徹底的にこだわれ
凛として時雨もX JAPANも、やってることは一緒?
――もしピエ第4弾は『アイデアのつくり方』。まずこの本の率直な感想を教えていただけますか?
ピエール中野(以下、中野) 1988年に初版本が出てから実に30年近く読まれ続けている名著というだけあり、アイデアをつくるという点において、非常に基礎的な内容であるという印象を受けました。基礎的な内容だからこそ、応用がしやすい。この著者は主に広告を仕事にする人に向けて書いていますが、広告人以外にも受け入れられやすい内容になっていると思います。
――その基礎的な内容について1つずつ紐解いていけたらと思います。最初に印象に残ったフレーズはなんでしょう?
中野 それはもう「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ」というところです。本当にその通りだなあと。
例えば僕はバンド「凛として時雨」のドラマーですが、あらゆるミュージシャンのバックでドラムを叩いています。時雨とは全く音楽性の違うミュージシャンのバックで叩く場合、さまざまな試行錯誤が求められるんですよね。アーティストや曲に応じたドラムパターンであったりと、まさにこの「アイデアとは既存の要素新しい組み合わせ」を日々実践しています。
――ドラムのプレイでも、同じことが言えると。
中野 もう少し具体的に説明すると、いわゆる本職である時雨のフレーズを外仕事の曲のドラムパターンに応用した例として、凛として時雨の『想像のSecurity』
のBメロのフレーズと、ドレスコーズの『人間ビデオ』
のドラムパターンが挙げられます。
ドレスコーズの『人間ビデオ』のドラムを叩くことになって曲を聞いた時、時雨の『想像のSecurity』でやったこと(16ビートというリズムを刻むときは普通、ハイハットと呼ばれるシンバルを使うが、この曲ではタムと呼ばれる太鼓の部分を使っている)を応用したらかっこよくなるんじゃないかなと。
――なるほど! 早速、往年の時雨ファン垂涎ものの事実が明らかになりましたね。組み合わせ以外で新しい何かが生まれることってないんでしょうか?
中野 それは難しいんじゃないかな。ドラムのパターンの中で聞いていて気持ちの良いものって、数に限りがありますから。だからことドラムで言えば、全く新しい大発見が生まれることって本当に少ないと思います。
結局のところ、ドラムって音符とリズムと叩く位置の組み合わせですから。長い歴史の中である程度やり尽くされてしまっているんです。なんだかんだ言って、王道である8ビートや4つ打ちは聞いていて気持ちがいいですし。
――とすると、あとはどのようにリズムを表現するのかという点で工夫を施すんですね。
中野 そうですね。いろんなパターンを混ぜてみたり、それこそ新しい楽器を取り入れてみたり。表現のやり方がメインになってくると思います。
もちろんこれはドラムに限ったことではないかもしれません。人類が初めて出会うような全くの新領域ならともかく、現存する仕事のほとんどにある程度の「型」があるんですよ。まずは型をしっかりマスターしてから、既存の要素を組み合わせて新たな発見をしていく。一見、型ばかりをやることってオリジナリティから遠いことだと思われがちですが、そこをマスターすることでかえってオリジナリティへの近道になることは大いにあると思います。
ちなみに先程お話した『想像のSecurity』のエンディングは、僕が大好きなX JAPANの『DAHLIA』という曲のドラムパターンを参考にしています。ぜひ聞き比べてみてください(笑)。
FNS歌謡祭でも活用されている?アイデアを組み合わせる方法
――新しい組み合わせを実践する内容として同書では、「カード索引法」というやり方を推奨していました。部分的なアイデアをカードに記しておいて組み合わせる、というものでしたがこちらはいかがでしたか?
中野 これは本当にアイデアをつくる上で重要なことだなと思いました。ドラムの教則で一躍有名になったベニー・グレブという人がいるんですが、彼はドラムのフレーズをまさにカードを使って解説します。
どのタイミングでどの楽器を叩くのか。当然、カードを入れ替えていくことで叩くタイミングも楽器も変わっていきますよね。DVDでは受講者にそれぞれの組み合わせを実際に叩かせて、全てのパターンを経験してもらうというような内容です。
もちろんこれもドラムのフレーズに限った話ではありません。例えば年末の『FNS歌謡祭』でも同じことをしていますよね。あるアーティストとあるアーティストのコラボレーションだったり、ある名曲を新進気鋭の若手アーティストに歌ってもらったり、逆に流行りの歌を往年の大ベテランに歌ってもらったり。その組み合わせを実際にどう決めているのかは僕には分かりませんが、要するにそれもカード索引法だと思うんですよ。
――たしかに! 身近なところにカード索引法は使われているんですね。
中野 僕は普段バンドマン同士の飲み会によく顔を出すのですが、その際も「この人とこの人が一緒にしたらおもしろくない?」とかよく考えているんですよ。そういう意味では僕も頭の中で自然とカード索引法をしているんだなと気づきましたね。日頃から頭の中にでもいいので組み合わせのカードを作っておけば、アイデアを出しやすいし新しいものをつくりやすいなと改めて実感しました。

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