【後編】「精神論は、失敗の温床」荻上チキ(評論家)

失敗ヒーロー!

2019/02/20
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苦手な上司がいるなら、50時間我慢するよりも、2時間だけ真剣に向き合ってみた方がいい

――反対に、部下という立場の人が、上司とのコミュニケーションに苦労することもあるかと思います。そういった場合には、どのように対処していけばいいのでしょうか?

荻上:僕は1年しか「部下」生活をしていなかったんですが、「上司をどう変えるか?」ということだけを考えれば、組合などのグループを作って改善の申し入れをするか、辞めるかしかない。もし、上司が思いつきで適当なことを言う人だったりしたら、僕なら最新の「行動経済学」の本を勧めますね(笑)。オススメは、リチャード・ワイズマンの『その科学があなたを変える』。自己啓発本っぽいんですが、社会心理学系の本です。これを上司にサッと差し出して読書会を開催して遠回しに伝えていく。めんどくさいヤツですよね(笑)。

つまり僕が何を言いたいかというと、「将来想定される50時間のストレスを減らすために、2時間かけるべき」ということです。ただ何時間も黙ってストレスに耐えるよりは、2時間だけでもその上司と読書会をしたりして、真剣に向き合ってみる。それでもダメなら、さらに上の上司に報告するか、企画を練って自らがチームリーダーになるか、ケースバイケースで対応していきますね。

――荻上さんは、数年単位のキャリアプランのようなものは、立てていらっしゃるのでしょうか?

荻上:仕事を続けていくにつれ、想像できない出会いが自分を変えてきたと思うことがあるので、キャリアプランを立てることはあまり意味がないと思っています。自分なりのビジョンとして、「理不尽な思いをする人が減る社会」という明確なゴールがあるので、その都度その目標に沿ったことをしようと思っています。『シノドス』の編集長を辞め、メディアの編集からは離れましたが、またどこかしらの場所に戻らないといけないとは思っています。誰とコラボするのか、どの素材で取り組むかは現在悩み中です。

メディアには、“視聴者を育てていく”くらいの感覚が必要

――今後、活躍の場を広げ、テレビを仕事の主戦場にしようとは思わないですか?

荻上:「ラジオ=実験場」のような考えを持っているので、とりあえずここで温まってから、テレビ出演をしていこうかなとも一時期は考えていたのですが、今は少し違っています。絶対にテレビは嫌だというわけではありませんが、必ずしもテレビ出演にこだわりたいという想いはありません。テレビではできないことでも、ラジオではできてしまうので。それにテレビを視聴していると、「まだこんなことをしているのか」と時代遅れに感じてしまうこともあります。

――これからのメディアには何が必要となってくるのでしょうか?

荻上:視聴者に合わせて番組を作るのではなく、番組の理念やビジョンに合わせて視聴者を育てていくという感覚が必要になってくると思うんです。そのメディアが存在した時と、存在しなかった時では「社会が違うよね」と感じられるくらいに影響を与えていく。そうでなければ、メディアはただのビジネスで終わってしまいます。金と企業と人とを中立する、それこそが“媒体”の役割であり、視聴者に新たな知見や考えるきっかけを提示することができるか否かが、いま問われてきているように思います。

とは言っても僕は最終的に人を変えようと思っているわけではなく、世の中を変えようと思っている人に届く言葉を作ろうと思っています。幸運にも僕はそういった自分の考えに合ったラジオという媒体を持っている。数十万人にも及ぶ、「アグレッシブなスタンバイ状況」にある人々に、知識や新しい気づきをシェアできるラジオという場所が、僕は非常に気に入っているんです。

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