2017/06/29 公開

「PTAを変えたいんです」と部長に立候補して反感を買ったものの最近だんだん応援されることが増えてきたアヤさんの話

PTAから考える、多様な生き方と働き方。 その3

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著者:大塚玲子
 

昨年の春、島田アヤさんは、中学校のPTAで「校外指導部」の部長になりました。
このとき、「PTAを変えたいんだ!」と語るPTA会長と意気投合。ともに、PTA改革に取り組んできました。

熱意あるPTA会長のもと、改革は順調に進行。仕事は段階的に軽減され始め、入会届も配る方向で一致。個人情報保護の対策もすでにバッチリだそうです。
めでたし、めでたし。

しかし、小学校のPTAは、だいぶ様子が違っていました。
みんな、井戸端会議では不満をいうものの、声を上げようとはしないのです。

今年の2月。「地区委員長」に立候補したアヤさんは、みんなの前でストレートに切り出しました。
「PTAを変えたいと思っているんです。活動をもっと効率化していきましょう」

アヤさんのスピーチに、会場がざわつきました。ほかの母親たちの反感を買ってしまったのです。
 
「効率化って、いままでのやり方が無駄だった、ということ?」
「これまで地区班の活動に何も参加していない島田さんが、何をやれるの?」
「島田さん、いつ集金に行ってもおうちにいないのに?」

「完璧なスピーチをしたはずが……」。アヤさんは振り返って、笑います。

「どっちだよ、と最初は思ったの。PTAを変えたいのか? 変えたくないのか? みんな不満の塊なのに、『変えよう』っていうのには反対するんだから(笑)。

でも、わたしの言い方もよくなかったんだよね。『伝統の破壊者』みたいな印象を与えてしまったから。お母さんたちの心情や地元愛に配慮が足りなかった。もっと理解すべきだったと思う。そこは、あとからすごく反省したところ」

アヤさんは、やり方を改めようと考えました。
では、これからどうやって、PTAを変えていったらいいものか?

*

アヤさんは35歳のシングルマザーです。
3人の子どもがいて、会社を3つ経営しています。
 
19で初めて起業したときは、派手に失敗して、22で破産。
それからは、子どもたちを育てつつ、お勤めをしつつ、大学と専門学校に通って、再起に備えました。この時期のアヤさん、寝てなかったでしょう。

生活は貧しく「財布には小銭しか入っていなかった」といいます。

しかしその後、26のときに起こした事業が大成功。以来、家事や育児はできる限り外注しており、いまもシッターさんやハウスキーパーさんを数名雇っています。

「でもこういう話を女の人にすると、攻撃されやすいのね。自分と違う生き方をする女性を見ると、“自分を否定された”と思っちゃうみたい。
女の人たちは、自分で自分を認めてあげることが少し難しいのかもしれないね」

同性間に特有の、嫉妬や妬み。気持ちはわかるけれど、他人を攻撃する前に一度立ち止まって考えてみてほしい、とアヤさんは思います。
自分の本音は? そのままでいいの? どう生きたいと思っているの? 

「みんな、もっと『自分で選択する』っていうところに、たどりついてほしい。やろうと思ったら、大抵のことはできるんだから。

自分の人生、自分で責任を持った方が俄然楽しいと思うの」

いまの日本の女性たちのあり方に苛立ちを感じつつも、アヤさんは、女の人が好きだと言います。
同性愛者であることは隠しておらず、同性婚が認められる社会を目指すNPO法人・EMA日本(イーマにほん)で副理事長を務め、LGBTファミリーをつなぐ団体『にじいろかぞく』でも運営委員を務めています。

「同性婚が実現しても、自分が法律婚をしたいとはぜんぜん思わないんだけれど。でも、同性カップルでも結婚したい人はできる社会にしていかないとね」

ふだんの生活でもセクシャリティをオープンにしています。
保護者会でも、PTAの役員会でも、自己紹介で自身がレズビアンであることを話し、LGBTの解説を行い、さらにEMA日本やにじいろかぞくの話をしたり。

アヤさんのもとには、お子さんのことだったり、自分のことだったり、いろんな人が相談に訪れるそうです。

*

さて、小学校のPTAをどう変えていこうか? アヤさんは考えました。

立候補のときのスピーチは、ちょっと失敗しちゃったかな。
そう思って、しばらくは大人しくしていることに。すると、みんなの動揺はおさまってきました。

毎週のように行われるPTAや地域のイベントには、積極的に参加。飲みに誘われれば顔を出す。道で話しかけられれば気軽に応じる。
その都度、顔を合わせる人たちに「いっしょに、やりやすいやり方を考えようよ」と話してきたところ、だんだんと風当たりが変わってきました。

「本当はPTAがもっとこう変わったらいいのにって思ってたんだけど、できる?」とか「島田さんは変わった人と聞いていたけど、本当はすごくよく動いてくれるね」とか、「がんばって、期待してるよ!」などと言ってくれる人が増えてきたのです。

アヤさんは、もっと女の人たちが意見を言いやすい世の中にしていきたい、と思っています。“好きなことをしたり、思ってることを言ったりしたら嫌われる社会”なんて、おかしいから。

「PTAでもなんでも、他人のためだけにやるものじゃない。自分のためにもやっているんだから、もっと声をあげてほしいのね。反対なら反対、賛成なら賛成って。
何もしないでいてPTAがよくなるってことはないんだから。

PTAは『わたしも我慢したんだから、あなたも我慢しなさい』っていうやり方で続いてきたけど、わたしはそういうのはイヤだから。みんなが要望を言ってくれたら、わたしが周囲にかけあっていくから、って言ってるの」

まずは、みんなの声をたくさん聞きながら、素地固めをしていこう。
そしてタイミングを見つつ、やるべきことをやっていこう。

滅私奉公のPTAはもう終わりでいい。現状のままでは、次世代にバトンを渡せないし、渡したくない。

PTAの問題は、突き詰めると女性たち、母親たちの生き方の問題に直結する。
わたしもお母さんだから、お母さんたちの味方でいたい。

いまはそんなふうに、アヤさんは考えています。

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大塚玲子
編集者、ライター。主なテーマは「PTA」と「いろんな形の家族」。各地で講演、テレビ・ラジオ出演多数。PTAでは学年総務部長。 シングル母。著書『PTAがやっぱりコワイ人のための本』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』。 http://ohjimsho.com/
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