「リーダーはいらない、全員がリーダーになれ」ピエール中野の“もしピエ”第二回「日本3.0」
もしピエ 第二回

「もしもピエール中野がビジネス書を読んだら」、略して「もしピエ」。ロックバンド『凛として時雨』のドラマー・ピエール中野さんに、毎回ビジネス書籍をチョイスしていただく企画です。
大好評だった前回 に続き、第二回となる今回の題材は、『日本3.0』(佐々木紀彦著/幻冬舎刊)。「70年周期で日本にやってくるガラガラポン革命がまもなく起こり、日本は第3ステージを迎える」という刺激的なオビが印象的な本です。
明治維新(約140年前)、第二次世界大戦(約70年前)に続く、第三の“ガラガラポン革命”を迎える、そのトリガーとなるのはいわゆる「2025年問題」(団塊の世代が一斉に後期高齢者入りし、医療費の増大が懸念される問題)、日中韓との関係をはじめとする地政学的な問題……国家・経済・仕事・教育さまざまな面で、日本は大きな転換点を迎えています。
そして日本の舵取りの担い手となるのは、現在の30代です。自身も36歳(掲載時点)と当事者であるピエール中野さんは、本書をどのように読み解いたのでしょうか?
<目次>
■最先端そのものは、意外と大衆に刺さらない
■ミュージシャンの世界ではすでに男女逆転が起きている
■「自分に何が期待されているか」を把握すること
■リーダーは要らない、全員がリーダーになれ
■まとめ
最先端そのものは、意外と大衆に刺さらない
――まずは「日本3.0」について、率直な感想をいただけますでしょうか。
ピエール中野(以下、中野) これからの日本が迎える状況をこと細かに説明して、自分たちがどう考え、どう動いていくべきか解説してくれている書籍ですね。結論としての「地球の宝は人」という部分は他の様々な書籍にも共通していると思うのですが、本書はそれに加えて「ぼんやりと思いつつ、ハッキリわかっていなかった」部分がクリアに理解できました。
――では、さっそく、いくつかコメントを頂戴できればと思います。
中野 意外と、動いていない人が多い印象があります。「変化の時代が来ること」自体はわかっていても、動き方がわからなくて止まっているというか。そういう人向けの書籍ですよね。動き方がわかっている人は、どんどん自分で動くので。ミュージシャンやクリエイターを見ていても、動き方はそれぞれ違いますね。
――ミュージシャンでいうと「動いている人」たちはどなたが挙げられますか?
中野 サカナクションですね。
ベースの草刈愛美さんが妊娠のためライブ活動休止期間に入っていたのですが、その間は恵比寿リキッドルームでクラブイベントを定期的に行ったり。バンドとしては動けなくても、しっかり発信する体制を整えていました。
彼らが所属する会社(HIP LAND MUSIC CORPORATION)も最新の技術への探究心があって、機器の導入がすごく早いんですよね。選び方、センスもすごくいい。加えて、リスナーは最先端すぎるとわからなかったりします。最先端を取り入れたうえで、その一歩手前のものを提供できるような。見せ方を研究している。そこはすごくうまいなと思います。
――技術を持っていて、かつ見せ方もうまいというのは強いですね。
中野 これは、ライゾマティクスの方もインタビューで言っていたのですが、「最先端そのもの」は意外と大衆に響かなかったりするんですよね。
border – another perspective – short ver.
(Rhizomatiks Research + ELEVEN…
彼らは2013カンヌ国際クリエイティビティ・フェスティバルで、Perfumeの「動いている」衣装にプロジェクション・マッピングを施して衝撃を与えました。界隈の第一人者ですら、当時「あれはどうやってるの」と思うようなことをやってのけたんです。
でも話を聞くと、衣装のパーツごとに解析して別の映像を当てていくという手法を取ったと。これ、実は技術的には最先端のものではないんです。ないんですが、非常に手間のかかることをやったということなんですね。それで、最先端の知識を持った人でも驚くようなパフォーマンスを実現したと。
――技術的な最先端を追うだけではなく、あくまでユーザー目線、人を驚かせたり感動させたりすることがベースにあるわけですね。
中野 技術を使う側も、受け取る側も人ですから。いかに、人に向けて活動できているか。そういう動き方をすることで、全体に対して影響を与えられる存在になるのだと思います。特に僕らやその下の世代は、常に動いていないと良い印象を残せないというか。
本書では大きな変化の周期を70年と位置づけていますが、小さな変化はもっと短いスパンでありますよね。例えば僕ら30代は前半・中盤・後半で、全然違う経験をしてきています。黒電話、ポケベル、PHS、携帯電話をすべてリアルタイムで経験しているし、ギャル文化やアムラーといったカルチャーの栄枯盛衰を経験しているんですよね。
40代の方が、本書について感想を言っているyoutube動画を見たんです。その方は「わかるけど、(自分たちは)そういう風に動くことは難しい」ということを言っていて。読む世代によっても、受け取り方が変わってくる本ですね。結構、著者の佐々木紀彦さんは強烈にあおってくるじゃないですか。
――強烈ですね。各章どこも注意深く記述されている一方で「一流のリーダーを持てなければ、日本は2020年以降恐るべきスピードで没落していく」など、敵を作ることを恐れていない印象を受けます。
中野 「これから30代がガンガンやっていかないと、日本は終わっちゃうから」「低迷していくだけだから、さすがにもうわかるでしょ」ということを本に残した功績は大きいですよね。恐らくですけど、佐々木さんは現代の福沢諭吉になりたい人なんだと思いました。それはすごく伝わってきます。
――実際、相当な情報量が詰まった本ですよね。すごく読みやすい本、ではないです。
中野 そんな情報量を一冊に収めたというのは、「これぐらいの速度感でやってくれ」という意味ですよね。簡単に読みこなせる本ではないと思いますが、それだけ熱量のこもった素晴らしい本だと思います。

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