2017/03/08 公開

「マスメディアのパワーは、とてつもない」大谷広太(元BLOGOS編集長)

思い出す言葉

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僕自身どちらかというと職人気質の方が好きですね。決してメジャーじゃなくてもすごい仕事をしているフリーライターやジャーナリストの方がたくさんいらっしゃる

思い出す言葉『しない後悔より、する後悔』。

――BLOGOSには、現在BuzzFeed Japanで活躍されている鳴海淳義さんも所属していらっしゃいましたし、田野幸伸さん(ニッポン放送→→ドワンゴ→ライブドア(現・LINE))もそうですが、他にはあまりないキャリアを歩んでいらっしゃる方が多いですよね。 

大谷広太さん(以下、大谷) そうですね。僕自身に関しては、親からはよく「しない後悔よりもする後悔だからね」とずっと言われていました。ライブドアに入ったのもそれだったんですね。ライブドアと同じ日に、安定した別の企業に内定をもらっていて、「どうしようかな」と思った時にこの言葉を思い出して。まだ24歳で若かったし、「何が起こるかわからないけれど、そっちに踏み込んじゃえ」とライブドアへの入社を決めました。そうしたら案の定というか、入って2週間くらいでライブドア事件が起きて。

――あのライブドア事件直前に入社されたんですね!

大谷 そう、2005年12月入社です。事件が起きたのは2006年1月なので、本当に直前でした。

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大谷広太(おおたに・こうた)
1981年生まれ。AbemaTIMES編集部所属。2005年、株式会社ライブドア(現・LINE株式会社)入社。ポータルサイト『livedoor』、『livedoorニュース』など、ウェブメディアの運営に携わる。2009年の『BLOGOS』立ち上げ、同編集長を経て2016年11月より現職。

――それはまた強烈な経験でしたね。前後しますが、キャリアの最初はエンジニアだったそうですね。

大谷 そうですね、役所の決裁や稟議システムを作っていました。就職活動では出版社やマスコミを受けてはいたんです。けれど、ことごとく失敗して。なんとか引っかかった会社でシステム事業をやっている部署に配属されました。

僕が新卒の頃は、まだまだネット企業でそういう編集のポジションの募集ってなかったんです。あっても経験者採用のみ。出版社の中途採用も受けましたが、当然そこも経験者が受けています。当時第二新卒みたいな未経験者が行ってもなかなか採用は難しかったですね。

――それから、ライブドアに入ってから編集者になられたと。

大谷 はい、ライブドアに入社してポータルサイトの編集業務を担当しました。ただ、ライブドアにはYahoo! JAPANさんみたいにきっちりとした「編集」という職種はなく、webディレクターとしての入社です。当時も今もそうですが、webディレクターとしてデザイナーやプログラマーとやり取りをし、サイトを設計して、数字を見るところまでやるわけです。営業のようなこともやって、売上も見ましたし、本当に幅広く仕事をさせていただきましたね。なので「編集」と名乗ってはいたものの、「コンテンツだけを見ている」という意識は一貫してありませんでした。

ライブドアニュースは一緒に担当していた田端氏(田端信太郎氏)と「Yahoo!ニュースとは違うことをやろう」という意識で運営していました。だからこそ、当時始まって間もないJ-CASTニュースさんを配信させていただいたりしたわけです。新聞社などのオーソリティだけでなく、ネットメディアや個人のブログも入れて情報提供元にしていました。その中で、個人のオピニオンにはニーズがあるし面白いから、切り出して一つのサイトにやろうという形でBLOGOSを始めたわけです。

手応えを感じた、名プロデューサーの記事

――BLOGOS編集長時代にはハードな経験もたくさんされていると思いますが、インタビュイーとして最も手強かった人はどなたでしたか?

大谷 手強いというとちょっと違うんですが、「1票の格差問題」をやられている升永英俊弁護士のインタビューをした時はかなり逆質問を受けましたね。「民主主義とは何か」「選挙とは何か」「法律とは何か」といった根源的な質問を、自分の言葉で説明する逆インタビューのような展開になりました。結局そこで色々問答していくうちに、最終的に僕らも納得する形で教えていただいたという形ではあるんですけれども、ドキドキしました(笑)。

-最初にまず「一票の格差」とは、どういう問題なのか教えていただけますか?

升永英俊氏(以下、升永):この問題の深刻さがまったく共有されていないと考えています。あなたは、民主主義はどういうものだとお考えですか?

-大雑把ですが、選挙を通じて、代表者を議会に送り出し、そこで立法をするものというように理解しています。

升永:じゃあ今の日本は民主主義国家だと思っていますか?

-原則的には、民主主義だと思っています。

升永:あなたは、日本は民主主義国家だと思っているわけですね。いや、そうじゃないですよ。そこにまず掛け間違いがあるんです。

出典:BLOGOS「現在の日本は民主主義国家ではない。“国会議員主権国家”だ」-「一人一票実現国民会議」発起人・升永英俊弁護士インタビュー

――この引用箇所だけで、インタビュアーとしては胃が痛いです(笑)。とはいえ、全文読めば意地悪でこういうことを仰っているのではないことは理解できます。

大谷 そうそう、意地悪ではなくて(笑)。僕らももちろん事前に勉強はしていきますが、なかなか大変でしたね。でも、最後は優しく教えていただきました。

――では、最も反響があったのはどの記事になるのでしょうか。

大谷 僕がインタビューした中で言えば故・佐久間正英さんの記事はすごく印象深いですし、反響も良かったと思います。さまざまな方に見ていただいたし、今でもたまにツイートされる方がいらっしゃるので。

—ツイートを拝見していまして、違法ダウンロードの刑事罰化も、巡り巡ると表現する人たちにとっても、いい結果をもたらさないということをおっしゃっていました。

佐久間氏:表現をする人たちの“自由”を保証するように法を改正していかないと。今は自由じゃないんですよ。

例えば、仮に音楽をウェブで売ろうとした時に、自分で作った曲であっても権利登録されていたらできないわけですよ。あるいはどこかのレコード会社で作っちゃっていたものも、もうできない。曲なんて資産ですよね。そうやって縛るのではなく、煩雑な手続きもなく有効活用できる、もっとオープンな方向な音楽シーンというか、環境に向かわないとさらに衰退するんじゃないかなと思う。

出典:BLOGOS音楽プロデューサー・佐久間正英氏が語る「音楽業界の危機的状況」

――2012年の記事がいまなおツイートされるということは、届くべき人に深く刺さっているということですね。

大谷 BLOGOSはその時々の時事の解説・分析や、見方を提示する記事を集めたサイトですから。編集部でやるときはそこにないものを埋めるか、そこからまた議論が生まれるような記事を作りたいなと思いました。1日や2日では消費されない、何年か経った後も見返して気づきがある記事を作りたい。そう思ってインタビューをしてきました。東浩紀さんのインタビューも、5年前ですが、今でも十分読めると思う。最近でも、安部昭恵さんへのインタビュー記事がまた取り上げられて……。

最終盤では、現下の政治状況と関連して、なるべく長く読まれればいいなとやっていました。そうして手がけた記事は、NewsWeekさんでも配信頂いてありがたかったです。

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――では逆に「これは失敗したな」「反省している」という記事はありますか?

大谷 具体的に挙げるのは難しいんですが、「読者はこれについて関心があるだろう」という感じでやったものの、なかなかPVに結びつかなかった記事はたくさんあります。自分の中ではすごくいいと思って出したものが、ちょっと難しすぎて反応が良くなかったとか。

思い出の10本というのを選んだのですが、週刊文春の新谷学編集長、小林よしのりさんのインタビューなど、その当時は僕も含め編集部で聞いてみたい、という人にお願いしていたんですが、少し早すぎたのかもしれず、公開当時はあまり読まれませんでした…。

――まだ読者が受け入れる体制に入っていなかったと。

大谷 記事の作り方もそうでした。かなり早い段階で「著名人のTwitterでは」という観点で記事を作った時期があるんです。その時は、相当批判を受けましたね。「コタツ記事だ」、「取材もせずに記事を作って、何がメディアだ」と。でもその数年後、ハフィントンポストさんが同じような手法で記事を作ると「さすが最先端だ!」と言われていたり(苦笑)。もちろん、我々のクオリティの問題でもありましたが。

――それは辛い!(苦笑)

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