「PTA的イクメン」ってなあに?
PTAの抱える問題は女性の働きにくさそのものだと思う。その3

なぜかお母さんたちばかりが担当することになるPTA。その不自然な状況に対してささやかな解決策を提案してきた大塚玲子さんによる人気コラム「PTAの抱える問題は女性の働きにくさそのものだと思う。」もついに三回目。
今回のテーマは世間的にも十分浸透した感じのする「イクメン」。お母さんに背負っている義務を軽減するためにお父さんはどういう風にPTAと関わっていけばいいのでしょうか?
このテーマに対する大塚さんならではの「ささやかな提案」はどんなものなのでしょうか?
さてさて、連載1・2回目では、なんでPTAではお母さんばかりが苦労しているのか、どうして母親同士が圧力をかけあう状況になっちゃっているのか、お話してきました。
母親たちは、PTAも家事・育児と同様に「女がやらねばならない義務」として背負い込んでいます。けれど、お勤めのお母さんもこれだけ多くなったいま、そんな性別役割規範は、もう手放していいはず。
だから「下ろせる荷物はどんどんおろそうよ、PTAに行けるお父さんにはどんどん行ってもらおうよ」と、お母さんたちに呼びかけているわけなんですが。
でもね、実際のところ、それだけではなかなか変わらないんですよね。
「母としての呪縛」は、何しろ根深い。
いくら他人がけしかけたところで、「そうだね、PTAはお父さんにやってもらおうか」とは、簡単になりづらいのです。
さて、ではそしたら、このコラムを読んでくださるようなやさしい男性たちは、いったい何をどうすればいいものか? お母さんたちは、お父さんがPTAにどんなふうに向き合ってくれたら、ラクになれるんでしょうか?
「PTA的イクメン」とは、なんぞや? それを、今回は考えてみたいと思います。
PTAにウキウキ来るお父さんは「へんな人」?
お父さんたちにできるのは、まずは単純に、自分からPTAに飛び込んでみることでしょう。妻に代わって「おれが行きます」と学校に足を運ぶこと。
どうしても無理な人はもちろん除きますが、もし「職場の調整をちょっとがんばれば、行けそう」という状況であれば、ぜひ行ってみていただくと。
しかし、じつはその先にもハードルはあるんですね。
そもそも母親たちのあいだでは、PTAに張り切って参入してくるようなお父さんは「へんな人」として警戒されがちです。
これまでお話ししてきたように、母親たちの間ではPTAへの参加強制圧力が働くため、「いやなもの」という共通認識があります。
だから、お父さんにしても「誰かに頼まれて仕方なくPTAに来る人」ならわかるんだけれど、テンション高く自らダイブしてくるような人は、意味がわからないのです。
さらに、前回もちょっと書いたように、コミュニケーションの壁もあります。
せっかくお父さんがPTAの集まりに参加しても、ワイワイと盛り上がるお母さんたちの輪に入り込めず、ぽつねんと佇むこともあるでしょう。
そんでまた、お母さんたち、なかなか話しかけてくれないんですよね。お父さんからすると「見えないバリアが張られている」と感じるようです。
あのバリア、なんなんですかね。
筆者も最初はよくわからなかったのですが、一度父親の参加に難色を示すお母さんにお話を聞いたところ、その方はどうも「○○ちゃんのお父さん」のことを、「○○さん(ママ友)のダンナ」と認識しているようでした。
そりゃ、気軽に話しかけづらいですよ。「人さまのダンナ」じゃね。
もちろん全員じゃないでしょうが、そういう認識が邪魔をして、お父さんを遠巻きにせざるを得ない、というお母さんも意外といるのかもしれません。
ラクしていいよ、って言ってほしい
ちょっとお父さんたちを脅かすようなことを書いてしまいましたが、でもまあ、そんなに気にしないでください。
お母さんたちから異星人のように見られても、母たちの周囲に見えないバリアを感じても、「それは、そういうもんだ」と割り切っていれば大丈夫。
あきらめずに話しかけていれば、きっとそのうち受け入れてもらえると思います。
とはいえ、人によってはどうしても、得手不得手ってものがありますよね。
お母さんたちの輪に入るのは無理そうだ、というお父さんもいるでしょうし、職場の状況的に、PTA活動のために仕事を抜けるのは難しい、というお父さんもいるでしょう。
そういうお父さんたちは、そうですね、お母さんたちの心のうちを理解してくれるだけでもいいんですよ。
お母さんたちは、PTAを、そして日々の家事・育児を、「女である自分がやらねばならないこと」と思い込みがちで、しかもその“捉われ”に意外と無自覚です。
そこをお父さんが理解しているだけで、ずいぶん違うと思います。
だからもし妻が、PTAや家事・育児を背負い込んでプリプリしちゃっているときは、できるだけ代わったり、“手抜き”をすすめたりしてあげてほしいのです。
「部屋が散らかってるけど、今日は子どもがつまづかない程度に片付けておこう。今度の日曜にぼくが片付ける」でも、「今日の夕飯、ぼくは作れないけど、スーパーのお弁当を買って帰るね」でも、なんでもいいので。
お母さんがひとりで背負い込まないように、ちょっとひと声かけて、ちょっと手を動かしてはいただけますまいか。
それだけでも、お母さんたちは少し救われるんですよ。
妻との関係もよくなって、結果的にはお父さんも救われるんじゃないかな。きっと。

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編集者、ライター。主なテーマは「PTA」と「いろんな形の家族」。各地で講演、テレビ・ラジオ出演多数。PTAでは学年総務部長。
シングル母。著書『PTAがやっぱりコワイ人のための本』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』。
http://ohjimsho.com/