2017/04/06 公開

【後編】「豊かに生きていくための効率化」・大宮エリー

失敗ヒーロー!

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迷惑をかけた相手のことを思えば、これ以上の失敗はできない、さらなる迷惑はかけられない。すると落胆の「どうしよう」ではなく、策を練る「どうしよう」に変わるはずですから

上手な“不義理”は人を美しくする?

――多くのお仕事に携わられる中で、ご自身の個展も開かれていますよね。非常にお忙しいと思いますが、お仕事の依頼を断られることは? 

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大宮エリー 
1975年大阪生まれ。広告代理店勤務を経て、2006年に独立。映画『海でのはなし。』で映画監督デビュー。現在は作家、脚本家、映画監督、演出家、CMディレクター、CMプランナーと幅広く活躍。
主な著書に『生きるコント』『生きるコント2』『思いを伝えるということ』(文春文庫)、『グミとさちこさん』(絵・荒井良二/講談社)、『物語の生まれる場所』(廣済堂出版)、『猫のマルモ』(小学館)、『なんとか生きてますッ』『なんとか生きてますッ2』など多数。
2015年、初の絵画展「emotional journey」(代官山・ヒルサイドフォーラム)、「painting dreams」(渋谷ヒカリエ 8階 CUBE)、2016年、美術館で初の個展「シンシアリー・ユアーズ」(十和田市現代美術館)を開催。同時期に商店街を使ったパブリックアートを手がけ、初の写真展も開催。
(要個展情報記載)

大宮エリー(以下、大宮) どうしてもスケジュールが合わないこともあるので、何でも受けるってわけじゃないですけど、極力お断りしないようにはしています。「だけどここで踏ん張りすぎたら、すごく疲れちゃうかも」って思う自分もいるんです。

それでね、昔読んだ雑誌で、森光子さんが「美しさの秘訣は?」という問いに「人に不義理をすること」と答えていらしたのを今でも覚えていまして。人に不義理をするって、断ることですよね。ご飯に誘われても「ごめんなさい、行けません」。そうして自分の時間を持つことが美しさにつながる。読んだ当時は衝撃的でしたね。

――ハッとさせられるお話ですね

大宮 実は会社員時代にも、仕事を断った経験があるんです。当時、海外にボーイフレンドがいたので、休みを取って会いに行きたい。だから大きなプロジェクトに誘われたときに「いや、入らないです」と。周りもビックリしていました、「チャンスなのに」って。

すごく迷ったんです。だけど、私の価値観として、死ぬときに「あの仕事、やっておけばよかった」とは思わない。逆に「クリスマスのとき、彼に会いに行っておけばよかった」とは絶対に思うから。そこでチケットが高騰するクリスマス前を待たずに、「もう休みます!」みたいな。

自分の断る勇気から「誰かが育つことだってある」

――切り出すには、かなりの勇気が必要ですよね

大宮 「帰ってきたら席がないかも」とも思いましたが、意外とそうでもなくて。最初のうちはガンガン電話して様子を確認していたのが、途中から「もう電話はいりません。うまく行っていますから、安心して旅行を楽しんでください」なんて言われちゃって。「行く前はあんなに『困る』とか言ってたじゃん!」って感じですよ(笑)。

そのときに感じました。会社って組織だから、誰かが抜けても歯車が回っていくって。野となれ山となれではなく、きちんと誰かに振り分けて、仕事が進められる状況しておけば、振り分けられた人たちの踏ん張り所にもなるし、育ったりもするから。

――その点、フリーランスとなると、振り分ける“誰か”がいませんよね

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大宮 そうですね。だけど会社員にしてもフリーランスにしても、“断る”って、相手を信用することだと思いますね。「断るくらいで切れる人間関係じゃない」って。そう考えていた時期を経て、今の私にとっての“断る”は、自分を大切にするってことかなぁ。美しく生きている人って、自分の周りにいる美しいなと思う方って確かに断ること多いんですよ。「ごめん、今日は行けない」って。私は「自分を大事にしているんだな、かっこいいなぁ」と思います。

あくせくした中で描いた絵なんて「誰が感動するの?」

大宮 そういう美しい人に憧れますよね。ただ絵の仕事を始めてから、制作期間や体調管理を考えて、少しずつ断る機会が増えた気はします。絵の仕事って、バーッと予定が詰まっている中、「じゃ、明日描きましょう」ってできないんです。今年も4月から6月まで、福井の『金津 創作の森』で個展をやりますが、美術館で何か月もやるのって、すごく大変。それだけの展示期間に耐えうる絵を描くとなると、それなりの時間が必要ですから。

――かなりのスケジュール管理が必要になりますね

大宮 しかも仕事のスケジュールだけじゃなく、気持ちのメンテナンスも必要ですからね。あくせくした中でパッと描いた絵なんて、「誰が観たい?」「誰が感動するの?」って。だけどいい景色を見て、大自然の光を浴びて感動して、心身ともにポジティブになって帰ってきて、「描きたい。この気持ちを描きたい」って絵でこそ、「地球っていいな」「自然っていいな」「私もリフレッシュしちゃおうかな?」って思ってもらえる。

実際、沖縄の久高島という、“神の島”と呼ばれている島に行って描いた絵は、観ている人が絵の前でゴロ寝を始めちゃうくらいでした。美術館から連絡があって、「美術館で人が寝ているって、かなり異常なんですが、どうしましょうか……」と(笑)。

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