【後編】「きれいな乙武さんとゲスな乙武。レッテルに振り回されていたのは自分だった」・乙武洋匡(作家)

失敗ヒーロー!

2019/01/17
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華々しい成功の裏には、失敗や挫折がある。その失敗エピソードから成功の秘訣をヒモ解く『失敗ヒーロー!』。後編では、乙武洋匡さんが考える真のバリアフリー、また自身に貼られたレッテルとの向き合い方、そこからわかる健全なチームマネジメントの考え方まで幅広くお聞きしました。

真のバリアフリーは、どんなクジを引いても不利益が出ないこと

――東京オリンピック・パラリンピックも開催が迫ってきていますが、日本のバリアフリーの現状、変化はどのように感じられていますか?

乙武洋匡(おとたけ・ひろただ)
1976年4月6日生まれ、東京都出身。作家。先天性四肢切断という障害を持って生まれる。早稲田大学政治経済学部在学中に『五体不満足』を出版し、600万部を超える大ベストセラーとなる。大学卒業後はスポーツライターから教員に転身。2016年にスキャンダルが発覚し、噂されていた参院選出馬を断念。2018年10月に出版された小説『車輪の上』では車椅子のホストを主人公に描いた。今後の活動は現在模索中。

乙武洋匡(以下、乙武):『五体不満足』が出た20年前では、エレベーターがついている駅も数えるほどでしたし、都バスも車椅子対応のものは1時間に1本程度でしたから、それを逃すと、1時間待たなければいけなかったんです。そのことを考えれば、この20年、格段の進歩を遂げたなと思います。でも新しいお店がオープンした時、入り口にまだ段差があるということは、この平成が終わろうとしている今でもざらにあることです。例えば、みなさんにもここ1ヶ月に行った飲食店で、もし車椅子の人と一緒だったら、いくつ利用できたのか想像してみていただきたいんです。車椅子の人間が、いかに行動範囲が限られているのかわかると思います。出かける時は下調べも必要になりますし、ルートも通常なら30分で済むところ、50分かかったりすることも多いんですね。

日本では障害者と健常者で教育を分けてきたので、自分とは別カテゴリーだという認識ができているのだと思います。そんな社会環境で育てば、障害者と出会った時に戸惑うのは当然です。でも障害者と一口に言っても、身体、視覚、聴覚、知的、精神などさまざまな障害があり、隣にまったく僕と同じ身体の人間がいたとしても、僕と隣の人は生い立ちも性格も違う。だから、障害者をひとくくりにせず、「あなたとはどう接すればいいのか」と個人を主語にして問いを立てていくことも大切なのではないでしょうか。

――街の段差をひとつなくしていくことも、大きな意義がありますね。本当の意味でのバリアフリーはどんなことだと思われますか?

乙武:僕は障害者になりたいと思ってなったわけではありません。ほとんどの障害者も同じなのではないかと思います。選んだわけではない境遇によって、社会的不利益を被る。「それをなぜ呑み込まなければいけないのか? 人生で引いたくじがそれだったから」で済ませていいのでしょうか。こんな当たり外れがある社会が健全なのかといえば僕はそうは思わない。どんな境遇に生まれても被る不利益が少なくなることが、真のバリアフリーなのかと思います。

――『車輪の上』には性的少数者も登場しますね。

乙武:性的少数者の方々も、自分でそれを選んだわけではないのに、異性愛者だけが結婚というメニューを用意されているのは不利益なことです。婚姻制度だけでなく、偏見なども含めて不利益が大きいと思います。

でも障害者やLGBTの方だけではなく、誰しも、レッテル貼り、キャラ付けのようなものがあると思うんです。俺は長男だからこういう生き方はできないだろうとか、私は女だからやめておこうとか、境遇によって行動や生き方を制限されてしまうことも多いと思います。今回の小説ではなるべく多くの人に共感してほしいと思って、障害だけではなく、その他さまざまなレッテルを盛り込みました。

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