2017/04/12 公開

自らの言葉に縛られすぎない、ハリルホジッチ(サッカー日本代表監督)のマネジメント

小澤一郎「名将のマネジメント」第1回

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代表監督とは「選ぶ人」のことを指す

SAMURAI BLUEことサッカー日本代表は、2018年に開催されるFIFA ワールドカップ・ロシア大会に向けて熾烈なアジア最終予選を戦っている最中だ。その日本代表を2015年3月から率いるのが、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督だ。

スケジュールが多忙を極めることもあり、ハリルホジッチ監督は滅多なことがない限り個別インタビューには応じない。だがこの3月はワールドカップアジア最終予選が行なわれることもあり、3月8日に囲み取材という形で、取材対応の場を設けてくれた。

サッカー日本代表監督は有名だが、その仕事の細かな実情を知る人は、一般には多くないだろう。そこで今回は、我らが日本代表監督ハリルホジッチの日常業務とマネジメントを紹介したい。

その前に、サッカー監督には2種類あることをご存知だろうか。日本においては、クラブチームも日本代表も同様に「監督」という言葉で表現されることが多い。しかし、世界のサッカー界ではこの2つを異なるワードで表現するのが一般的だ。

例えば、スペイン語ではクラブの監督を「エントレナドール(Entrenador)」、代表監督を「セレクシオナドール(Seleccionador)」と呼ぶ。直訳するとエントレナドールは「トレーニングする人」、セレクシオナドールとは「選ぶ人」のこと。つまり、サッカーの代表監督の仕事のメインは「選手を選ぶこと」という定義がサッカー界のスタンダードなのだ。

今回は、「選ぶ人」である代表監督の仕事について、ハリルホジッチ監督本人のコメントを交えながらお伝えしたい。

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主観を肯定するスカウティング術

サッカー日本代表は3月にアジア最終予選2試合を戦ったが、各試合に向けてのトレーニングはわずか4回しかなかった。代表チームは活動期間、チーム戦術を確認するトレーニングの回数が極端に少ない。だからこそハリルホジッチ監督は、選手のスカウティングを非常に重視している。

今回の取材で、ハリルホジッチ監督は所属クラブでの公式戦をチェックしている選手がフィールドプレーヤー51人・ゴールキーパー5人の計56人であることを明かした(監督はこれを「ラージグループ」と呼んでいる)。代表招集前にはそこから30人ほどのリストに絞り、直近の試合やコンディションを確認し、代表の招集レターを出す。3月の代表戦では、25人の代表メンバーを発表している。

当然ながら、56人もの選手の公式戦をハリルホジッチ監督1人でチェックすることは物理的に不可能だ。まして、国内だけでなく「海外組」と呼ばれる欧州でプレーする日本人選手も多くいる。そのため、代表のコーチングスタッフと分担して可能な限り現地での視察を行なっている。ただし、現地視察できるマンパワーにも限界があるため、テレビでの映像チェックも並行して行なっているという。

担当者の割り振りやグルーピングは、毎週日本サッカー協会で行なわれている代表スタッフ会議で決められ、担当者は自身が担当する代表候補選手のパフォーマンスを5段階で評価し、スタッフ間で共有する評価表に記入していく。

ただ、5段階評価には担当者の主観が入り込む余地が大いにある。評価に客観性を保つには、キーデータの共有などの手法が必要だ。客観性の担保をどう行なっているのか質問したところ、ハリルホジッチ監督からは「サッカーというスポーツではどうしても見る人の主観が入り込んでしまいますし、コーチの意見も必要としています。主観も重要です」という答えが返ってきた。

この発言からもわかる通り、世界的に「名将」と呼ばれるサッカー監督はコーチングスタッフに必ず自分とは異なるサッカー観、意見を持つ人間を置いている。特に選手をセレクトすることがメインの代表監督は、最終的に決断するのが自分であるからこそ、多角的な意見が出る雰囲気を構築することを重視している。

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小澤一郎(おざわ・いちろう)
1977年、京都府生まれ。サッカージャーナリスト。日本とスペインで育成年代の指導経験を持ち、指導者目線の戦術・育成論やインタビューを得意とする。著書に『サッカー日本代表の育て方』(朝日新聞出版)などがある。株式会社アレナトーレ所属。
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