2017/05/30 公開

PTAの理不尽に腹を立てていたシングルマザーのOさんがPTAをテーマに書き続ける理由

PTAから考える、多様な生き方と働き方。 その2

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著者:大塚玲子
 

納得いかない。受け入れがたい。というか、どうにも腹立たしい。

子どもが小学校に入ってはじめての保護者会。PTAのクラス役員決めが始まったとき、モヤモヤした気持ちではちきれそうでした。

なんでそれを「やらなきゃいけない」のか? なぜ、この場に母親しかいないのか?

父親は「お仕事があるから」と除外されるのに、どうしてシングルマザーはお仕事があるのに「当然やること」になっているのか?

保育園では卒園DVDの取りまとめをしていました。完成・配布はまだ先で、仕事が残っています。なのにこれ以上、小学校のPTAの仕事までやりたくない。

PTAなんて、余裕のある人がやればいいのに。
生活の不安定なシングルマザーが、ふたり親の家庭と同じ土俵に乗せられるのはなぜ?
そんな思いが、頭のなかをぐるぐると渦巻いています。

保健委員、文化委員、広報委員……。
なんとかそこまでは、手が上がりました。残るは「学級代表・1名」のみです。

担任の先生がハンカチで冷や汗を拭いながら、「○○さん、いかがですか?」と順番に声をかけていきます。おずおずと「できない理由」を答える母親たち。

いやだ、わたしは、あれを言いたくない。

できないわけじゃない。睡眠時間を削りさえすれば、そりゃなんだってできますよ。
でもわたしは、そこまでしてそれをやらなければいけない理由が、わからない。

「大塚さん、いかがですか?」

一番最後に名前を呼ばれ、黙って頭を下げました。わたしは、やりません。

*

30で結婚、31で妊娠、32で出産、33で離婚。

妊娠したときに勤めていた編集プロダクションは、深夜残業・徹夜が常態でした。
子育てを両立することは事実上不可能だったため、退職を選択。

離婚後は幸い実家に身を寄せられたため、子育てしながらもなんとかフリーの仕事を続けてこられました。もし母子だけで生活していたら、こんな不安定な仕事は選べなかった。

40を過ぎて、編集の仕事から書く仕事へと徐々にシフト。ライターから編集者になる人が多いので、逆は珍しいパターンです。たぶんずっと、書きたかったのでしょう。

いまや子どもは中学生になり、思春期ど真ん中。
8年前に知り合ったパートナーとは、家族未満の関係が続いています。

プライベートでは「定形外かぞく ~家族のダイバーシティ」という活動もやっています。

ひとり親家庭、再婚家庭、里親・養親家庭、同性かぞく、おひとりさま、施設の職員や子どもたち……。取材などで知り合った「定形外かぞく」の仲間たちは、みんな多かれ少なかれ、自分たちの状況に「引け目」を感じているようでした。

いわゆる「ふつうの家族」ではないことに、引け目を感じなくていい世の中にしたい。
「どんな形もアリ」にしていきたい。

そんな思いから、当事者の交流会を催したり、トークイベントを企画したりと、不定期に活動しています。

そんな感じでまあ、生きてきた次第です。

*

さて、そんな大塚さんがPTA活動に興味をもつようになったのは、あるテレビ番組がきっかけでした。

NHKの朝の情報番組『あさイチ』で、「やりたい人がやる方式」を実現した、ある小学校のPTAの様子を紹介していたのです。

えっ、何これ! お母さんたちもお父さんたちも、みんなすごく楽しそう。

加入するのも、活動するのも、強制ではなく任意。
「やらなきゃいけない」ではなく、「自主的に、やりたい人がやる」形のPTA。

そうすると、こんなにみんな楽しくやれるの?
目からウロコが、ぼろんぼろんと落ちました。

その後「PTAの変え方」をテーマに取材を始め、本を出版。
「PTAに詳しいライターの大塚さん」として(多少)名を売り、いまにいたります。

一方で、自分の子どもが通う学校のPTAでも、会員として地道に活動してきました。

実際のところ、PTAを「やりたい人がやる形」にしていくことは、とても難しい。
あきらめそうになることばかりです。

もしかしたら「やりたい人がやる形」なんて、日本人には無理なんじゃない? 
よく言われるように、PTAなんてなくしてしまったほうがいい?

そんなふうに思うことも、少なからずあります。

でも、やっぱりどこかまだ、あきらめたくないのです。
それをあきらめることは、もっと大きな何かをあきらめることのような気がして。

だれもイヤな思いをしない、意味のある保護者活動は可能なのか?
PTAじゃなくてもいいのかも?

もやもやと、ずっと、考え続けています。


photo by mrhayata

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大塚玲子
編集者、ライター。主なテーマは「PTA」と「いろんな形の家族」。各地で講演、テレビ・ラジオ出演多数。PTAでは学年総務部長。 シングル母。著書『PTAがやっぱりコワイ人のための本』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』。 http://ohjimsho.com/
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