「あたし、おかあさんだからPTAやらなきゃ」って言ってた時代があったよね、って懐かしく振り返る地点にいつの日か到達したい

PTAから考える、多様な生き方と働き方。

2018/03/14
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著者:大塚玲子
 

 先日「あたしおかあさんだから」という歌が話題に、いや火種となって大きく燃え上がりましたね。

 「おかあさんだから」ネイルをやめて爪を短くし、パートに行き、汚れてもいいおしゃれじゃない服を着る。「おかあさんだから」家族の誰より早起きして、美味しいものは夫や子どもに譲って、残りものを食べる。

 自分のことは二の次、三の次。だってそれが「おかあさんだから」。

 うわ~、オソロシイ。自己犠牲感が、重すぎる。でも、PTAもいっしょです。

 「おかあさんだから」PTAのクラス役員を決める4月の保護者会に参加するし、じゃんけんやくじびきをして、負ければ委員や委員長をやる。

 「おかあさんだから」PTAをできない理由をみんなの前で言わなきゃいけないし、やらない人がいると、それが「おかあさんだから」糾弾する。

 PTAは、「おかあさんだから」の典型みたいなところがあります。

 あの歌詞を最初に読んだときは、もちろん、わたしも「げっ」て思いました。

 今この時代、こんな古い規範の歌を流すのはやめていただきたい。人気歌手が歌ったら、「それが正しい」と思わせる効果を生んでしまう。

 ほうぼうから炎が上がる様子に、ああ、みんなも「これはダメ」って感じるんだな。いい時代になってきたな、と思いました。

 でも、あんまりずっと燃え続けるのを見ているうちに、なんだかそれもまた、モヤモヤしてしまった。

 そんなにあの歌詞を非難するんだったら、じゃあなんでPTAは、いまでもこんななんだろう? 

 現実がこうなのを受け入れていながら、どうしてみんな、そこまで怒るのか。

 この件に限りません、いつもそうでした。
 「あれもこれも、やらねば」と背負いこむ現状のおかあさんたちを励まそうとつくられた(その心意気はいちおうわかる)、あの広告も、あの動画も、みんな勢いよく炎を上げた。

 なんで、そうなるのか?
 要するに、それが「過渡期」ってことかもしれません。

 母親たちは、これまでずっと「当然、女の仕事」とされてきたアレコレに、ようやく抗いはじめたところ。

 どれもこれも、みんな「おかあさんがやらなきゃいけない」わけじゃない、はず。
 おかあさんも外で働くいま、おとうさんがそれをやらない理由は何もない、はず。

 でも、まだ、それを確信しきれていません。

 「やっぱり、おかあさんがやらなきゃいけないんじゃないのかな?」
 そんな疑念がちらついている。旧い価値観が、母親たちの頭の何割かを、まだ占めている。

 そうじゃない「はず」だよね、って自分に言い聞かせている最中なのです。

 だから、過剰に反応してしまう。
 かつての「正しい母親」像を示されると、激しく拒絶せざるを得ない。そういう段階なのでしょう。

***

 過渡期ですから、人によって進度はバラバラです。

 「おかあさんだから」を許しがたいと感じる人たちがいる一方で、自分がそれを「おかあさんだから」やっていることすら、意識していない人たちもいます。

 PTAは当然、わたしがやること。結婚して苗字を変えるのも、子どもを産んだら仕事をセーブするのもやめるのも、おとうさんがとらない育休を自分だけがとるのも、議員になって社会を変えようとか考えないのも、みんな当たり前。

 そういう一切合切を、脳ミソの無意識エリアで「自分の仕事/それ以外のこと」として自動処理してきたのです。「1+1=2」と同じ勢いで。
 
 そんな人たちに対し、「おかあさんだから」そう思わされている、という事実をどーんと突きつけてくれたこの歌は、もしかすると大変いい仕事をしたのかもしれません。炎上したおかげで。

 他方では、もっと先を行く人たちもいるでしょう。
 「昔は、わたしも“おかあさんだから”こういうことやらなきゃ、って思ってたなぁ…」という人たちは、この歌詞を見ても、腹が立たないんじゃないか。

 女がそういう生き方を強いられていた時代もあったよねぇ。
 慈悲深い目で遠くから、この歌を、かつての母親たちの価値観を、振り返るだけかもしれません。

***

 「PTAが抱える課題は、“女性の働きにくさ”を象徴しているんじゃないでしょうか? そのことについて、書いてもらえませんか」

 1年半ほど前、この連載の執筆を依頼いただいたとき、編集担当のKさんに言われたことです。

 ご要望にお応えできたかどうかわかりませんが、現時点でわたしが書けるのは、この辺りまででしょうか。

 これからもモヤモヤと考え続けていきますので、みなさまもこれからも、モヤモヤと考え続けていただけたら幸いです。

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大塚玲子
編集者、ライター。主なテーマは「PTA」と「いろんな形の家族」。各地で講演、テレビ・ラジオ出演多数。PTAでは学年総務部長。 シングル母。著書『PTAがやっぱりコワイ人のための本』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』。 http://ohjimsho.com/
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