2017/03/30 公開

【前編】「迷惑をかけるくらいなら、やめたほうがいい」・大宮エリー

失敗ヒーロー!

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思いを熱く語るって遠回りに思えるけど、むしろ近道だったりするというか。それに自分の思いを伝えて、「この人と一緒にやりたい」って思ってもらえたほうが、具体的なプロセスを伝えるときにも吸収が速い気がするんです

自分はできないのに周りを手伝う“痛い子”だった

――非常にマルチなお仕事で活躍され、アーティストとしても精力的に活動されている大宮さんですが、まずはバックボーンとして、幼いころはどんなお子さんだったのでしょうか?

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大宮エリー 
1975年大阪生まれ。広告代理店勤務を経て、2006年に独立。映画『海でのはなし。』で映画監督デビュー。現在は作家、脚本家、映画監督、演出家、CMディレクター、CMプランナーと幅広く活躍。
主な著書に『生きるコント』『生きるコント2』『思いを伝えるということ』(文春文庫)、『グミとさちこさん』(絵・荒井良二/講談社)、『物語の生まれる場所』(廣済堂出版)、『猫のマルモ』(小学館)、『なんとか生きてますッ』『なんとか生きてますッ2』など多数。
2015年、初の絵画展「emotional journey」(代官山・ヒルサイドフォーラム)、「painting dreams」(渋谷ヒカリエ 8階 CUBE)、2016年、美術館で初の個展「シンシアリー・ユアーズ」(十和田市現代美術館)を開催。同時期に商店街を使ったパブリックアートを手がけ、初の写真展も開催。

 
大宮エリー(以下、大宮) わりと“口べた”な子でしたね。嫌なことをされても「やめて」が伝えられない。「幼稚園の先生から『エリーちゃんは自分のことができていないのに周りのお世話をするから、まずは自分のことができるようになってから、人のことをやってほしい』と注意が入った」と母から聞かされたこともありました。

――周りのお世話をするって誉められるべきことなのに、注意されるとは……。
 
大宮 いやいや、痛い子ですよ(笑)。パンツ一丁で周りの着替えを手伝っているんだから。先生からしたら「まずは自分でしょ」って。そんな痛い子だったし、ちょっとボケたところもあったのかなぁ。

――大宮さんのエッセイに登場する“おかん”のエピソードも非常に印象的です。お母さまから、何か影響を受けている面もあるのでしょうか?
 
大宮 母と似てはいないと思うんですよね、彼女はすごく変わった人なので。『生きるコント』にも書きましたけど、昔「犬を飼おう」と提案したら、「犬なんて飼わへん!」って、すごくキレられて。「私も残業で帰りが遅いし、いたらいいよねって話じゃん」って言ったら、「そんなに犬がほしいんやったら、わたしが犬になるわ!」って(笑)。

「どうしたら母は落ち着くだろう?」が私の原点

――そのお話を拝読して、大爆笑してしまいました(笑)。
 
大宮 エッセイにすると面白いけど、リアルだと怖いですよ。こたつの周りをワンワン言いながら走り出しちゃって。しかも普通に「やめてよ」って言っても、やめてくれない。考えた末に「ワシャシャシャ」って、ムツゴロウさんみたいに戯れたり、よしよしって撫でたりしたら、嬉しそうに「くぅん」なんて声を出して……。心折れたーって感じですよ。観念して「もう飼いたいなんて言いません」って言ったら、「それやったらいいわ」って。

――あっさりと人間に戻られたんですね(笑)。
 
大宮 そうそう。でもね、そんな母を見ているのって、空しいし切ないし、「うちのお母さんて、どうしてこうなんだろう?」みたいな。こういうことが他にもいっぱいあったから、「どうしたら彼女は、気持ちが落ち着くのかな?」って、いつも考えていましたね。講演会の中で相談を受けたり、私の本を読んで「癒やされた」という声をもらったりするのは、母に対する思いや行動が根っこにあるのかも、という気はします。

「気が済むまでやって、次のステップに進む」

――お母さまからそうした影響を受け、「理系が苦手だった」という大宮さんが東大の薬学部に進まれたのは、「お父さんの病気を治したい」という思いからでしたよね

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大宮 そうですね。けれど自分には、まったく向いていなかった。みんなが普通にこなしている実験も私だけできないし、マウスに注射を打つことも可哀想でできない。だから大学院にも進まず、薬剤師の国家試験も受けず、とっとと退散してしまいました。それからは「もう夢とかいいや」って、理想を掲げるのをやめたんです。

だけど諦めたというより、とことんやったから気が済んだという感じですね。やらずに諦めていたら後悔というか、いろいろやった挙げ句であれば、その過程で気づきがあったりするし。気が済むまでやって、次のステップに進む、みたいな。自分だけできないって、やっぱり苦しいんですよ。「どうして私にはできないんだろう?」って、ぼんやり苦しい状態が続く中、「ここから抜け出したらラクになれるかな?」って。

「いいなあ」と思った上司の格言は「ヒマは宝」

――その後、多くの企業の就職試験を受け、広告代理店へと就職されていますよね。当時を振り返り、「私は組織に向いていない。独立はドロップアウト」とお話しされていたのが印象的ですが、大宮さんから見て、逆に組織に向いている人、組織で仕事ができる人とは、どんな人物だと感じますか?
 
大宮 正直、今回の取材依頼も「どうして私?」って思ったくらい、“仕事ができる”ってことに興味がなくて。逆に「ヒマは宝」という標語を掲げている部長のことは、「いいなぁ」と思っていましたね。適度に手を抜いて、組織をエンジョイしている感じ。「ヒマは宝」なんて、会社からしたらあり得ない。だけど今って働き過ぎちゃう傾向にあるから、そういう上司がいたら最高ですよね。

――本当ですね(笑)。その一方で、大宮さん自身は組織をエンジョイすることは?
 
大宮 会社のことは好きだったんです。だけど行動予定を書き忘れたり、出張伝票に不備があって、怒られちゃったりとかね。不備があると上司が直したり総務部が直したり、みんなのロスになってしまう。ルールに則るということが難しいというか、みんなが当たり前にできることが私にはできない。

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