2018/04/11 公開

【後編】「仕事は想像通りにいかない。“結果オーライ”にする」・大根仁(映像ディレクター)

失敗ヒーロー!

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華々しい成功の裏には、失敗や挫折がある。その失敗エピソードから成功の秘訣をヒモ解く『失敗ヒーロー!』。今回ご登場いただくのは、ドラマ・映画監督として『モテキ』をはじめとした数々の大ヒット作を世に送り出してきた大根仁さん。後編では大根さん自身が影響を受けた人、交友関係。そして大根式キャスティングのコツまで、具体的に伺いました。決して飾らず、ありのままで仕事をする大根さんの仕事術は必見です。

伊丹十三から得た「いろんな肩書き」のDNA

――大根さんが映像作品を作るにあたり、一番影響を受けた方はどなたですか?

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大根仁(おおね・ひとし/映画監督・演出家)
1968年生まれ。映像系の専門学校時代に作った作品が堤幸彦監督に認められ、アシスタント・ディレクターとしてキャリアをスタート。TVドラマ『TRICK』(00)、『演技者。』(02〜04)など深夜ドラマに携わる。その後、演出家として数々のドラマを手がけ、『週刊真木よう子』(08)、『湯けむりスナイパー』(09)といった作品で手腕を発揮。なかでも久保ミツロウ原作のコミックを森山未來主演でドラマ化した『モテキ』(10)が大きな話題を呼ぶ。11年、同タイトルの映画版で映画監督デビューを果たした。テレビドラマやCM、雑誌でコラムを執筆するなど多才なクリエイターとして注目を集める。

大根仁(以下、大根):いろんな人からいろんな影響を受けてきました。でも、いま、パッと思い浮かぶとしたら伊丹十三さんですね。伊丹さんって、世間的には映画監督として有名ですが、実は物書きでもあるし、俳優でもあるし、絵も描けるし、楽器も弾けるし、マニアックな趣味のコレクターでもあり、いろんな肩書きがある人なんです。その才能が最終的に映画監督としての仕事に結実していく。とても面白い人だと思います。僕も、最初はテレビから入って、映画が仕事の中心にはなりましたが、コラムも書くし、CMも作るし、一つの場所に固まらずにやろうと思っています。才能は遠く及びませんが、伊丹さんの存在はとても大きいですね。

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――カンパニー松尾さんの影響があることもよく公言されてますよね。

大根:カンパニー松尾さんは『モテキ』を撮るときに参考にしたんです。松尾さんの作品の最大の特徴は自分でカメラマンをしながら女優を撮るスタイル(いわゆる“ハメ撮り”ですよね)。どんなポジションでもかわいく撮っちゃう。その秘訣は最初から最後まで女優と1対1で向かい合っていることです。僕は、『モテキ』を撮るまで女優を撮ることに苦手意識があったんです。でも、題材が恋愛モノ。しかも複数のヒロインが登場するので、そうは言ってられない。女優をかわいく撮らなければならないんです。そこで、カンパニー松尾さんのスタイルをマネしようと思いました。デジタル一眼レフの動画機能がすごく良くなってきた頃だったので、自分でカメラを回しながら女優を演出して。結果的にうまくいきました。

――同世代で影響関係にある人たちはいますか?

大根:スチャダラパーとか電気グルーヴ、それから元フリッパーズ・ギターの2人、小沢健二とコーネリアスには常に刺激を受けてきました。彼らが90年代からずっとエクストリームな音楽を作り続けていることにはシンパシーをとても感じますし、ジャンルは違えど、彼らの後を追いかけている意識はあります。

“映画監督”というプレイ

――大根さんの作品は原作を読んでから観ても違和感をあまり感じません。脚本が原作の妙味を出しているんだと思います。脚本を書く上で一番大事にしている点は何ですか?

大根:僕はあるときから自分で脚本を書くようになったんです。もともとプロの脚本家でもないし、いまでも脚本家だとは思ってないんですけど、監督という立場で書く以上、あらゆることを想定していつも書いています。映像だったり、演出だったり、編集だったり、音楽だったり。そのなかでも最重要要素はキャスティングなんです。この役者ならこのセリフを言えるだろうとか、あの女優ならこういった表情が撮れるはず、とか。いわゆる“アテ書き”をしながら脚本を作ります。逆に言えば、キャスティングありきで脚本を書いていかないと、僕は仕事をうまく進められないんです。ただ、脚本家って意識がないって言いましたけど、映画監督という自己認識もないんですよ。監督っていう「プレイ」をしているって感じで。いまだに無免許運転で映画を撮ってる感じがあります。いつかバレちゃうんじゃないかな(笑)。

――ちなみに大根さんのほぼ全ての映画作品にリリー・フランキーさんが出演されています。何か理由があるんですか?

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大根:腐れ縁なんですよ(笑)。酒場でよく会ってたんですけど、酒場で会うリリーさんってとても面倒くさかったんです(笑)。深夜ドラマのダメ出しとかしょっちゅうでした。ただ、よく言われていたのは、「大根、お前は自分で脚本を書いた方が良いよ」ってことでした。そのときは書けるなんて思っていなかったんですけど、2009年に『湯けむりスナイパー』ってドラマを撮るときに、初めて自分で脚本を書いたんです。そしたらリリーさんが初めて褒めてくれて。それからですね、僕が作品を作る度に出てくれるようになったのは。きっと、ずっとダメ出しをしてきた贖罪の意識でもあったんでしょう(笑)。

――大根さんは原作を映像化する際にどのような基準で選定しているんですか?

大根:まず、自分が好きな作品以外は手を出さないっていう原則が一つあります。あとは、映像化する意味がある作品を選ぶと決めています。勝負権といってよいと思いますが、映像でしか表現できない描写があるかどうか。例えば『モテキ』だったら、原作でも音楽を使っていますけど、当然、漫画からは音が聞こえてこないわけで。この部分は原作を超えられるぞ、と。その映像が見えたので、勝負ではないですけど、イケると思いました。

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