2017/04/24 公開

PTAの役員決めで赤ちゃんをおんぶしてクジを引いたら広報委員長になったタマミさんの話

PTAから考える、多様な生き方と働き方。 その1

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著者:大塚玲子
 

それは今から7年前のこと。

再婚に伴い、東京から仙台に移り住んだ緒倉タマミさんは、1歳になったばかりの下の子をおんぶして、上の子が入学した中学校の保護者会に出席しました。

PTAのクラス役員決めがあったのです。

タマミさんはDTP(パソコン上での印刷物制作)ができるので、広報委員を引き受けることにしました。そこまではよかった。

が、そのあとのクジ引きで「広報委員長になっちゃった」のは予定外でした。

「赤ちゃんがいるのに、ってさすがにみんなに同情されて、『委員長は代わってあげられないけど、サポートするから!』って言ってもらって。それはうれしかったですよね。
クジ引きで決めるやり方はどうなの、って思いますけど」

その後も親しく付き合う、とまではいかないものの、道で会ったら「どうしてる?」なんて立ち話をできる顔見知りが増えたことは、当時地元に知り合いがいないアウトサイダーだったタマミさんにとって、うれしいことだったと言います。

「わたしはPTAがなくていいとは思わないけど、もっと楽しいものになればいいのに、っていうのは思います。すごく前例踏襲的なシステムとか、効率が悪いところがあるから、モチベーションにつながらないんじゃないのかなぁ」

タマミさんはPTAのことを、そんなふうに話します。

*

タマミさんが最初に結婚したのは24歳のときでした。3年後に上の子が誕生、そして30歳のときに離婚。
 
結婚中、タマミさんは空間デザインの仕事を、元夫はTVカメラマンの仕事をする共働きでした。お互いに相手の話を受け止めることが下手で、コミュニケーションがうまくいかず、共同生活が難しくなったのだといいます。

「離婚原因を一言で言うと、“若かったなぁ”ということかな(笑)」

最初はお互い子どもの親権をとることを主張していましたが、日本では離婚時に単独親権しか選べません。そこでタマミさんが親権を分けるやり方(身上監護権と、財産管理権=狭義の親権を分属する)を提案したところ、元夫も同意。ようやく離婚が成立しました。

その後、6年間のシングルマザー生活を経て、36歳のときに再婚。相手が仙台の人だったため、それまで続けてきた仕事はあきらめざるを得ませんでした。

「東京近郊じゃないとできない仕事でした。展示会場のブースのデザインなど、みんな東京の会社がやっているので。だから本当は、東京の人がよかったんですけれどねぇ。

再婚するときは夫に『養ってね』って約束してもらいました(笑)。

子育てしながらフリーで仕事を続けることに行き詰まりも感じていたんですよね。時間も余裕もないから、新しいソフトの導入をするのも大変だし、スキルアップが容易じゃなかったので」

タマミさんは仙台に引っ越したのを機に空間デザインの仕事はやめて、いまは主に在宅でできるDTPの仕事などを請け負っているそうです。

それともうひとつ、タマミさんはあるNPOの代表を務めています。「ステップファミリー・アソシエーション・ジャパン(SAJ)」という、子どもがいる再婚家庭(ステップファミリー)の支援団体です。

「日本の家族観って、いまだにすごく単一的です。『初婚のお父さん・お母さん・子ども』という形が標準で、それ以外の形は制度から漏れることが多いんです。

ステップファミリー特有の課題が、ちっとも知られていないから、“義理の父親の虐待”といった問題ばかりクローズアップされがちです。その『義理の父親』と『母親』が本当に『親』として機能していたかどうか、といった検証が行われることもないんですよね。

家族の多様性とか、家族のなかでの個々の違いということを、もっとみんなが尊重して支援しないと、難しさをそのままにしてしまうと思うんですけれど」

タマミさんは、ステップファミリーの課題に対する社会の認識を広げていくため、当事者と専門家との連携・協力を図りつつ、いまも活動を進めています。

*

さて、PTAに話を戻しましょう。

広報委員長になったタマミさんが、その後、どんな活動をしたのかというと。
NPOの印刷物をつくる際に身につけたDTPの技術を活かし、それまで印刷所に頼んでいた制作作業を一手に引き受け、みんなに喜ばれたとのこと。

「でもね、わたしの場合はたまたま受け入れられたからよかったけれど、『来年以降の人が同じようにやれないと困るから』って、DTPをさせてもらえないことも多いみたい。
わたしも以前、ほかの学校の人に『PTAの広報紙をDTPでやったんだよ』って話したら、『そういう人がいるから迷惑なの』って怒られたことがあります(笑)」

ああ。これ、けっこう聞くんですよね。広報紙をつくることよりも「前例踏襲」が目的化しているもんだから、「今年はDTPでやろう」というと、反対されてしまうことがあるようです。うーん、そういうところは空しい……。

「でも、PTAをやっていると、いろんな家族観や夫婦観をかいま見られたりするのも面白いです。わたしが『うちは再婚で』って自分から話すからかもしれないですけど、みんなも意外といろいろ話してくれます。
PTAでもSAJでも、いろんな家族があるのを知ることで、受け止めるキャパが広がっていって、『家族はこうあるべき』みたいな思い込みが、どんどんなくなっていくんですよね。そういうのは面白いな、って思います」

昨年度も、下の子の小学校のPTAで広報委員を引き受けたというタマミさん。「次は、保健体育委員にチャレンジしようかな?」だそうです。


photo by Markus Spiske

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大塚玲子
編集者、ライター。主なテーマは「PTA」と「いろんな形の家族」。各地で講演、テレビ・ラジオ出演多数。PTAでは学年総務部長。 シングル母。著書『PTAがやっぱりコワイ人のための本』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』。 http://ohjimsho.com/
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